【古河】な~む~
昨日は書くの忘れていた前説。
もうその回いいやっと。
前のも徐々に書き足しています。
こっちはきちんと書いたゾ!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860731915098
◇ ◇ ◇ ◇
1559年4月中旬
下総国関宿城
足利晴氏
(こういうキャラとは作者も知らず……)
そろそろお迎えかの。
よう生きたわ。
戦は下手じゃった。
足利の家に生まれ鎌倉公方となった。
あっちへ担がれ、こっちに良いように扱われて、様々な神輿に乗った。
そんな儂の事を皆
「阿呆公方」
「酔いどれ鎌倉殿」
「昼行燈」と呼んでいた。
儂は阿呆に徹した。
儂は木石じゃ。
若い頃は、小弓(公方)の義明を打倒するため(北条)氏綱と組んで奴を滅ぼした。
だがそれも氏綱の傀儡だったの。
それ以降は単なる神輿じゃ。
国府台の戦以降は家臣どもが後北条の連中憎しで対抗していたが、儂の心は冷えていた。内紛などもういい加減にせい。
儂の生涯は常に内憂外患。
弟(上杉憲寛)と争ったのが止めを刺した。
儂の心は折れた。
もう嫌じゃ。
人と争う事、耐えられぬ。
酒に逃げた。
それでも戦は追ってくる。
河越でも担がれた。
今度は後北条ではなく関東管領に無理やり引っ張られた。
そして河越で敗戦。
古河公方の権威が失われた。
よいではないか。
足利の世はもう過去のもの。
老廃物じゃ。
消え失せて当然。
新しきものがこれからは日ノ本を新しく生き生きと産まれ変わらせるべきじゃ。
河越で威勢の良い童を見た。
それが見る見るうちに頭角を現し、あの後北条を滅ぼした。
祇園精舎の鐘の音じゃな。
諸行は無常なり。
あの若者に後を譲ろうと思うた。公方などというものではない。この坂東を、じゃ。それが儂のできる唯一の歴史に残る大仕事なのだと思うた。
だから大胡から多額の献金をもろうたことを理由に大胡に有利な外交を進めた。
宇都宮の足を止める。里見の地盤である上総国衆に内々にちょっかいを出す。
宇都宮と佐竹を引き離す。
我ながらようやったわ。
もうそろそろいいかの。
大胡からの献金は全て関宿寺の開山に費やした。
儂の供養寺と称して大建設工事。
関宿の治水もその寺の参拝客の安全を高めると称して行った。
そのお陰で関宿は以前にも増して繁栄した。
もうそろそろいいかの。
関宿寺は浄土宗にした。
儂は専修念仏だけでなく人助けもできたかの。
昨年だったか。大胡の使者として拝謁していった赤い模様の装束を纏った厳めしい武者も浄土宗の信者だという。
「必ずや、公方様は御仏の手にて救い上げられましょうぞ」と、儂の病状を見てか、そういいおった。
もうそろそろ……
「上様! 関東管領様とご嫡男、藤氏様が見えられました!」
枕元に足音がする。
もう目は見えぬが上杉の奴かのう。
一言言うてやるか。
「政虎殿。関東管領として息子を頼む……
というと思うたか。この阿呆が。
わざわざ病身の儂を鎌倉まで引きずっていきおって。それ程大胡が羨ましいか? お前よりも器の大きい者が。誠に大きい者がいる事、許せぬか。
哀れよの、お前の中にいるのは毘沙門天では決してないぞ。修羅じゃ。それも帝釈天と争う悪鬼の方じゃ。
お前にはそれが乗り移ってお……
ぐぅ」
此奴。
儂を刺しおったか。
悪鬼の顔が見える。
儂の最後に見る顔……
修羅か。
もう嫌じゃ。
南阿弥陀……
足利晴氏
享年53。
死因、刺殺。
◇ ◇ ◇ ◇
同日同場所
足利藤氏
修羅がこちらを向いた!
「公方様。あの者はどうやら既に抜け殻となり妖気が漂うておりました故、乗り移りし
某が関東管領としてお支え致す。そのお手にて、坂東の平和を乱す大胡を打ち払いましょうぞ!」
ひぃいい。
儂はこれから此奴に担がれ、生きていくことになるのか?
「上様、宜しいですな?」
儂は只々頷き、小声で
「よ、良きに計らえ」
というのが精いっぱいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます