【武蔵】変な名前を付けられた

 1552年10月上旬

 上野国吾妻郡岩櫃山城

 宮代武蔵

(それはこの名前付ければ、どうなるかですよねぇ)



 3年前元服した折、殿より苗字を名乗るように言われた。

 もう幼名の平助ではいけなくなった。嬉しいと共に一抹の寂しさもある。


 殿の命で賢祥様が各地で拾ってきた最初の孤児の中にいた俺は、平助という名前を殿に付けてもらった。

 そしてこれからは殿が付けて下さる新しき名を名乗る。


 春日部村の出身だと言ったら、

「近くに別の村とかある~?」

 と尋ねられたので、

 北にある宮代の地名を挙げた。


 すると

「それいいねぇ、それつけたら~~?」

 とはしゃいで、ついでに諱も名付けていただけた。


 武蔵の国だから武蔵たけぞう

 なんだか安直な感じもするが、殿が名付けてくれたことに意味がある。誠勤に励み、必ずや殿のお役に立つ!


 そしてこんなにも早くその機会が来るとは。

 なんと18にして城代!?


「大胡ってさぁ、人材不足なんだよねぇ。だから忠誠心があって能力がある、今後主力となって働いてくれ、信頼できる有能な友達もいる。そんな条件を考えたら武蔵君しかいないってことになったので~す。ハイ」


 後藤様や東雲殿、是政殿がいるのでは? 

 と思ったが、先回りされておっしゃられた。


「お仁王様と狐ちゃん、これちゃんはここで遊ばせる訳には行かないんだなぁ。主力を率いてもらわないと。だから、ここで武蔵君は統率・作戦・内政の訓練をしてね。たねちゃんが書いた手引き書があるから、それ使ってお勉強! 

 カリカリ」


 ここには同期の親衛隊候補生12人が兵20名と共に配属される。あとは雑兵を集めるか徴兵だ。全ての権限が俺に委ねられている。同期の皆には相談はするが、最後の決断は俺がする。身震いすると同時に、これが最初の関門だと思った。


 大将軍に俺はなる!


 ◇ ◇ ◇ ◇


 1552年10月中旬

 上野国白井城(今の子持村)

 真田幸綱

(素ッ破の軍団作るのが至上命題)



「じゃあ、ゆっきー、北毛(群馬北部)は任せたね~。来年の刈り入れ済ませたら直ぐに那波に戻ってね。できるだけ早く。それと矢沢っちは大丈夫だと思うけど、岩櫃のあの子たちの面倒もヨロ」


 そういうと殿は、護衛100を連れて大胡へと帰って行った。


 この白井の長尾家は当主が弟に闇討ちされ、先月御家断絶した。

 姻戚であった厩橋長尾家の一族から跡を継ぐ者を出したが、まだ幼いため実質上は儂が支配することとなった。


 この城は沼田の弟と、宮代の坊主が守る岩櫃城を支援できる場所にある。

 沼田は北の要、対越後の最前線。弟にしか任せられぬと、殿の差配じゃ。


 岩櫃は昨年、城主斎藤憲広に大胡へ向かう荷駄を襲わせ、それを口実に沼田と同時期に一気に攻め落とした。


 ここは大胡の生命線の一つである草津鉱山(群馬鉄山)がある。



 奴にそこを知られた。

 昨年から交渉を続けていたがらちが明かず、今年になって北条との手打ちが済み、すぐさま侵攻に及んだのだ。


 殿の計画では、多分来年刈り入れ後、早いうちに北条との開戦となるとの見立て。まだ休戦は明けなくとも北条を追い詰めるという。既に北条は内政ががたがた、領国はあと一歩で崩壊するところまで来ているという。


 こちらからは仕掛けず、北条から戦端を開かせるとのこと。


 うまくいくだろうか。


 また松の間での円卓会議が開かれる。

 そこで策が練られるのであろう。


 儂は、その間に北部を『景虎が』攻めてきても、殿の後詰まで落ちないような態勢整えるのが使命じゃ。


 頑張ろう。


 吾妻には多くの素ッ破がいる。

 これも糾合せねばな。


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 スッパいものはどの世界でも重要

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636658362

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