【輿入】堕落した~~♪

 1549年6月吉日

 上野国大胡城寝所

 楓(政賢君のお嫁さん。一応ヒロイン)



 大胡に来てびっくりの連続でした。


 由良新田にった(現在の太田)の領地と大胡の領地境から大胡城まで、殆ど隙間なく道の両脇に人々が並び、手を振って喜んでいました。


 口々に

「おめでとうございます」

「幸せになってくださいませ」

「儂ら一同楓様をお守りいたします」

 と、大声で騒いでいました。


 大きな大名家の輿入れの時は、何千人もの行列ができると聞きました。


 由良の家もそれほどではないにしても、3百人余りの兵が護衛の行列を作っておりますが、この大胡の歓迎の様子にびっくりしているようです。


 きっと数千ではきかない数の人々が並んでいるのでしょう。

 老いも若きも老若男女、打ち揃って歓喜の声を上げています。

 なんと領民から慕われているお方なのでしょうか。


 その御方が今、わたくしの目の前で真っ赤になって固まっています。

 何かブツブツ仰っています。


(賢者とおさらば、

 賢者は堕落する、

 謙信に勝てるのか?

 勝っちゃえ。

 勝とう! 

 でも一度はナリタヤ大賢者、

 いあいあ、ここは戦国時代。

 DTは関係ない!)


 まったく意味が解りません。


 側使えの政影様に先ほど耳打ちされましたが、「政賢様の独り言はそのうち慣れます。 独り言に惑わされずに、殿の本当のお姿を見ていただけると幸いです」と伝えてくださいました。


 先の婚儀の場でも鯱張しゃちほこばっておられましたが、きっと女子には慣れておられないのでしょう。


 ちょっと安心いたしました。

 お体も鐘馗様のような方ではなく、小柄である私と同じくらい。


 皆さま

「お似合いですぞ」

「殿が大きゅう見えまする」

「殿がお喋りいたさねば見事な夫婦めおとじゃ」などと囃し立て、一層殿は堅くなられたご様子。


「dddde、でえええ、はははぁはぁ、

 すぴーすぴー……、

 これから……ら~、

 よろよろしくしく……

 頼みまする~」


「こちらこそ不束ものですが、宜しゅうお願いいたしまする。

 お傍にいさせてくださいませ」


 わたくしも初めての事。


 ドキドキいたしておりましたが、子供の様な殿を見てなんだかしっかりせねばと思い、お傍に寄り添うため白無垢の裾を持ちながら立ち上がり、近くに侍ることにしました。








「堕落したのに……


 極楽じゃああああああああああ」



 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸




 異世界線上のゲームが

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636043989


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