【雪辱】弱者の攻撃。遊兵化の術~

 1548年8月30日午の刻(午前11時)

 赤石砦南西方垪和勢左翼

 戸田頼母(あの時の奴です。松山にて先手で突っ込み包囲孤立した武将)



 松山のかたきを取らねばならぬ。


 あまりにもあっけなく負けた。手の者も半数以上が手負いとなり、そのまた半数が死んでいった。皆、伊豆で寝食を共にしたいい奴ばかりであった。


 後で、垪和様は「失敗は誰にでもある」と慰めてくれたが、それで配下が生き返るわけではない。100のもとからの手勢を中核にして、新たなる領地から徴収した足軽を訓練し250の備えを育てた。


 此度は砦の西、防備の薄い柵を破壊しての侵入を指示された。桃ノ木川と柵との間は50間もない。


 しかし大した崖もなく、少人数なら侵入できると踏んでの作戦である。その先鋒を仰せつかった。


 後ろには柵の破壊とともに砦内に押し入る予定の兵600が控えている。


 南正面の主力が、弓矢合わせで苦戦しているようだが、こちらが柵を壊せば一気に情勢は変わる。


 なんとしても成功させねば。

 その時、最前列を行く足軽の姿がふいに消えた。


「殿! 前方に落とし穴。数名の被害が出ました!」


 罠か。相当念入りに作ってあるらしい。


「落とし穴の向こうに、尖った木をこちらに向ける障害物多数!」


 松山の時のあれか。やっかいだな。


「どのくらいある?」


「それが……、 行く手を完全に塞ぐように2重に」


 !!


 1重でも厄介なものを2重か……

 これを突破するのは容易なことではない。これでは向こうにたどり着くまでに、合戦が終わってしまう!



 北条方左翼700、遊兵化


 ◇ ◇ ◇ ◇


 1997年11月9日:個人ブログ「忍者ワールド」


「各忍者軍団の特徴(これもおかしな名前だが、忍者という名前は江戸時代から使用され始めた物で、当時はそれぞれの集団により名前が違っていた)


 伊賀衆:諜報活動重視

 甲賀衆:戦働き重視

 風魔衆:戦働き重視

 真田素ッ破:諜報流言重視

 ……」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 同日同刻

 桃ノ木川西岸

 甚兵衛(苦手と言いながら戦働きで活躍する素ッ破の下忍)



 先ほど兵糧丸少しと水を口にしたが、汗が出すぎだ。

 これだけ暑いと、水を飲めば体がだるくなる。水を飲まぬ訓練はしているが、その状態で敵と試合うのは不利になる。


 向こうも同じだと思うが、大胡の殿さんが「これ舐めてから戦ってね♪ 」といって渡していた塩の塊を口に入れて溶かす。


 兵糧丸よりも塩味が遥かに濃い。

 ぐんと力が戻る。

 有難い。


 儂が潜む叢の左前、雑木林の下生えがかすかに動いた。


 風魔だ。

 これは囮か?

 斥候であることは間違いない。


 ここまでの距離、およそ15間(30m)。

 間には荒れ地が広がっている。元は河原であったのだろう。ここを損害なく前進することは不可能だ。


 まだ、風魔にはこちらがこの方面に伏せていることは気取られていないはず。

 あの斥候をかわせば、本隊が姿を表すはずだが、もちろんこの繁みを捜索するはずだ。


 どうする?


 ここは石がゴロゴロしていて穴は掘れなかった。ただ草で体を目立たぬようにしているだけだ。


 近づいてくる。

 もう2間もない。

 殺るか?


 叢に入ってきた。


 息を殺す。

 すぐ隣、手の届くところまで来た。

 足をすくい、下の石に這いつくばらせ呼吸を止める。


 背骨と頭をしたたかに打ち付けて、敵は黙る。

 素早く着物を脱がせ、儂が身にまとう。

 気取られていないようだ。


 先に遠目で風魔の合図を盗んだ。

 ここでその合図を送る。


 これで本隊が出てきたら、短弓で狙い撃つ。

 どれだけ倒せるか。

 それが後の戦いを左右する。


 既に西からも包囲してある。

 逃げても無駄だ。

 こちらの人数も把握できぬまま大損害を出すことになろう。


 風魔の人影が見えてきた。

 よし。うまくいきそうだ。




 桃ノ木川西岸

 戦力比

 素ッ破150vs風魔200

 戦闘後

 素ッ破120vs風魔80


 風魔撤退



 地図です

 https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16816927861986317304


 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 法則には抜け道も存在する!?

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860634274679




 風魔の強襲が怖かったので退散してもらいました。これが実は戦の折り返し地点だった?

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