【人誑】最強ステータスは「カリスマ!」

 1546年7月中旬

 上野国龍造寺青柳大師

 賢祥

(お寺の名前まで変えさせられてしまった可哀そうな人)



 大胡の殿に久々にお会いした。


 もう12になられるのか。

 お会いして早10年。何とも偉大な足跡を作りつつある。


 拙僧に関係のあることだけでも、普通の坊主には生涯かけても、決して成しえないほどの事が為されつつある。


「おしょさん。おひさだね~。

 旅は楽しかった? 何人ぐらい引き取ってきたの?」


 殿には1000貫文近い浄財をいただいた。それを各地域の天台の寺に預け、身寄りのない者に手を差し伸べてもらうことをお頼みした。


 その後、落ち着いたころに再度お願いして、大胡の殿のためになりたい者を集め選別したのだ。


 孤児らは10歳までの子に限ったが、この龍造寺の敷地に隣接する林野を使い建てた(簡易ではあるが)学び舎に収容した。


 最近は

「子育て大師龍造寺様」

 と呼ばれておる。


 来年にも収容ができなくなるので、華蔵寺付近の公園に収容できない年長の者を移動させる予定だ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「和尚様、その方は何方です? もしかして大胡のお殿様??」


「きっとそうじゃ。あの福々しいお顔! まるで達磨さまじゃ!」


「達磨さま。お助け下さりありがとうございました!!」


 皆、殿の隣におられる武士の方へ頭を下げる。

 それを見た年長組の賢さに秀でた娘が他の子らを叱った。


「これ。みんな、間違えちゃダメでしょ! 大胡の殿さまは私と同じ12です!」


「あ~、そうだった」

「間違えちゃったよ」

「あのおじさんもいい線いっているのになぁ」

「紛らわしい」


 口々にはしたないことを言う。子供だから仕方ないが、まだまだ躾が足りぬな。


「松風さま。いつも誠にありがとうございます。お陰様でここにいる子供たち55名。よく食べよく遊びよく勉学をして暮らしておりまする」


 大胡の殿はそれを聞き、我がことの様にうれしがった。これが日ノ本全部の子に行き届けば、平和になるのかな……と。


 そして

「戦は嫌だなぁ、人が死ぬし、きついし痛いし怖いし。ゲームなら楽しいんだけどね」

 と、独り言を仰る。


「とにかく! 皆、ご飯美味しいかい~? お残しはいけませんで~♪」


「は~い」


「まあ、勉強や運動も大人になったら絶対便利だから頑張ってね~」


「は~い!」


 よしよし、と、みんなに手を振りながら、拙僧の庫裏に向かい詳しい状況を聞かれるのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 同日

 上野国二ノ宮赤城神社

 マシラ

(主人公に大事にされている筈なんだけどなぁ。その様子が見られない)



 今日は神主殿に呼びつけられここに来ているが、どうやら大胡の殿との秘密の会合が持たれるらしいな。


 大胡の殿の命でいろいろな神社にお世話になっているが、なんということはない。伊勢神宮・鹿島大社とは比べるべくもなく、いや富士浅間神社にも遠く及ばない規模であったか、この神社。


 しかし上野国では大きな勢力を誇る二ノ宮である。ここを拠点に走り回れるのは感謝じゃのう。


「いつも、多額の御寄進いただき誠に感謝しておりまする。必ずや松風丸様に神の御加護がお降りしましょう」


 そんなに都合の良い神さんなんじゃな。

 銭に左右される神さんは、あまりありがたくないのう。


「して、今日は何がご用でござりまするかな?」


「うん。えとね。そろそろ越後の商人、蔵田屋さんを紹介してもらおうかなと」


 殿さんの隣に座っとるおさむらいがびくっとしたなぁ。

 何か知っとるんか?


「蔵田五郎左衛門殿ですかな? あの豪商にして越後長尾家の御用商人の」


「そそ。その人。もうあちらさんも、こっちに来たくてしょうがないんじゃないの?  

 繊維つながりで交易もできるし~。神主さんなら、お伊勢さんの御師おしさんにコネあるんじゃない? 

 できればそこを絡めてお願い~♪」


 ますます隣のおさむらいが、殿さんの方を青くなって見ている。たまにこっちもチラチラ見てくるねぇ。こええ、こええ。


「わかり申した。出入りの御師の方に手配をお願いしましょう」


「ありがと~。今日はこれだけ~。じゃあ今年の初穂料は弾んでおくね~。瀬川ちゃんに言っておくから~

 よろぴこ♪」


 なんでい、わしは関係なしかい。

 来てそんしたなも。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 同日

 華蔵寺建立予定地西方半里

 冬木元頼

(益々忙しそうな産業大臣)



 先ほどまで、このあたりの施設を、殿にざっと説明しながらお連れして回っていた。


 磁器用の登り窯

 焼酎の蒸留施設

 石鹸用松根油の製造現場

 生糸の糸繰り場

 生糸を取った後の蛹で鯉を養殖しているため池

 そこかしこの建築現場

 治水途中の桃ノ木川や船着き場

 そして本格的に稼働し始めた高炉と反射炉

 精錬した鉄を鋳型に流し込む作業場


 皆、元気に溌溂はつらつとして働いている。殿が来ると皆、振り返り笑顔で手を振る。殿も負けずに手を振り、たまに駆け寄ると、


「これなんじゃ? へえぇ。工夫したねぇすごいなぁ。後で瀬川ちゃんに金一封届けさせるよん♪」


 などと話しかけている。


 この後は街の酒場で同行しているお客と飲むらしい。殿は飲めないが、お客が代わりにガンガン飲むであろう。


 もう申の刻を廻っている。そろそろ酒場は盛況になる時刻だ。楽しいだろうな、みんな。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 同日酉の刻

 上野国大胡城下居酒屋吉兆

 真田幸綱

(調略される丸顔達磨)



 言葉が出ない。


 まず、なんなのだ? 

 これから他国へ仕官するはずの武将に、ここまであからさまに領土を隈なく見せるとは!?


 大体、調略指示に立ち会わせるとか正気か? 

 サンカを使っていることがばれたら、この先どうするのじゃ?


 まあ、全部見せてはおらないであろうが、これだけの情報、売れば数年遊んで暮らせるわい。


 それに……


 甲斐や信濃はおろか、富裕を誇る今川の駿府よりも、店に物が豊富に置かれているのでは?


 一番驚いたのが、鉄を大量に作っていること!? あれは相当多くの武具が簡単に出来上がるであろう。


 作られている商品もよく知られている焼酎だけでなく、生糸や石鹸、油類。これは相当な銭が入る。


 噂は本当であったか。

 きっと武勇も噂通りなのであろう。


 何よりも納得がいった噂は

 「仁将」

 であった。


 出会う領民領民が松風丸に手を振り、にこやかに笑い顔を見せる。今も目の前で、武士も百姓も関係なく酒飲んで騒いでおる。


「暗い人には暗い人が集まる。

 暗い人の未来は……」


 松風丸、いや松風様はこう言いたかったのだろう。


「明るい人には明るい人が集まる。明るい人には明るい未来が待っている」

 と。


 そして儂にも明るい輪の中に入れば?

 と、誘っているのだ。


 負けたな。

 とんだ人誑ひとたらしであったわ。


 儂も輪に入って飲み明かそうかの。


 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 作者は某SLG、信〇の野望は第1作からやっていますが、最重要と思っていたのは何気にカリスマ性だったりします。



 別のお寺の名前まで盗んでしまう主人公の影響力

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860632955785

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