【補償】後始末大事
1552年12月上旬
上野国赤石城
瀬川正則
(旧那波領復興担当大臣)
「え~~~。まだダメなの~~??」
「はい。まだ駄目です」
戦場になった赤石砦周辺。
現在は城として増改築され、とりあえずの防御施設から「だいぶましなもの」へと変化している。
その周辺の集落も、武蔵からの流入する者たちで開墾が進み、大きく変貌を遂げている。
が、まだ終わらないのである。
あの戦闘で大量に消費された撒き菱を始めとした鉄製品の回収。これが一向に終わらない。
特に撒き菱が厄介である。それを撒いたところを開墾しようとして、砂鉄採集用の磁鉄鉱を引き回して回収しようとしたが、該当する箇所が多すぎると同時に、どこへ撒いたか分かる者がいない。
こういった事務的な仕事ができる者が戦場に出ていなかったせいだ。
「やっぱ後片づけ、大事。
うん。住んでいる人に迷惑、思いっきりかけちゃったからね。青田刈りも含めて」
撒き菱などがあると、やはり農作業など安心して出来はしない。元からの那波の農民は年貢取り立てで、種籾すら食べねばならぬところまで追い詰められてしまった。
年貢の3年間免除とお救い米配布。それに拾ってきた鉄製品を、新たにここへ越してきた野鍛冶に売ることで、臨時収入を得ても良いこととした。
新入りに取られる前に回収しようと血眼になって回収をしていたが、それでも撒き菱だけは上手く行かない。
「地雷は嫌い。くらすたあとか対人地雷は禁止です」
もう撒き菱は使わないらしい。鉄でできた縄、鉄条網も内線作戦の時しか使わないそうだ。自分の領地で戦うことになるので、その領民に迷惑料としてどんどん拾って回収してもらうことにしている。
「館林の戦いの際使用した鉄条網は、由良様より有難しとの手紙が来ておりまする」
館林の領地はあの後、由良と佐野で分け合った。その際の鉄関連は迷惑料として住民に納めてもらいたかったが、多分そう上手くは行かないだろう。
そのような住民思いの施策をする家など、財政に余裕のある大胡くらいである。
「なかなか、思ったようには運ばないねぇ。人生そんなもんさ」
18の殿が人生を悟ったような言葉を発する。たまに殿が老人に見えるのは某だけであろうか? あとで皆に聞いてみよう。
「で、旧那波領の人口はどうなの?
増えた?」
「は。現在、ようやっと戸籍ができ申した。これによれば元からの住民が3万1253人。現在7万9011人でございまする」
「ほえぇえ。ずいぶん増えたねぇ。
食糧とかだいじょぶ?
それと職は?」
「牛馬の堆肥が使えるようになり、単位面積当たりの収量が飛躍的に増えました。
また開墾が進むと共に那波全体でおおよそ田が6万石。畑が小麦大麦7万石。麦は焼酎の原料にしたり、新しく作られ始めた
あとは職ですが、徒弟制度を奨励し職人育成が徐々に始まっています」
大体の進行状況を説明させていただいた。
「内職はどんなかんじ~?」
「問屋制の家内手工業が広がっています。問屋も各地から商人が集まっており、他の領国へも広がっております。
よろしいので?」
「うんうん。皆が富んでいくのはいいこと~♪ 早くみんな豊かになるといいね」
勿論、殿のこと。きっと裏で大胡の噂を流しているのであろう。
「損して得取れ」といつも言っている。戦場となった村々を救えば救うほど、大胡の殿様は仁将だということになる。
これが他の大名の領国が戦場だと、どうなるのであろう?
いや、きっとその時は、その土地を支配する結果になるような采配を振るうに違いない。思ったようには運ばないと嘆きつつも結局、殿の思い通りになるのでは、と思った。
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異なる世界線では問題が起きないようにしたいですね
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636707622
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