【斬首・2】鉄砲の有用性を身に染みて感じたタイガー

 1548年3月30日

 甲斐国躑躅が崎館

 武田晴信

(常日頃、どこかしらに傷を負っている甲斐の手負いの虎)



 朦朧とした意識の中で、何者かに左手首を掴まれているのを感じた。


「峠は越えましたかな? 

 やっと血が止まりました」


「おお、それは……天祐!」

「誠か? 感謝いたす。徳本殿!」

「御屋形様。まだ戦えますぞ! 

 信濃を武田の物といたす御旗盾無しへのお約束。守れましょうぞ」


 馬場(信房)・工藤(内藤昌秀)・駒井(高白斎)か……


 儂は撤退したのか。

 本隊はどうした?

 儂の威信は保てたか?


「御屋形様。

 ここまで無理せずとも甲斐の者、付いていき申す。これからは御身大事に」


「……陣は……?」


「おお、おしゃべりになられた。無事撤退いたし、上原城は小山田が入っておりまする」


 そうか、粘り強い(小山田)信有が入っているか。

 そうそう抜かれまい。


「明日より10日間、日に2度或粉保流アルコールと硫黄を処方いたしまする。この布と包帯をよく煮て、毎日数度取り換えていただきたい。

 薬湯と粥で体力を戻して参りましょう。10日後にその糸を抜きまする」


 糸?


「まさか御屋形様の体を布の如く縫うとは、思いもよらなんだ。それは徳本殿の考えたものでござるか?」


「いえ。これは弟子の菊蔵と申すものが発案したもの。某はそれを実際に行ってみただけ」


 この切り傷2か所、種子島?の傷1か所を縫うたのか?


「問題は種子島の方でござる。少々弾がはじけておりまする。全部は取り切れませぬ故、膿が出るやもしれませぬ。

 糸を抜いた後、体が動くようになりましたら湯治に出かけるとよろしいかと」


 そう言い、医者は去っていった。


 湯村か。


 ひと月ぐらいはかかると言うたな。まずはこの体を何とかせねばならぬ。村上も相当、損害があったはず。

 直ぐには動けまい。



 それにしても3方向に伏兵がいようとは。影が2人とも手負いになった。鎧を着こんでいたのに易々と射貫いた。


 種子島、恐ろしいものだ。


 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 この世界線では長篠の戦はどうなる??


 

 異なる世界線の温泉に入ってみたい

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860633415385



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