「ッ最低。今後一切、近寄らないで浮気クズ男」と、俺を盛大に振った幼馴染が今更、誤解だと気付いて言いよって来ても、もう遅い。……今、俺は大人気アイドルのヤンデレ美少女に監禁されているので……

巨乳美少女

第1話 幼馴染との決別

「何? 色んな女に告白しまくって……。挙句に散々浮気して……とうとう私にもそうやって言ってくるわけ? 信じられない」


「いや違う、俺は色んな女に告白なんてしない。告白をしたのなんてこれが正真正銘、初めてだ。俺を信じてくれ、芽依、俺はお前が好きなんだ!」


「無理。最低。今後一切私に近寄らないで浮気クズ男」


放課後の屋上。震える声で精一杯に、人生で初めての告白は失敗に終わった。


俺は盛大に振られたのだ、後悔なんて微塵を感じないほど頑とした返事で。


昔からの付き合いで幼馴染の佐藤芽依さとうめい。俺の初恋だった。初恋だったのに……。


「芽依……それは誤解なんだ!」


全ては学校中に広がった俺の噂のせいだ。


入学当初から佐藤芽依というS級美少女と仲良く話していた俺をよく思わない生徒たちが流した根も葉もない噂。


初めはほんの些細な噂だった、だがその噂は留まることを知らずに俺をよく思わない生徒からの更なる噂が重なり、噂が独り歩きした結果。


俺、佐々木唯斗ささきゆいと=女好きで浮気癖のあるクズ男としてすっかり定着してしまった。


しかし、俺は芽依を信じていた。誰よりも俺を知ってくれていて、学校中に定着した俺の噂はたんなる誤解だと分かっていると……思っていた。思っていたのに。


「近寄らないでって言ったよね?」


「……芽依……お前本当に──」


「っ、さよなら」


そう言って彼女はその場を立ち去った。



♢ ♢ ♢



夕暮れが綺麗にうつる頃、俺は公園のベンチに佇んでいた。


俺はもうダメかもしれない。幼い頃から追い求めてきた幼馴染は確証のない噂話によって縁を切られた。


高校では常に一にも二にも芽依との関係を優先していた。俺に悩みを話せる友達なんてものはいない。


「近寄らないで浮気クズ男」


俺の脳内で何度も何度も再生された。これで黒歴史がまた一つ。明日からどんな顔してアイツに会えばいいんだよ。……ま、会うこともないか。


これで本格的にぼっちだな……。友達をつくらなかったツケがここでまわってきたか。


しかし、誤解に塗れた浮気クズ男に友達などつくれるのだろうか。答えは簡単、NOだ。


俺はふと芽依と繋がりがあったメッセージアプリの画面を覗いてみる。


【友達】七人


俺は苦笑し一人一人名前を確認する。初めにお母さん、そしてお父さん、母方の祖母に祖父、父方の祖母に祖父そして最後に芽依。


俺がどれだけ芽依を信用していたかが垣間見えるトーク画面だ。


俺は意を決してメッセージアプリで唯一血の繋がりがない友達、佐藤芽依にメッセージを送ろうとしたが途中で断念した。


「はぁ、どうせブロックされてるんだろうな」


無理に送って未読or既読スルーは自分の首を絞めることになる。


もうそろそろか……「はぁ」俺は再び溜息をつきベンチから立ち上がり、家に帰ろうとしたその瞬間。


「すみません?」


綺麗な黒髪ボブカットのS級美少女が申し訳なさそうに近付いてきた。


「はい?」


この人可愛いな……。俺はふと、芽依と重ね合わせてしまい咄嗟にかき消した。


「ここって、どこか分かりますか? ごめんなさい。私、方向音痴なんです」


そう言って彼女はアプリ地図をみせてきた。


ここら辺はなかなかに複雑な街だ、迷子になってしまうのも無理はない。最近引越したのなら余計に。


「ここですね……。分かりますよ。良ければ案内しましょうか?」


「いいんですか?」


今の俺は特にすることも無い。いつもであれば芽依にメッセージアプリでトークを持ちかけていたことだろうが、もう俺たちはあの頃の関係ではなくなってしまったんだ。


「いいですよ。僕についてきて下さい」


「ええ! ありがとうございます!!」


俺は呆気なく了承し彼女を目的地まで連れて行った。



♢ ♢ ♢



辺りはすっかり暗くなり、夜が刻一刻と迫って来ていた。


「ここ、ですか?」


そこはかなり大きなマンションなっていて見上げるのも一苦労だった。


「はい! 本当にありがとうございます!! ……もう遅いですし、お礼も兼ねて、良ければうちで夜ご飯食べていきませんか?」


「そ、そんな……! 悪いですよ」


彼女は家で晩飯を食べるという提案をしてきたが、流石に今日知り合って道案内しただけの関係では家に上がり込み、さらには晩飯を頂くなんてあまり良くないよな。


正直、俺はこんな美少女に家へ招待されているんだから行きたい気持ちは山々だ。


「大丈夫です! 遠慮しないで下さい!」


彼女は是非! と言わんばかりに明るく振舞った。


……昔なら遠慮を貫いていただろうが今の俺に失う物などない。俺は振られたのだ。


友達もいない俺は一人になったのだ。ならば今日くらい甘えさせてくれないか。


「……それじゃ、お言葉に甘えて」


「はい!」


これが、地獄の入口になることをこの時の俺は知る由もなく、彼女の部屋へと足を進めて行った。



♢ ♢ ♢



部屋は思った以上に広く、俺がみとれていると、リビングに案内された。


「ここに腰かけて待ってて下さい」


俺は言われるがままに待つことにした。その間まわりを見渡して見たがいかにもお金を持っていそうな家具ばかりが並んでいた。


因みに窓から見える景色は絶景だ。なぜならここは十五階だからな。


「こんな所に住めるなんて凄いですね。僕も一度は住んでみたいものですよ」


「ありがとうございます。……もうそろそろご飯出来ますよ」



♢ ♢ ♢



高級そうなテーブルにはサラダと肉じゃがが置かれていた。


実に美味そうだ。いつもはコンビニで飯を済ませている俺がコンビニ飯以外を食べるなんていつぶりだろうか。


「すみません、簡単なもので……」


「いやいや凄いです! 僕全然料理なんて出来ないですし!」


「良かったです」


美少女の手作り料理、これが拝めるのはこれが最初で最後だろうな。味わって食べないとな。


目の前に座る彼女を見ていると芽依と重なりそうになったので俺は再びかき消した。


「「いただきます!」」



♢ ♢ ♢



「ご馳走様でした」

「料理、美味しかったです! ありがとうございました!」


これは嘘偽りなく本当に美味しかった。俺が今まで殆どをコンビニ飯で済ませていた、ということもあるだろうが彼女の料理の腕は確かだ。


しかし、問題はつい料理を食べ過ぎて睡魔が俺を襲ってきているという事だ。まあ、辛うじて耐えられるレベルだが、これは早いうちに家へ帰って寝るとするか。


「私なんて全然です! ありがとうございます!」


「それじゃ、もうそろそろ……」



そう言って椅子から立ち上がろうとすると立ちくらみしてしまった。めまいか?



……あれ? なんだ? 何故か彼女が霞んで……。



瞼が重い……。何故だ、急激な眠気が……。



ダメだ、起きろ唯斗……ここは……自分の家じゃない……俺が道案内した……女の子の……



♢ ♢ ♢



「もーやっと起きたよー! おはよっ♡ゆーくん♡」


「……ここ、は?」


俺が次に目を覚ますと、ベッドに横たわっており、昨日の女の子が出迎えてくれた。


「私の家だよ? 昨日のこと、忘れちゃったの?」

「ゆーくんったらあの後すぐ寝ちゃったからさ、急いでベッドに移動したんだけど迷惑だった?」


「ゆーくん? 俺の名前、なぜ知っているんだ?」


そう言うと彼女は口をふくらませた。


「なぜ知ってるって! もー! からかってるの?? だって私、ゆーくんの彼女だよ?♡」


「……は?」

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