プロローグ 3

 余はあらゆる可能性を考えた。しかし、余に絶対的な忠誠を誓い普通よりも格段に強い魔物の番人のことを考えると、有力なのは以下の二つの場合と考えていいだろう。

 一つ目は、番人に見つからないようにこっそりと移動してきた場合。しかしそれは可能性が低い。なぜなら洞窟に中は一本道だからだ。長いトンネルのようになっており、迂回する事は到底不可能だ。硬い岩盤のため、掘りすすめる事はまず不可能。そのトンネルの途中途中に番人の門が用意されている仕組みなので、魔王城に行くには必ず門は通らなければならない。些細な異変でもあれば、すぐさま魔王城に知らせが来るはずだ。

 では、報告する暇がないほど、番人たちが勇者に瞬殺される事態だったらどうだろう。それがもう一つの場合だ。報告される前に全て番人を倒し、報告役の魔物もすぐに始末すれば、まずバレはしない。しかし、報告役の魔物は番人と違って、素早さが取り柄だから、どう取り逃がす事なく始末したかは疑問が残ってしまうが。

 実際報告役の魔物がどれだけ素早いか、それはたった今戻ってきたコウモリ型の魔獣を見てもわかる。余がこのように思考を巡らせているうちに、番人のところまで行って戻ってこれたのだから。

 コウモリ魔獣からの報告を、大臣はしっかり聞き終えたようだった。

「それで、どうだったのだ?」

 余の言葉で大臣は再び前に進み出るも、「それが……」と不可解な顔をしていた。

「番人たちは勇者が侵入したことさえ、全く知らなかったようなのです。今しがたの報告によって、初めて気がついたようで」

「職務怠慢ではなかろうな? だったら全員首を落とす他ないが」

「お待ちください我が君。気がつかなかったとはいえ門から侵入したのであれば、少なくともその形跡が残るはずなのですが、それが全然なかったようなのです」

「そんな話があるか。この地下魔界の入り口は、そこしかないはずだぞ」

「そのはずなのですが……」

 大臣も考え至らずと言うばかりに、それ以降口ごもってしまった。洞窟からの侵入ではないとすると、一体どこから侵入したのだろうか?

 余の思考力では、もうお手上げというしかなかった。

 こうなったからには、魔王城に侵入した勇者に、直接聞いて見るしか方法はなかった。

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