GAMEー現実世界に魔物が現れたのでスマートフォンで技能を覚えて生き延びます!!ー

禍津蛍火

第1話

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《物理法則の変換を実行します》


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《ポータルの召喚を実行します》


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 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ヴーヴー─────────


 ヴーヴー─────────


 スマートフォンの音が車内に。


(電話か?─────────)


 そう思った直後の事であった。


「ッ──!─────────」


(子供!?─────────)


 子供が路上に飛び出して来た。


 ブレーキをあわてて踏み抜く。


(間に合わ─────────)


「ああああ─────────」


 不快な《衝撃》が駆け抜ける。


「ウソだろ─────────」


(子どもを─────────)


 頭の中がスゥーと冷たくなる。


 どうする─────────


 このまま─────────


 そう思ってすぐ考えを改める。


 落ち着け─────────


 逃げたらそれこそ人生終了だ。


 ともかく─────────


 119に─────────


 スマートフォンを握り締める。


 それから─────────


 人命救助─────────


 車のドアを開けて《車外》に。


「え──?─────────」


 思わずそんな声が口から出る。


 緑色の猿─────────


 緑色の猿が俺の視界に映った。


 ゴブリン─────────


 そんな言葉が頭の中を横切る。


 もちろん─────────


 ゴブリンは架空の生物である。


 現実世界にいるはずがなくて。


 そう思った直後の事であった。


 ゴブリンが青く輝く《蝶》に。


《実績解除【最速討伐】を獲得》


《特殊技能【事象回帰】を獲得》


《あなたのLvが上昇しました》


《あなたはSPを獲得しました》


《あなたはJPを獲得しました》


 頭の中にメッセージが流れて、メッセージが流れると同時にスマートフォンが振動する。


「は──?─────────」


 思わずそんな声が口から出る。


「今のって─────────」


 スマートフォンの画面を見る。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 Lv:1

 名称:鶴城来栖かくじょうくるす

 筋力:5

 魔力:5

 体力:5

 反応:5

 技能:事象回帰【ー】


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「これって─────────」


 誰に言うのでもなくそう呟く。


「グギィィ─────────」


「ッ──!─────────」


 反射的に背後に視線を向ける。


 緑色の猿─────────


 ゴブリンが俺の視界に映った。


(もう一匹─────────)


 そう思った直後の事であった。


「グギィィ─────────」


 ゴブリンが飛び掛かって来た。


「ッ──!─────────」


 ゴブリンがその腕を振り抜く。


 斬ッ!!─────────


 最初に知覚したのは熱だった。


 喉ッ!?─────────


 首ッ!?─────────


 咄嗟に自分の喉に手で触れる。


 湿った感触が手の平に走った。


(血──ッ─────────)


 そう思うと同時に激痛が走る。


 ウソだろ─────────


 喉──を─────────


 ゴブリンが距離を詰めて来る。


(逃──ッ─────────)


 足がもつれてその場に倒れる。


 誰──か─────────


 助──け─────────

 

 鉄錆の臭いが嗅覚を満たして、部屋の電気を消すようにして視界が「パッ」と暗転した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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《回帰地点の検索を実行します》


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《回帰地点に事象を回帰します》


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《幻想世界の侵食が加速します》


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 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 どれほど意識を失っていたか。


 自分の声に驚いて目を開ける。


 見慣れた《デスク》が視界に。


 あわてて周囲に視線を向ける。


「ここって─────────」


 誰に言うのでもなくそう呟く。


 それから─────────


 自分の首に恐る恐る手で触る。


「夢──か─────────」


 どうやら夢を見ていたようだ。


「なんだよ─────────」


 安堵のため息を一つ吐き出す。


 と同時に─────────


 羞恥心がドッ!と押し寄せる。


「勘弁しろ─────────」


 誰に言うのでもなくそう呟く。


 不幸中の幸いと述べるべきか。


 残っているのは俺一人だった。


「まったく─────────」


 変な寝汗までかいてしまった。


「帰るかな─────────」


 誰に言うのでもなくそう呟き、ノートパソコンをシャットダウンして駐車場に移動する。


 運転席のドアを開けて車内に。


 危うく尻で折るところだった。スマートフォンをポケットから出して助手席のシートに。


 シートベルトを装着したあと、自宅に帰るべくエンジンを始動させて駐車場から道路に。


 交差点を右折して国道に出る。


 間もなく─────────


 ヴーヴー─────────


 ヴーヴー─────────


 スマートフォンの音が車内に。


(電話か?─────────)


 そう思った直後の事であった。


(子供!?─────────)


 子供が路上に飛び出して来た。

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