第一章 禁断の魔道士(13)

「まさか…知らない…とか言わないわよね?」




「時の神殿ってなんだ?」




するとセイラは、




「あきれた。アンタ本当に知らないのかぃ? 仮にも魔道を志した者がこんなポピュラーな話を知らないなんて」




セルティガは気分を害したようにあからさまに顔を顰(しか)める。




「知らなきゃそんなにおかしいことなのか?」




「はっきり言わせてもらっておかしい!」



セイラも、うんうん、とうなづく。



「アンタさぁ~スクールで魔道の教えを毎日のように説かれ、それをおぼえていないなんて…脳みそ、入ってるぅ? それは飾り物なのかしらぁ~?」




「なッ!?」




セルティガは、何もそこまで言わんでも…ゴニョゴニョと口のうちにて呟いている。




女性陣の総攻撃にタジタジだ。




「しょうがないな……この話を知らなきゃ話が進まないじゃない。何度も説明するなんて面倒だから一度しか教えない、いいわね?」




「俺も落ちぶれたもんだ、こんな苦学生に教をこわなきゃならないなんて」




「教えてほしくないのね? いいわよ、二人で話を進めるから」




「そんなことはない。口が滑っただけだ、許せ」




「なら耳の穴をカッポじって聞くこと!」




「はぃはぃ」




その昔、まだ人は無智で神の助けをうけて暮らしていた時代のこと。



神は人々の前から忽然と姿を消してしまった。



人々は神の助けをうけなければ火をおこすことも狩りをすることもできなかった。



そんな時だった、精霊が人々に手をさしのべたのは。



精霊は火をさずけ狩りのしかたを教え生きていくための術(すべ)をあたえた。



そうして長い時が流れた。




だがあるとき人間のなかに不思議な力を授かって一人の男の子が生まれた。



その男の子は精霊から魔道を学び、やがてその魔道を人々に広めていった。



その男の子こそ『大神官』その人だ。








「その話とコレとなんのつながりがあるんだ?」




「人の話は最後まで聞けぇー!話の腰をおらないでよね。そんな感じだから必須科目の内容すらおぼえてないのよ」




「すまん、すまん、それで?」




「まったく!黙って聞きなさいよ」




だが精霊のなかには快く思わない者もいた。




このままではすべての精霊を御すにはいたらず、また呪文の力だけではその効力は弱すぎた。



そこで大神官は一つの条約を結ぶ。



精霊と人間との共存、友好的ではない精霊をも承服(しょうふく)させるほどの効力、それが『精霊条約書』である。



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