第28話 学園試験

 学園生活が始まってから約二カ月が経った。

 教室では生徒たちがそれぞれ仲のいい生徒とグループになって話す、そんな風景が日常的になってきた頃、一年生初めての正式な試験が行われることになった。

 その試験を受けるため、キリヤたちは学園の地下に向かっている。


「試験か。こうして大掛かりなのは初めてだな」


「そうですね。学園襲撃はあくまで事件でしたから」


「襲撃、……やっぱり私もその場に居たかったな」


「あれはシスタでも辛かったと思うわよ。魔法が封じられたんだからね」


 キリヤ、ディル、レイシスタ、フレイナ、クラスでも実力が上位に位置する四人は談笑をしながら担任の後をついて行く。


「この試験ってどんな試験なんだ?」


「例年通りであれば学園の地下にあるダンジョンでの魔石の採取だと思います。一年生初めての試験ですからね、成績にも大きく影響してきますよ」


「へぇ~、舎弟くん詳しいね」


「兄がこの学園出身なので色々と話を聞いたんですよ」


「でもそれって数年前の話だよね。じゃあ今回の内容が変わってる可能性は十分あるわけだ」


「そうね。それに、この学園の地下と言えば「無形迷宮」。入るたびに形が変わる特殊なダンジョンだもの、内容は変わってるでしょうね」


 レイシスタとフレイナの容赦ない言葉に、ディルは言葉を詰まらせる。


「けど地下でやることは確定ぽいんだろ?無形迷宮ってのは具体的にどんな場所なんだ?」


「あ、兄貴!……無形迷宮は、フレイナ嬢の言った通り入るたびに形が変わるダンジョンです」


 ダンジョンと言うのは魔石や魔物が発生する特殊な場所だ。

 魔石は魔力を溜めたり、魔道具を作成するために使うために必要となる希少な物。

 魔物は魔力を持つ動物。魔物から取れる素材は魔道具や薬の材料になる。


「王立魔法学園がこの場所に建てられたのは、無形迷宮を調査するためでもあります。その調査と並行してこうした試験にも使われている訳です」


「なるほどな。……でもそれってよく分からない場所を試験で使ってるわけだよな。やっぱりこの学園は頭がおかしいな」


 キリヤの身もふたもない言葉に一同は苦笑いをする。


 そうして話をしている内に学園の地下に着いた。


「さて、それでは試験の説明といこう」


 担任の言葉に、和気あいあいとしていた雰囲気が一気にピりついた物に変わる。


「今回の試験はこの無形迷宮で行われる。内容はダンジョンからの脱出。今から諸君はダンジョン内のランダムな位置に転移してもらう。位置はランダムではあるが、魔力量が多いほど地下に転移するようになっている。キリヤに関しては、以前の学園襲撃の功績を踏まえて、フレイナ、フロールと同じ階層に転移するからそのつもりで」


 担任は笑ながらキリヤに目を向ける。


「分かりました。けど、そこから脱出できれば高い評価を貰えるんですよね?」


「もちろんだ。それと脱出のために協力し合うのもありだ。脱出することが第一条件。高い成績が欲しければ出来るだけ早く出ること。とうぜん自分よりも下の階層に転移した奴より遅ければ低い評価になる。まぁ無形ダンジョンは何が起こる変わらない、危険だと思ったらこの魔道具を発動させろ」


 担任は生徒たちにブローチ型の魔道具を渡す。


「それを発動させるとここまで転移することが出来る。当然成績は最低評価になるがな。……心の準備が出来た物から迷宮に入れ」


 生徒たちはそれぞれ、深呼吸したり杖を確認したりして、中に入って行く。


「どうやら私たちは一番深い場所に飛ばされるみたいね」


「だね。……この前は決着つかなかったし、今回も勝負する?」


「私は構わないわよ。私が勝つから」


「へぇ、ニーナ言うじゃん。キリヤはどうする?」


「別にいいぞ。どうせ全員が競争相手だからな」


 三人が無形迷宮に入り、試験が開始した。









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