第2話 入学初日、波乱の予感
キリヤ
彼はこの世界に生を受けた時から、その身に一滴も魔力を持たず、魔法の一切が使えなかった。
そんな彼は幼い頃に両親をなくし、唯一の肉親である妹は病に伏している。
そして、その妹の病を治すには田舎暮らしのキリヤには到底不可能なほどの金と地位が必要だった。
そこで目をつけたのが『王立魔法学園』
この学園をトップの成績で卒業すれば、それなりの地位を得て職に就くことができる。
彼は妹を救うため、魔法至上主義の世界を縮小した『王立魔法学園』に入学した。
_____
「なんとか入学はできたが、……本番はここからだな」
キリヤは覚悟を胸に、ガヤガヤと騒がしい教室の扉を開ける。
ガチャッ
「………」
キリヤが教室に入った瞬間、騒がしかった教室がしーんと静まる。
(いきなり静まって、どうしたんだ?)
キリヤは教室の様子を気にしつつも、教室の一番後ろの席に座る。
そんなキリヤを、クラスメイトたちは訝しむような目で見る。正確にはキリヤというよりその腰に下げている剣に視線が向いている。
(やっぱり剣が原因か。ま、2、3日すれば慣れてくれるだろ)
そうして数分後
「おい、そこのお前!」
「え?」
ある男子生徒がキリヤに声をかける。
男子生徒は茶髪にキリヤと同じくらいの背、そして何故か偉そうな態度を取っている。
「なにか用か?」
キリヤが答えると、男子生徒は怒ったように声を出す。
「なにか用か、じゃない!俺に向かって口の利き方がなっていないようだな。……お前からはまるで魔力が感じられないな。やはり魔力の少ないものは、物わかりが悪いんだな!!」
そこまで馬鹿にされて流石に腹が立ったのか、キリヤは立ち上がり男子生徒を見る。
「な、なんだよ。俺は、ディルガス=ライデルト。ライデルト家の次男だぞ!」
どうやら男子生徒、改めてライデルトはそれなりの地位を持つ貴族の次男坊らしい。
だが、そんなラデルトはキリヤの謎の威圧感に圧される。
「そうか、それはすごいんだな。で、用件は何なんだ?」
キリヤは感情のまま怒る、なんてことはせずに冷徹な目を向ける。
「すごいな、だと?……ちっ、まぁいいだろう。用件は一つだ、お前の座っている席は俺が目をつけていた席なんだ。さっさとどけ」
普通、高位の貴族であるライデルトの言葉に逆らうものはいない。だがキリヤは普通では無い。
「そうか。だが、悪いなここは俺の席なんだ。他の空いている席に座ってくれ」
キリヤはそう言うと、話は終わりだとでもいうように窓の外を見る。
「おい!まだ話は終わってな……」
「全員席に着け。さっそくだが授業を始めるぞ」
ライデルトが話そうとした瞬間に教師が入ってきた。
「ちっ。お前、覚えてろよ」
ライデルトは、そんな言葉を残し空いている席へと向かっていた。
「覚えてろって。何を覚えてれば良いんだ?」
キリヤは面倒くさそうに呟いた。
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