リオン視点 彼女にできること
本当にこの子は、こんな小さい体に抱え込み過ぎなんだ。
泣き疲れて眠ってしまっているアリシアの頭を膝に乗せながら、先程までの会話を思い出す。
「『わかってたはずなんですけどね』…か」
もう二度とあんな歪んだ笑顔、泣きたいのに我慢した笑顔は見たくない。
「これじゃあまるで、呪いじゃないか」
アリシアの先生、アーシャ。おそらく前アースベルト侯爵のことだろう。アリシアにあれだけの知識を与えられるのは彼女しかいない。アースベルト領の孤児院であったならば、必ずアリシアの父のこともわかっていたはずだ。
だが、彼女は恨みを持った男の娘に当たるような、そんなことをするような人間じゃない。おそらく彼女なりの、平民から貴族になるアリシアのための、貴族社会の生き残り方を教えたに過ぎないのだろう。
「…リオン様。家の中にこのようなものが…」
「…レシピか?……これは…」
「はい。ニーア草を使った料理のようです。それも、味がわからないように濃い味付けばかりの」
「アリシアの言っていた通り、グルだったと言うことか…」
やはり、前アースベルト侯爵がアリシアに呪いを残したのではなく、両親の存在が彼女にとっての呪いであったか。
「はぁ、やるせないものだな。俺には何もできない」
「そうですか?結構信頼されているようですが?」
そう言って俺の膝下にいる彼女を見る。
「それで、眠ってしまっているようですけど、これからどうしますか?」
本来はここまで明確な証拠が出ると思っていなかったからな。今日中に家に帰すつもりであったが…
「とりあえず、エヴァンス公爵の家に行こうか。ここまで証拠が残っているくらいだ。おそらく、向こうも何かしら見つけているだろう」
「帰さなくていいので?」
「おそらく、今の心情的に帰ってもいい結果は生まれないだろう。主に、彼女の精神的に。何、レオスとの関係がうまくいっていると勝手に勘違いしてくれるさ」
「襲撃の件に関しては?心配なさるのではないでしょうか?」
「そうだな…だが、俺たちも彼女に言われてから気づいたんだ。彼女が信頼できる者が残っているのだろう。それに、向こうにはドーラがいる。私たちが心配することはないさ」
向こうは犯罪の証拠を隠滅するような頭ないのだ。今日のことだって暗殺者を雇うのではなく、領民たちを金で雇うようなことしかするまい。
「そうですね、ではエヴァンス公爵の元へ参ります」
このままだと、明日が大詰めになりそうだな。もう少しこのゴタゴタが続くと思っていたが、相手の無計画性によって大幅に早まってしまった。
早まるのはいいことなのだが…
「もう少し彼女と距離を詰めたかったのだがな…」
「いいじゃないですか。先ほどもいい感じでしたよ。『俺にだけは弱みを見せてくれ』とってもカッコよかったですよ?特に俺。私たちの前じゃあ、いつも私なのに、いつ俺なんて言葉覚えたんですか?」
「お前…もう少し主人を敬えよ」
「…申し訳ありません。リオン様。リオン様がおっしゃられていた言葉はとても素晴らしく、アリシア様にとってもさぞ心強い言葉だってでしょう。それに、いつも私と言って凛々しくおられる方が、俺という力強い言葉で「ああ、もういい!黙れ!」そうですか?私なりに敬った言葉を意識したのですが?」
「はぁ、もう今のままでいい」
「そうですか…それと、私はアリシア様に使えることを希望しますね」
「……」
それだけ言ってサリアは黙る。これは…失敗したら今以上に何か言われそうだな。
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