言えないバッテリー

フレイヤー

第1話 言えない関係

「言えないバッテリー」いきなりですが、皆さんに質問です。皆さんは、もし今いる世界が、

 自分の知らない世界だったらどうしますか?

 僕は、この時は、分かりませんでした。

 まさかこんなことになるなんて。

 僕は、国松真。

 とある田舎の高校野球部のエースで、楽しく生活していた。

 あの日、一人の男に会うまでは。

 ここは、野球部のグラウンド。

「おお!真、球走ってるなぁ~」

 そう俺に、声掛けたのは、同じく2年の松山洋一。

「洋一、球走ってるって言いながら、ミット動いてないとか何様なのさぁ。全くもう~頼むよー本当に」

「悪り~いな。だって、お前の球遅くてさぁー」

「てかさぁ~晩御飯何が良い?」

(晩御飯?バカか、洋一は?俺達の秘密だろがよ)

 あのアホ。

 ん?洋一のやつ?何、晩御飯聞いただけじゃないか。何怒ってんの?

「松山先輩?国松先輩?どうしたんすか?」

「あぁー武山。なんも無いよ。なぁー?洋一?」。

「あぁ。真の言う通りさ」

『俺の気のせいだったんすねぇ。なら良いっすよ」

 ふぅ~とため息を吐く2人だった。

 部活が終わり、グラウンドを後にしようとすると、

 マネージャーの弓岡千春が、挨拶に来た。

「国松先輩、松岡先輩お疲れ様です」。

「あぁ!千春ちゃん。いつもありがとうな。

 てか、さらっと、俺の名前間違ってるし。

 国松ばかり羨ましいなぁ~。千春ちゃん?

 松岡じゃないからね。松山だからね」。

「はい!松岡先輩~」

 いや、わざとだろ?まぁ~良いや。

「ところで、国松先輩?今日も松山先輩の家ですか?」

(ちょっと?千春ちゃん?なんのことかなぁ?)

「千春ちゃん?何か知ってる?」

「知らないですよ~武山先輩~」。

 千春は、そう答えた。けど、千春知っていた。

 2人の秘密を。

 帰宅後、晩御飯を作ることにした。

 いつも料理は、洋一がやる。

 じゃ俺は、というと、掃除などの家事を担当。

 晩御飯は、何が良い?って言われたけど、あの場で答えるのは、恥ずかしかった。

 俺達の関係がバレたらと思うと。

 一応、余り物のシチューをリメイクして食べるって話をした。

 そして、今は、自宅。

 クツクツと鍋が煮える音がする。

 サクッという包丁の音が心地よい。

 掃除が終わり、ふと目を向けると、まだ洋一は、料理中だった。

 野球部あるあるとも言える坊主頭。

 そして、エプロンが似合う。

 なぜか洋一を見ていたら甘えたくなった。

 抑えてはいたけど、思わず、洋一の背中を見た時に、久しぶりに抱きつきたいってなった。

 洋一に、「ねぇ、洋一?暖めて?」と聞いて見たら、「今、料理中なんやけど?」って言われた。

 確かにそうだ。けど、無理だ。

 エプロンの腰あたりに腕を回す。

 洋一は、えっ?って顔した。

 そして、何か言いたげだったが、キスをして黙らせた。

 その後、作った晩御飯を食べ、お風呂に入って寝た。

 翌日にとんでもない事実とある来訪者がくるまでは。



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