おじさん魔法少女のくせに悪やってます

お味噌ちゃん21号

第1話

 常に思うことがあるとすれば、僕は意外といい性格をしていることだ。常識もあるし、それなりの人生経験も積んでいる。そこに驕りは入れないよう努力はしている。




 自分の実力をわきまえることにおいて優秀なはずだ。学力も全くないし、そもそも正社員として働いたこすらない。非正規雇用での労働人生を義務教育終えてからずっとこなしてる。悪い人生経験の見本として最高だろう。






 それでも僕の人生は充実していた。無論エリートをみればそれなりに嫉妬するし、高校生を見れば呪詛を、大学生を見れば嫉妬もする。中学生なんて見る気すらない。小学生すらも希望があって大変よろしく思うぐらい、僻んでいる。




 だが目にすればの話。




 目にしなければ何にも思わない。




 誰かと比べるから人生はつまらなくなるだけで、自分の人生だけ考えれば幸せだ。それが僕の人生経験則。snsや動画などの優秀な奴の形を一切目に入れない。恵まれた環境を無視して文句を言う奴を心で馬鹿にすれば、大体満足する。




 友達を作らなければ、比較をしない。知り合いを作らなければ何も思わない。






 家族すら思考の奥底に沈めれば、自由になる。




 そうして生きてきた31年。一切後悔もない。僕の人生を後先考えないと誰かが非難する内容でも、誰にも共有もしないから責められない。これこそが孤独の哲学。自分の見方は自分で選んで作るべきだ。




「あはは」




 愉快でしかたなく、風景が変わっていく様は楽しく思える。




 ハンドルを握る手が振動でぶれる。運転中に考えることではないかもしれない。だが基本車を運転している間、頭に描くのは妄想だ。自分がヒーローになったりでも、異世界にでもいい。自分が活躍するシーンを妄想を飽きるまで続ける。




 そういうことは何歳になっても変わらない。






 国道を走る。下妻と八千代町の間。道路の両脇は緑いっぱいの畑ばかり。窓は締め切り、クーラーはかけない。多少熱さを感じるものの、クーラーをつけるほどでもない。かといって空気はどんよりしてる。されど外の空気を知りたいわけじゃない。




 窓をあければ田舎の香水、糞尿の匂いが車内に入ってくるからだ。






 それは少しばかり嫌なのだ。






 どうせこの後嫌でも嗅ぐからだ。退屈を感じながらも変わっていく風景。ただ畑が両脇に続いているため、何も意識することはない。






 ただ先頭に、人影をみつけるまではだ。またその人影の周囲には同車線、対向車線の両脇の畑に突っ込む形で炎上する車が複数あった。人影の周りを包む炎上する車たち。また同車線において、炎上はせずとも一台だけ奇麗な車があった。ここからでは見えないが、車のバックが壊れているようには見えない。ただ近づくにつれ、フロントガラスが割れているのが後ろからでも見えた。








 人影が僕の車に気づいたようだった。






 僕は車を止めた。ブレーキをゆるやかに踏み、停止。シートベルトを外して、肩を軽くほぐす。それから外へ出た。その際助手席の下にあるプラスチックの箱から靴をとってからだ。基本僕は運転中は素足主義だ。何かあった際に脱出するとき不便でも、僕は素足主義だからやめない。変なこだわりを残し、開いたドアの下に靴を置き、足だけを外に出す形にて履いた。ドアを軽く押す形で閉め、僕は自然な形で人影へ向かう。






 人影はこの距離になると人じゃないってのがわかる。まず色だ。いくら田舎であってもさすがに全身を緑色にそめた甲冑を着ているやつはあまりいない。それもカナブンのごとき、固い殻と輝きをもった人型のものなどあまりいない。また身長も僕よりはるかに大きさを感じる2メートルぐらい。甲虫もどきでありながら腹部すら甲殻に覆われている。また人影と称するように両手両足は人のように二本ずつしかない。






「おっかないなぁ」




 そういいつつ僕は近づくのをやめなかった。両手をジャージのポケットにつっこみ、堂々と歩む。サングラスをかけておけばよかったと思った。そうすればジャージとサングラスで多少頭いかれたおっさんみたいに演出できた。








 カナブンのごとき甲殻であり、反射、田舎で絶賛繁殖中の害悪。他の昆虫も鳥もカナブンをあまり食べないため、増えすぎてる。理由は味が悪い。それだけで生きて増える虫だ。










 怪人の顔が見えるとわかるのが、相手が僕を見下していることだろう。ただカナブンのような虫の顔のため表情はわからない。でもわかる。他人が僕を見下すときの空気は誰よりも感じ取れる。








「やぁ」




 僕が片手をあげ挨拶をすると、相手は小馬鹿にしたような態度を見せた。体をくねらせて、そのくせ指を僕に向けた。






 返事はない。






「言語能力ないのかな?低俗怪人だったかな」






 思わず挑発してしまった。別に怒ったわけじゃない。僕はそういう性格なのだ。見下してくるやつを見下して馬鹿にするのが趣味なのだ。学業を頑張った秀才、就職に成功した天才、今もなお必死に生きている奴が息抜きで僕を見下すのはよくある。何もしない僕なんて見下したほうが楽しいし、鬱憤が晴れるからしょうがない。




 そんな努力をしてなお、自分の幸せを理解できない。比較するだけのモンスターなんて僕の人生の価値になんら与えない。






 ただ僕のそんなあっけらかんとした態度には腹を立てたようだ。






「あぁ?低俗怪人って誰のことだ?てめぇ状況わかってねぇのか?」






 見下す奴に偉そうにされると腹が立つ。よくわかる。僕なんて基本他人を見下しているからね。だから皆から嫌われるんだよ。でも、僕は人が好きなんだ。見下しても見上げても、しょせんただのわき役。




 僕の人生の主役は永遠にとれない雑魚ども。






「君だよ、君、低俗怪人、カナキュラス、この辺で暴れまわっている推定ランクAの怪人。腕力ばかで、仲間もいない孤独ぼっちの雑魚じゃん」






 自分を棚に上げ、僕は肩をすくめた。その際嘲笑してやるのも忘れない。こういうやつにはこういうことをするといい。そうすると相手は大体本気になる。






「俺様をカナキュラスってしっているのはすげぇな。つい最近生まれたばっかりなのになぁ、さすが俺様だよなぁ。この前魔法少女をぶち殺したときに仲間を一人取り逃がしちまったからな、その時にでも流れたかぁ?」






 挑発をして、いきりたちながらも、自分の情報をさらしだす。こういう怪人、いや人間なんて自分は優秀なやつで、調子にのったお前は調子に乗るなという準備体操。ただ怪人だから体操というよりぶち殺す警告かな。






 その証拠にカナキュラスの右手が上がり、甲殻が膨れ上がる、筋肉が甲殻を押し上げている。その筋力は凄まじいのだろう。空気に振動が伝わってくる。






 力のアピール。






 僕は笑った。






「怒らないでよ。おしっこちびりそうじゃん。僕みたいなおっさんは弱いんだよ。いじめないでね。社会からいじめられて、みんなからいじめられて、今度は低俗な怪人に脅迫されるぐらい弱いんだ」






 その瞬間カナキュラスは上げた右手を地面に振り下ろした。自身の右手下のアスファルトが巻き上がり、畑に突っ込んだ車体がゆれて動き出す。破壊力と衝動によって車の炎上がやんだ。炎上した箇所が砕け散り、原因消失によるものだ。両脇の炎上した車は砕けるか、吹き飛んだ。また僕の車も吹き飛びそうだったので、少し細工をした。




 指をならせば、僕の車だけは揺れなくなった。また奇麗なほうの車体も揺れなかった。








 カナキュラスは強いんだろうな。






 正々堂々戦ったら殺されるぐらいには強い。でも、それだけだ。僕の弱さは僕が一番しっている。そのための策は打っている。主に僕の身内が策を練っている。だから安心して調子に乗れる。






「強い怪人なのはわかったよ。怒らないでよ。本当にさ、こんな田舎に君みたいな強くて狂暴な怪人がいるなんて知らなかったんだよ。なんできたの?ここ茨城だよ?下妻と八千代町の中間だよ?何もないよ。人なんて少ないよ。君の強さアピールにはふさわしくないんじゃない?東京とかどうかな?埼玉でもいいよ、千葉は?神奈川は?一都三県連合同盟とかふざけた集合体にいけば君なんてすぐ名前が売れるけどどうかな?」






 僕は提案していた。必死に言いつくろうようにも見えるかもしれない。ただ知りたいだけだ。ここは田舎だ。こんな北関東なんぞにこなくても怪人の活躍場所は沢山あるだろうに。






 そんな僕の疑問に答えてくれるのか、苛立ちを残しながらもカナキュラスは答えてくれた。






「ここには秘密結社鵺があるだろうが?知ってんだぜ、この辺で最近生まれた悪の組織があるってな。確かボスの名はティターなんとかだったきがする。推定ランクAの化物怪人が作り上げた新組織なら、きっと俺様は活躍できる。他の組織はもはや空きがねぇし、名前が売れてる組織を乗っ取ろうにも俺様一人じゃさすがに厳しい。その点、新組織は幹部どころか人でも足りてねぇだろう。だから俺様が参加してやるって寸法よ」






 筋力しか自慢がないと思っていた。カナキュラスの意外な知能に僕は思わず拍手をしていた。






「名前が売れてる組織の強さを知ってるなんてすごいね。この辺の地方組織、秘密結社鵺の情報も知ってるなんて君、実はすごいんだね。でも秘密結社鵺よりかは春日部あたりか、坂東市あたりにある悪の組織あたりのほうが強くないかな?ブランド力もあるよ?」




 秘密結社鵺はこの辺で最近生まれた新興組織だ。実力も未知数だし、能力も未知数。悪の中ではまだ有名じゃないような。




 カナキュラスほどの強力な怪人が望むほどのものではない。この世界においてAランクの怪人なんてそうそういない。Cランクの怪人なんて一級の強さを誇る化物だ。勝手にランクをつけるくせにCとかだと雑魚に思える不思議。強いよ、普通に強いよ。おじさんの僕なんてすぐ殺される自信ある。




 Cランクの怪人がたまに出る出没頻度であれば、Aランクなんてもっと難しいのにね。








「秘密結社鵺のティターなんとかは、怪人のくせに、一人で怪人を産みだせる化物なんだぜ?その意味を知らねぇやつはいねぇ。戦闘能力だけはAであっても、怪人を産みだせるならそれは、ただの怪人じゃねぇのさ」






「ふぅん」






 怪人を一体生み出す労力は凄まじい。それなりの悪の組織であれば月一か、地方の零細悪の組織であれば半年に一体か、組織の能力を発揮して、その分ほかの生産を遅らせるほどのコストがかかる。自然発生タイプの怪人ならともかく、人工的に怪人を産みだすのは非常に手間がかかるのだ。








「俺様は秘密結社に参加するために来た。だが鵺の場所がわからねぇ」






「だからここで暴れているの?暴れたら迎えに来るって、実力があるから活躍すれば目立つって。すごく迷惑です。帰ってください。東京行け、埼玉とか神奈川とか千葉とかで暴れてください。この辺下妻と八千代合わせて800人もいないんだよ?人は貴重なの、殺されちゃうとその分大変なの?帰れ帰れ」








 この世界には魔物がいて、怪人がいて、魔獣がいて、魔人がいて、魔女がいて、悪の組織がいて、人を減らす活動を絶賛行動中なのだ。とにかく間引きしすぎるせいで都会とか人口が多いところはともかく、地方なんて防衛力が少なくて、大減少中なのだ。一都三県同盟というのはこの中にいる人口だけで自分たちの身を守る引きこもり同盟だよ。しかも強い。魔法少女とかヒーローとか冒険者とか独占しているから、地方なんてすっからかん。しかも安全。生き残った人たちはみんな都会を目指すし、その最中にどんどん殺されて数は減るし、都会についても受け入れてもらえない。居場所がないから元のところに戻ろうとしてもそのころにはそこら中にいる怪人とか魔獣、魔物とかに殺されちゃう。






 もう地方は終わりだね、可哀そう。




「てめぇもさっさと正体表せよ、男だからヒーローだろ?力つえぇから俺様相手に喧嘩をうれんだろ?よくいんぜ。俺様相手に調子にのって、狙ってきては撃退される雑魚だろ。そんな雑魚をぼこぼこにしたあと拷問するのは頭がすっとするんだ。てめぇも同じようにしてやるよ」






 カナキュラスは腹を立てつつ、それでいて行動をしない。僕の様子をずっと監視しているようだ。さすが推定ランクAの怪人。






「へぇ」






 ただの馬鹿じゃない。






「話が違うじゃん。僕は強くて頭が悪いやつを連れて来いっていったんだよ。もうさ勘弁してよ」




 カナキュラスがゆっくりと近づいてくる。足取りを見るだけでそれなりに強いのがわかる。ただ戦闘技術はないようだ。生まれたばっかりの怪人だから仕方ないね。放置すると成長して手を付けられなくなるかもというレベル。








 僕は指をさした。具体的に言えばカナキュラスの背後だ。






 視線を背後に僕は固定し、指をさしっぱなしにした。






 そうすれば僕の様子を気づき、怪人は背後を振り返る。強いやつってのはいつだって油断する。僕ならどうするかな。いや僕も振り返るわ。さすがに背後は怖いもん。








 やっぱり強いやつも弱いやつも油断する方針に変更。






 ただ僕はだますために指を向けたわけじゃない。




 現にいるからだ。カナキュラスの背後に3体の影が下りてきた。着地音とともに3体の視線がカナキュラスをとらえていた。また僕のほうに視線を向けて、一瞬目が合った。その後すぐ目をそらしてカナキュラスのほうへ向いた。






 一体の怪人が前に出ており、その後ろに二体の怪人が並ぶ。




 一体の怪人は蝙蝠顔でありながら、吸血するには凶悪な歯が並びたつ。強力な肉食獣みたいな凶悪さだ。まるで虎だ。また薄紫色のネクタイをつけ、灰色の上着はスーツのようだ。袖をまくった腕には虎のような模様の毛深く太い腕。社会人的礼儀の大切さを残しつつ、左胸あたりについたワッペンがあった。、それは獣の絵が描かれている。鳥の翼、寅の爪、獅子の牙、蛇の尾、猿の顔、胴体はよくわからない黒の渦で隠された4足の獣。




 伝承とは少し違う形で書かれた鵺。






 二体のうちの一体。サメの顔と強靭な肉体を持つ、怪人。青白いサメ肌が特徴ともいえる。獰猛な牙が見え隠れしており、噛みつかれたら最後になるだろう。


 残りの一体。自然に同化するための緑色の体。カマキリのような姿をしつつも、腰のベルトにあるのは短剣二本。両側面に短剣一本ずつ装備している。鎌を装備しろといいたいが、短剣のようだった


 そのワッペンと灰色のスーツをまとう怪人3体。






 その先頭に立つ一体が口を開く。




 蝙蝠顔が口を開けば、二体の怪人は警戒を要しカナキュラスを強く非難した目で睨みつけていた。








「鵺の首領ティターノバ様の片腕、蝙蝠ジャガーだ。我らを探していると聞いてやってきた。カナキュラス、お前の情報は事前に知っている。それで聞くが何の用だ?」




 虎のような牙と腕の文様をもちながらジャガーだった。ちょっと悔しい。




 カナキュラスは僕に背中を向け、軽く蝙蝠ジャガーに会釈をする。日本式挨拶素敵だと思う。でもよくない。それはよくない。






「鵺の片腕、蝙蝠ジャガーだったか、俺様を仲間にしろ。強いぜ俺様は」






 情報を知っているとわかっているのか、カナキュラスは初めから要件を切り出している。思考もなければすぐに行動しちゃうところ、いいと思います。行動は大切、考えるより先に行動主義の僕も納得の潔さ。






 だけど違う。






 蝙蝠ジャガーを見下している。僕はわかる。カナキュラスは強い、蝙蝠ジャガーよりも強い。Aランク怪人のカナキュラスと推定ランクBの蝙蝠ジャガーには差がありすぎる。僕はあちゃーと額を抑えた。






「強い怪人は歓迎だ」






 蝙蝠ジャガーは口でそういいつつも、嫌そうな顔を浮かべている。そんな気がする。








 ただ油断しているのが悪いよね。






 鵺のワッペンを付けている怪人3体、野良怪人カナキュラス一体。




 おっさん僕一人。




 浮いてます。




 僕浮いてる。








 しょうがないし、僕は気配を消して歩み寄る。蝙蝠ジャガーは一瞬僕の動きをとらえたが、すぐ視線をそらした。僕が何をするかわかったのかもしれない。蝙蝠ジャガーはそれでいて僕の動きを無視した。






「強い怪人は歓迎だが、お前が強いとは限らない」






「あぁ?見てわかんねぇのか俺様の強さを」








「見てわかる強さなんて大したことでない。強さとは目に見えない部分も考慮されるべきだ」






 蝙蝠ジャガーはため息一つこぼし、カナキュラスを睨みつける。その眼孔はBランク怪人相応の強さを持つ。Bランク怪人はランクの記号が大したことないだけで本当に強い。一流冒険者やヒーローなどが複数人相手をしても殺し切る。たとえ同じランクのヒーローであっても油断すれば殺されるし、そもそも同じランクの冒険者とかでも複数人で一人の怪人に当たるその基準がBランク。






 戦闘能力だけじゃない。ランクが高い怪人は大体知能も高いからね。








「見てわからねぇなら試してやろう。ちょうど俺様は強さをアピールしたかったところだ。昇進もしてぇお前がティターなんとかの片腕なら、殺して空きを作ってやろうか?」




 考えることは一つ。




 蝙蝠ジャガーはカナキュラスをいらないと思ってる。




 また僕は雑魚だから背後を向けるカナキュラスには反吐が出る。






 僕が何をしても意味がないとわかっているんだろうなぁ。その結果カナキュラスに手を伸ばせば届くほどまで追いついた。カナキュラスは気づいてないのか蝙蝠ジャガーに対し口を開いている。




 ただ蝙蝠ジャガーはようやく指を向けた。






 カナキュラスの背後の僕へだ。






 それをみてゆっくりと振り向きかけたカナキュラス。






 僕は指を鳴らした。






「変身」






 黒い闇が僕の体を包む、絶望のオーラが体をまとい、雷鳴のごとき暗黒の電が黒い闇の中で鳴り響く。






 やがて姿を現すのは一人の少女。








 黒基調のベースのドレス。片膝まで伸びたスカート。そのスカートの中はスパッツが履かれており中身を除くことを防止。また靴は灰色のくすんだブーツ。黒ベースでありながら黄色のボタンが三つ胸元につき、リボンは赤。






 頭部についたくすんだ灰色の小型の王冠。ときおり闇を吹き出す安全設計のもの。触ると手が壊死する程度。あくまで壊死するのは常人だけだ。怪人とか魔法少女とか人外以外はおさわり禁止となっています。








 おっさんから少女に姿を変えた僕。






 その魔力と含んだ闇の強さか、カナキュラスは勢いよく振りかぶった。








 戸惑っている様子のカナキュラスは虫顔で何度も僕を見ている。おっさんしかいないはずが、いるのは少女。しかも怪人の敵対者魔法少女とわかる格好と、噴き出る王冠の闇。








「え?ヒーローじゃなくて、魔法少女?」




 さすがのカナキュラスも口を開けていた。強靭な顎が小さく開く。








 ただ困惑しているところ悪いけど、僕は手の平をむけていた。






 僕の手にある闇の球体が収縮し、カナキュラスへ解き放っていた。ただ避ける様子もない。カナキュラスは困惑しつつも、闇の弾丸を片手でたたき落す。足元のアスファルトがさらなるダメージを受けはれつ。闇がはじけ、その地面が腐食していく。








「わーお」






 ちなみに最高必殺技でした。絶望腐食球。ネーミングセンスはない。諦めてね僕若者の言葉わかんない。センスもわかりません。








「てめぇが魔法少女なら容赦はしねぇ、てめぇを血祭りにあげて、強さを後ろのやつらにも見せてやる」






「ふーん」






 焦らない。




 地を蹴り、少し距離を話す。カナキュラスはそれを許してくれた。子の怪人は会話と行動を両立できない。一つの行動を実践してから次の行動へ移るタイプだ。






 カナキュラスは実際、僕に攻撃するための準備、両肩を筋肉で膨張させている。両足が踏み縛る、アスファルトが腐食し砂利がむき出しになりつつも、そこには負担をかけない力のバランス。




 強い。




 だがもう終わった。








 そのカナキュラスは僕に意識を向けたせいで、背後の気配を見落とした。ぐしゃりと破裂音と突き出た破壊音。






 カナキュラスの胸元から生えた腕。虎の文様をつけた強力な腕が出現し、体液を隙間から垂れ流す。






「あ?」






 カナキュラスは突然の事態に理解がおいつかず、気づいたときには首が待っていた。痛みも感じず、胸元から引き抜かれた蝙蝠ジャガーの手刀がカナキュラスの首をはねたのだ。






 言語を残すことなく、空中にまう頭部を僕は闇の弾丸で迎撃。さすがに抵抗の意志もない首など腐食して地上に落下するころには塵となっていた。








「ひっどいねぇ君」




 僕は嘲笑し、3体の怪人のほうへ向かっていく。僕は魔法少女の中では強くない。一応いうとランクはBぐらいあるんだ。ただBランクの中では下位にあたるだけだ。一つのランクに上位、中位、下位という枠付けがあり、僕は其の中で下位。






 蝙蝠ジャガーはBランク上位だろうね。






 3体の怪人は僕が近寄ってもひるむ様子を一瞬見せた。実力は蝙蝠ジャガー以下なのに大変だなと思った。






 僕と蝙蝠ジャガーが見上げるほどの至近距離まで来た。




 すぐさま蝙蝠ジャガーは膝まづく。また二体の怪人も膝まづいた。僕よりも強いくせに、僕をみて震える3体の怪人。その姿は恐れや敬意恐怖すら感じるほどの相手みたいだ。




 僕大したことないよ。






「鵺の首領、ティターノバ様の子、蝙蝠ジャガーと申します。偉大なる御身、大首領様をお迎えに上がりました」

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