第202話 妄想?それとも現実?①
「えへへ〜。ゆ〜きおに〜ちゃ〜ん。」
廊下に出た瞬間、甘い甘い声を出しながら腕に抱きついてくる渚ちゃん。……さすがにこれを廊下でやったらマズくない⁉︎いや、別に教室だったら良いとか、家の中だったら良いっていうわけじゃないんだよ⁉︎……だって俺、一応葵っていう天使みたいな彼女がいるんだし。……たとえ、彼氏と彼女っぽいことができていないとしても。
ま、まあ今はその話は置いておくとして、さすがに学校で、しかも大勢の生徒、先生も通る廊下で、こんなことをやるのは、ただの異性の友達とやるのはマズイよ‼︎……たぶん。
心の中でそう、渚ちゃんに抗議をしていると、いつのまにか職員室の前についていた。……それに、さっきまで腕にあった、温かい感触がない。
あれ?おかしいな。
そう思って横を見ると、渚ちゃんが、俺から少し離れた位置に立っていた。
え?じゃあ何?あの、渚ちゃんが抱きついてきたっていうのは俺の妄想だったの?それとも俺の勘違い?……もしそうだったとしたら俺、かなりやばいやつじゃない⁉︎一人で勝手に妄想して、勝手に怒って。……はぁ。俺、どうしちゃったんだろう?
そんなことを一人で考えていると、渚ちゃんがきょとんとした顔をして、
「どうしちゃったの?ゆうきお兄ちゃん。ほら、早く先生のところいこ?」
そう言ってきた。
……渚ちゃんがこんな感じってことはきっとさっきのは俺の妄想だったのかな?
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