第12話 母と兄のソウルメイト
「なる程……。それじゃあLA7-93ちゃんは『ソード&マジック』の世界で錬金術を扱う冒険者になりたいのね」
「は……はい……」
僕が天国の部屋へと招き入れた2人の魂。
1人はPINK-87さんという。
PINK-87さんは先日の『ソード&マジック』の世界の6回目の転生において僕達の母親だった魂だ。
綿菓子のように柔らかでふんわりとしたピンク色の長髪が印象的で少し天然っぽさがあったもののとても可愛らしい母さんだった。
既にまた僕達の母親にでもなった気分でいるのか僕達への呼び方が『ちゃん』付けに変わってしまっている。
まだPINK-87さん達とソウルメイトを組むって決めたわけじゃないんだけどな。
「錬金術か……。錬金術は大抵の世界で上級者向けに扱われている魔法だし『ソード&マジック』の世界に慣れるまでは別の魔法にした方がいいんじゃないか。ちょうど【水術師】の転生スキルも取得しているようだし」
もう1人はRE5-87君という名の魂。
RE5-87君は先日の『ソード&マジック』の世界の6回目の転生において僕達の兄さんだった魂だ。
【地獄の
その口振りからも分かる通りRE5-87君は強気でとても威勢の良い性格をしている。
冒険者として家を出るまでは兄弟姉妹であった僕とアイシアを学校の苛めっ子達から守ってくれたりと兄としてとても心強い存在だった。
どうやらPINK-87さんとRE5-87君はこれまでもう大分長い間親子関係のソウルメイトを組んで世界に転生を行ってきたようだ。
霊界に帰って来た今の状態でも2人は親子として転生していた時以上に慣れ親しんでいるように感じる。
「あの……色々とアドバイスをしてくれてるところ悪いんですけど僕達はまだお2人とソウルメイト組んで転生すると決めたわけじゃあ……」
「あら~、どうして~。確かにさっきの転生では不出来な母親だったかもしれないけどこれでもこれまでの私の母親としての実績はかなりのものなのよ~。母親関連の転生スキルだって一杯取得してるんだから~」
「は……母親関連の転生スキル?」
「そうよ~。ほら~、ちょっと私の魂のステータスを見てみて~」
・ソウルナンバー・PINK-87の現在のステータス
魂Lv124
主な取得済み転生スキル
【母体Lv7】
スキルのLvに応じて子供を妊娠、主産する能力が上昇する。
またスキルのLvに応じて出産適齢期の期間が長くなる。
【母性Lv8】
スキルのLvに応じてその世界で求められる母親としての能力が上昇する。
【遺伝(付与)Lv3】
自身の直系の子孫に対し自身の能力や特徴を遺伝させる。
スキルのLvに応じ遺伝する度合いが上昇、より先の世代の子孫にまで遺伝する
ようになる。
【遺伝(付与・配偶者)Lv7】
自身の直系の子孫に対し自身の配偶者の能力や特徴を遺伝させる。
スキルのLvに応じ遺伝する度合いが上昇、より先の世代の子孫にまで遺伝する
ようになる。
【母乳Lv8】
スキルのLvにより母乳の栄養価、分泌量が上昇する。
【母乳(メロン味)Lv5】
授乳させる乳児が望む場合のみメロン味の母乳が分泌するようになる。
スキルLvに応じて乳児の好みの味へとより変化する。
【料理Lv5】
スキルのLvに応じて料理の腕前が上昇し、料理に含まれるあらゆる栄養価が上
昇する
【料理(付与・魔力)Lv3】
スキルのLvに応じて自身の料理に食した者の魔力を上昇させる効果が付与され
る。
その他いろいろ……。
「お……おお……。これは確かに凄いね……」
誇らしげに見せて貰ったPINK-87さんの転生スキルの欄には母親としての能力を上昇させる効果を持ったものがズラリと並んでいた。
出産に関わるものから育児や家事、転生スキルだけみればまさに完璧な母親であるように思える。
「ねぇ~、凄いでしょ~。これを見ればLA7-93ちゃんもまた私の子供として転生したくなったはずよね~。この前の転生の時は私もその時の旦那も冒険者としての適性をほとんど持ってなかったからあなたに必要な能力を授けてあげられなかったけど、次はLA7-93ちゃんの父親として相応しい相手をちゃんと見つけて、更に私自身もしっかり修行を積んであなたを立派な冒険者になれるだけの資質を持った子供に産んであげるから~」
「は……はぁ……。でもそのPINK-87さんの取得している母親関連の転生スキルの効果はそれ程大きなものなんですか。いくらPINK-87さんの母親としての能力が完璧でも生まれて来る僕自身の魂が今のLvのままじゃあ……」
「そんなことないわよ~っ!。確かにLA7-93ちゃん自身の魂のステータスが一番大事なのは事実だけど、両親の子育てや能力の遺伝もかなり重要なものになってくるのよ~。特に遺伝に関してはソウルメイト間のみで家系図をループさせて延々と能力を継承させているグループもあるぐらいよ~」
「家系図をループ……。それって3世代分の家系図があるとしたらその人の両親だった魂がその人の子供に転生して、またその両親がその子供に転生してを繰り返してってこと?」
「そうよ~。寿命の関係もあるし継続してループさせようと思ったらもっと大勢でソウルメイトを組んで転生しないといけないけどね~」
「なる程……」
正直PINK-87さんの提案には乗り気でなかったけど今の話を聞いて180℃考えが変わった。
今まで僕は他の魂とソウルメイトを組んで転生した経験はなく、それにより得られるメリットもその者達と近しい関係で近しい場所に転生できる程度のものと思っていた。
だけどそうか。
PINK-87さんが今話してくれたグループのように自分達のソウルメイト間のみで家系図をループさせることができたなら世代を超えるごとに自分達の能力をより望む形に効率よく高めていくこともできるはずだ。
PINK-87さんの話にもあったように転生先の器の寿命、更に1回の転生ごとの間隔も考えると数百人、あるいは数千人規模のソウルメイトを組む必要があるだろうけどより高みを目指すならやはり僕もアイシアだけでなくもっと多くの魂達と交流を深めていくべきなのだろうか。
ならここは少しでもソウルメイトに関しての理解を深める為にPINK-87さんと提案に乗ってみるべきなのかもしれない。
「分かりました。今の話を聞いて僕達も少しソウルメイトに関して学んだ方が良いと思ったので取り敢えずもう1度だけPINK-87さんとソウルメイトを組んで転生してみたいと思います」
「やった~っ♪」
「アイシアも別に構わないよね」
「はい。私はマスターの指示に従うだけなのでどうかお気になさらず」
「それじゃあ早速次の転生で私の旦那、つまりLA7-93ちゃん達の父親になってくれる魂を募集しましょう。LA7-93ちゃんが立派な冒険者になる為には私だけでなく当然父親の方も大事になってくるわ~。1人1人面接を行ってその魂を見極めるからLA7-93ちゃんも協力してね~」
「め……面接っ!」
PINK-87さん達とソウルメイトを組むことを了承したのはいいのだが、なんと2人に加えて僕達の父親のソウルメイトの魂の面接まで行うことになった。
確かに遺伝によって自分達の能力を高めるつもりなら父親の方の能力も重要になってくるのだろうけど募集した魂達を面接するなんてなんだか緊張するな。
っというかまだ魂Lvが1のまま僕の父親に応募してきてくれる魂などいるのだろうか。
僕は緊張と不安で胸を一杯にして募集に応募してくれる魂が来るのを待っていた。
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