第106話 産休ならぬ子作り休?

謁見の間には、俺とキャサリンしか居ない。

そんな寂しい場所を二人で退室する。

扉は開いており、衛兵が扉の両脇に控えている。

扉を出ると、その衛兵から声を掛けられた。


「陛下から、お二人がお出になられたら、応接室へとお通しするように仰せつかっております。こちらへどうぞ。」


否応無しに連れて行かれる俺。

そして応接室へと入ると、メイドさんにお茶を出される。

大分落ち着いたとはいえ、いまだに何が何やら訳の分からない俺は、お茶を「ズズズ~ッ」と啜る。いや、意味は無い。

隣でキャサリンが「もう少しお淑やかにお飲みなさいな」と言っているが、聞こえないふりをする。


そして待つ事1時間。

何故かアロハ~な恰好をした国王と王妃が、メイドに荷物を持たせて現れる。

その姿に唖然とする俺と、何やら楽しそうな表情のキャサリン。


「待たせたな。では行くか。」


そう国王が言うが、意味が分らん。


「いやいや、行くって何処へですか?」


俺は意を決して聞いてみた。

そして返って来る、思った通りの答え。


「ん?オルトラークに決まっておるでは無いか。」


バカかこの国王。

しかし行く気満々な国王も王妃もノリノリの格好だ。

ちなみに今の季節は春の半ばだ。アロハ~を着る時期ではない。


「仕事の方は問題無いのかしらん?」


そう、仕事しなきゃね!


「そっちは問題は無い。逆に、落ち着いて子作りしてこいと宰相に言われたくらいだ。」


何て事を言ってくれるんだ、宰相さん!


「あらまあ。それなら仕方ないわねん。アンタたちはどうやって行くの?何人?」


「無論、馬車で行くつもりだが、護衛の騎士を除けば、馬車に乗るのは全部で5人だな。」


俺はその瞬間、メチャクチャ嫌な予感がした。


「あら、それじゃ、タクヤ君の馬車に乗って行く?」


言っちゃったよ・・・。


「いや、各々の馬車でいんじゃないかな?」


俺は慌てて軌道修正に入る。


「それはそうだけど、乗り心地が全然違うじゃない。」


空気読めよこのバカ漢女おねえが!

その言葉に国王も喰い付いて来る。


「そんなに違うのか?」


「ええ。全然違うわよん?そもそも、アンタの馬車の中にソファーは無いでしょ?」


「当たり前だろ。」


「タクヤ君の馬車は、ソファーなのよねん。」


あ・・・終わった。

結局、軌道修正出来ないまま、国王達は城の馬車で宿へと向かう事になり、俺とキャサリンは先に宿へと戻り準備を整える事に。

宿に戻ると、丁度昼時で7人は宿で昼食を摂っていた。

話しを聞くと、流石に3日も街に出ると飽きたらしい。

俺は、事の次第を7人に説明する。


「え~!絶対嫌なんだけど!」とは、裕美の言葉である。

シャファとリズは置いておいて、それ以外の春香、裕美、イシュカ、ロラさんはあからさまに嫌な顔をする。シーラちゃんは、良く分かっていないのか首をコテンッと傾げただけだ。


「と、言われても、既に決定事項だからな。どうしようもない。」


そう言った俺に、春香が異を唱える。


「でも、ゆっくりと出来ないよ!それなら、もう一台の馬車を陛下に使って貰えばいんじゃない?」


あ・・・その手があったか。

俺はポンっと手を叩く。

しかし、それは却下される。


「あら、それはダメよ。だって、王都に戻って来ないといけないもの。となると、御車が足りないわ。」


そうだった。


「となると、我慢して貰うしか無いな。」


「「「「え~っ」」」」


結局、何とか納得して貰い、宿を引き払った俺は宿の裏に馬車を出す。

そして待つ事数分で、国王の乗る馬車が宿へと入って来る。


「待たせたか。」


そう言って下りて来る国王と王妃の格好に、ドン引きする女子達。

そりゃそうだ。さっきも言ったが、今は春の半ば。大分暖かくなってきたとはいえ、少し肌寒いこの季節にアロハは無い。

つか、そんな服を何処で手に入れたのやら。

かくして、国王含む5人は俺達の馬車に乗り込み、国王の馬車は御者のみに。

周りを騎士20名に囲まれた俺達は、昼過ぎに王都を出発した。

それからの旅は、我慢の連続だった。

誰が我慢したかと言うと、主に女子達だが。

流石にいつもの様にキャッキャウフフと出来る筈も無く、馬車内はお通夜の如く静まり返る。

食事時もストレージの存在を隠さなければならず、敢えてマジックバックを使い隠蔽しながらとなった為、シャファとリズとシーラちゃんを除く4名のストレスがMAXとなる。

何とか宥めてオルトラークに戻った。


オルトラークに戻ると、国王夫妻はそのまま海ダンジョンへと入る。

無論、護衛の騎士達やメイド達も共にダンジョンへと入った。

ただ、入った場所は六階層では無く、十六階層だ。

何故なら、


「六階層?ダメに決まってます!国王なのですから、一般の者と同じ場所での宿泊は危険です!」


護衛の騎士にそう言われ、本来俺達しか入る事の出来ない十六階層へと渋々案内する事に。

管理人のララに事情を説明し、費用を預ける。

確かに、ここなら入って来るのは俺達だけだし、護衛としては安心なんだろうけどな。

この後、国王は10日ほど滞在し、子宝精力剤を使って頑張るのだそうだ。

そんな生々しい情報は要らんし。


ついでとばかりに、ストレスMAXな四人が俺をリゾートのコテージへと拉致って行く。初めてが、同郷の春香だったのが幸いだったが、四人同時と言うのはちょっと・・・。

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