第29話 イーリス・ブート・キャンプ①

ガチャを引いた俺達は、リビングを出て砦前へとやって来た。

これから狩に出かけるのだが、その前に出た武器を使ってみようと言う訳だ。

何故なら、清水は近接から遠距離に変わり、俺は片手剣から双剣に変わったからだ。

しかし、ここで問題が。

清水はフェイロの竜弓を引くが、中々引けない。俺も双剣を持つが、何か動きがしっくり来ない。

すると、たまたま伊川と共に外の空気を吸いに来たイーリスが俺達二人を見て寄って来た。


「東條殿、清水殿そうではないぞ!弓はもっと腰を入れて一気に引き絞るのだ!双剣は、攻防一体の剣!その様な構えではダメだ!」


来るなりダメ出しされる。


「腰を入れて一気に引き絞る?」

「攻防一体の剣?」


俺も清水も首を傾げた。


「左様。もし良ければ、この身が教えてしんぜよう。」


と、言う事でイーリスによる武器講座が始まった。

ついでに、龍平、成川、エヴァも一緒だ。

先ずは、俺、成川、エヴァに対し、剣の持ち方や構え方、振り方の説明が始まる。


「片手剣も双剣も、剣の柄のここら辺を握る。成川殿、もう少し上だ。そうそこだ。で、構えはこう!この構えから、振り上げからの斬り下ろし。振り下ろしからの斬り上げ。横凪、袈裟斬り。これが基本だ。双剣はこれを両腕で行う。さあ、構えからの斬り下ろしをやってみろ。100回素振りをしたら休んで良い。」


俺達3人は、ひたすら構え、振り上げ、斬り下ろしを始める。


「さて、清水殿。弓を貸してみろ。」


清水はイーリスに弓を渡す。


「いい弓だ。この弓に負けぬ様にせねばな。先ず、弓の持ち方はこうだ。弦を引く時はこう引く。おお!弦を引けば矢が現れるのか!で、狙いを定めるのは、弦を引き構えながら即定める。正面の比較的近い場所を狙うには、矢を正面に向ければ良い。しかし、遠方、特に戦さ場での弓隊の一斉射撃などの場合は、こう言う構えで斜めに向ける。すると矢は弧を描き遠くへと飛ばす事が出来る。分かったか?よし、ならば先ずは構えからの弦引きを100回だ。弦を引いたら弓を下げ、再度構えからの弦引きと言う具合だ。よし、やってみろ。」


イーリスはそう言うと、弓を清水へと返す。

次にイーリスは、龍平の方を向く。


「猿渡殿は、体術か。よし、先ずは基本の型からだな。構えはこうだ。そうそう、上手いではないか。この構えからの右正拳突き。素早く戻しながらの左正拳突き。先ずこれを100回だ。それが終わったら次を教えてやる。」


その後、剣組は斬り上げ、横凪、袈裟斬りを100回ずつ。

清水は、休憩後も構えからの弦引きを。

龍平は、構えからのコンボ、蹴り技をイーリスに叩き込まれる。

一日を掛けて型を教わった俺達は、腕はパンパン、足はフラフラで夕方になる頃には地面に突っ伏していた。


「一日、よく頑張った。明日も朝から訓練をするぞ。やってわかったが、貴殿らは弱い。弱いと言うより、基本がなっていない。こんなので、魔物と良く対峙出来てきたな。当分は、基礎訓練をメインに鍛え上げるぞ!魔物狩はそれからだ!リズ殿。申し訳ないが、その間の狩猟は貴殿にお任せしても宜しいか?」


「はい。拓哉様がお強くなられる事に否はありません。その間の狩猟はお任せ下さい。」


と言う事で、俺達のイーリス・ブート・キャンプが開幕した。



翌日

朝5時に起き、要塞内の城壁沿いのランニングから始まる。

無論、フル装備の状態で5周だ。

しかも、身体強化は不使用を申し付けられた。なので、自前の体力でだ。

ランニングが終わると、ひとっ風呂浴びて朝食を食べる。

ただ、何も喉を通らない。

しかし、何か腹に入れないと昼まで体力が持たないのも事実だ。

俺達は、味噌汁に米を投入し無理矢理に口に流し込む。伊川がアプルルを食べやすく切ってくれているので、それを齧る。疲れた体にアプルルの甘さが染み渡り、美味しかった。


朝食を食べ終わると、少しの食休憩を挟み午前中は全員で筋トレに励む。

腕立て、腹筋、スクワット。

各50回をワンセットで5回だ。

この時点で腕も足もガクガクだ。


「情けない。情けなさ過ぎるぞ!この身が騎士団に入る際は、100回ワンセットで5回はやっていたぞ!半分しかやっていないのだ、そんなんで下手ばってどうする!さあ、休憩は終わりだ!次は各自型と素振りの訓練だ!剣組は基本の構えからの斬り下ろし、斬り上げ、横凪、袈裟斬り、水平構えからの突きを各100回!清水殿は、構えからの弦引きを100回ワンセットで5回!猿渡殿は、構えからの正拳突き、突きのコンボ、蹴り技、蹴り技のコンボ、突きと蹴りのコンボを各100回!初め!」


これが中々辛い。

先ず、昨日の筋肉痛がある為腕が上がらない。上がらないからイーリスに木の枝で叩かれる。つか、そんな枝どっから持って来たんだよ!

少しでも型が崩れると、罵声を浴びせられ枝で叩かれる。

水平構えからの突きなんて最悪だ。

腕がプルプル震える中、剣を顎の高さで水平に構え、そのまま前へ突き出す。

しかし、既に体力も筋力も限界になっての水平突きだ。まともに突ける筈がない。男の俺がそうなんだから、女子の成川とエヴァはもっとキツいだろう。

清水も、延々と構えからの弦引きをやっていて、最後の方は弦さえ引けないくらい腕がプルっていた。

龍平も一緒だな。

最後の突きと蹴りのコンボになると、動きがグチャグチャになっててイーリスに枝で叩かれてた。


ここまでを午前中に終わらせたら、昼食を食べて一時間の休憩だ。

もう、動けん。

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