第29話 ついていきたい
研究室でも一通り話し終え、外に出ると。
「「あ……」」
ユリとサシャが扉の前にいた。
どうやら聞き耳を立てていたらしい。
これは……面倒なことになりそうだ。
それはエレア先生も思ったようで、首を横に振っていた。
「私(僕)もついていきます(たい)!!」
とりあえず、先生の方を見た。
無意味だと分かってはいるが、助けを乞うてみる。
「人数は多いに越したことはないからねぇ……」
エレア先生……あなたは本当にそれでよかったのか。
だが、問題ないかもしれない。
ユリには俺の魔力を分け与えているし、サシャは戦略面に於いて特化している。少しでも攻略難易度を下げるにはこれくらい人がいた方が逆に助かるかもしれない。
「よし、それじゃあ……よろしく頼む」
「やったー!」
「わーいです!」
その後、彼女たちに聞いてみたのだが、どうやら俺のことをかなり心配していたらしい。それもそうだ。何度も担任に呼び出されていたら、誰だって心配するだろう。
そして、今回の件と来た。
普通は怯えると思うのだが、彼女たちは「友達がしんぱいだから」と言う理由でついてきてくれるらしい。
正直、それを聞いた時は嬉しかった。
前世では、俺はさまざまな相手と敵対していたからだ。
信用や憧れを抱いてくれる人はいても、友人はいなかった。
「絶対に無理はするな」
それだけ、伝えて俺たちは教室に戻った。
◆
自室にて、俺はぼうっと天井を見上げていた。
明日、もしかすると一気に〈死者蘇生〉に関する研究が一気に進むかもしれないからだ。
……進むどころか、完成するかもしれない。
しかしだ。
どうしてアウトローは、俺がダンジョン内部に侵入しても動かなかった。分からない。
だが、彼女は間違いなく俺を狙っている。
俺を憎んでいる。
なにか……なにか絶対に仕掛けてくるはずだ。
それがなにかは分からないが。
「いい方向に転べばいいが」
ただただそれだけが不安だった。
こうなるなら、前世で確実に仕留めておけばよかった。
そっちの方が、彼女も楽になれただろうに。
……なんでアウトローを心配しているんだ。
まったく、俺は優しすぎるな。
賢者というだけある。
とにかく、明日で終止符を打とう。
「彼女の憎しみを、俺が終わらせる」
椅子の背もたれに体重を預け、ふうと息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。