第7話 倉庫を改装してみた
この学園は三年制で、つまりは最下生が俺を含めて三人いることになる。
とりあえず、〈地図作成〉で来たはいいものの……。
倉庫はみすぼらしいもので、今にも崩れてしまいそうだ。
しかも中は部屋の隔たりなんてなく、ベッドと机が三ずつ並んでいるだけ。
「ど、どうも……」
「はじめまして……」
先輩たちだろうが、等しく気力がない。
学園内で相当な扱いをされてきたのだろう。
悪い意味で、歴戦の猛者たちだ。
俺のベッドの上には、この学園の制服が置かれていた。
制服は意外にちゃんとしている。
赤色を基調とした、やけに目立つ制服だ。
これってもしかして、最下生と一般生徒、特待生で分けられていたりするのだろうか。
「なぁ、プライバシーとかもろもろどうなんだ。大変だろう」
「ええ、そうですね……もう、ほんと頑張って入学したのに、こんな生活なんて……」
一人の生徒が答える。
ふむ。それなら俺の魔法でどうにかするか。
「俺に考えがある。この倉庫内をいじってもいいか?」
「ああ。別にいいけれど……」
「ぼくも構わないが……」
許可は貰えた。
学園には……まあいいだろう。最下生のすることなど気にも留めないはずだ。
「〈
唱えると、各々の場所に壁が構築され、隔たりが無事できた。
そして、ベッドや机を最高品質のものにし、本棚やその他生活必需品も取り揃えてみた。
煌びやかになった部屋を呆然と眺める先輩たち。
「おお! どうなってるんだこれ!?」
「こんなにも精度の高い魔法って… …!? お前、本当に最下生なのか!?」
「ああ。これでも最下生らしい」
少し学園への皮肉も交えて言った。
「いや、それよりも! 本当にありがとう!!」
「ぼくの方からも感謝するよ! ありがとう!」
「いや、いいんだ。気にしないでくれ」
さてと、それじゃあ俺は横にでもなるか。
ずっと野宿だったのだ。久しぶりにベッドで眠りたい。
……そういえば、この魔法を扱えるならベッドを野宿中に生み出してもよかったかもしれないな。
いや、ないか。さすがに外でベッドで寝ているのは奇人すぎる。
そして、俺は眠りについた。
◆
「おはようございます!」
「おはよう!」
……ふむ。
どう言う状況かは分からないが、目の前にユリとサシャの顔がある。
改めてみると、ユリの顔は整っているな。
目も澄んだ美しい青だし、鼻梁も高い。
サシャもサシャで、幼い顔のパーツをしているが、愛らしい。
紅色の瞳からは、強い意志が感じ取れる。
「で、どうしてこんなところに?」
「合格したので、報告しに来たのです!」
「そうそう! 合格したんだ!」
おお。それはよかった。
知り合いがクラスにいるのはありがたいことだからな。
……やはり制服の色が違うな。
ユリが黄色で、サシャが白色の制服を着ている。
「そして私! 特待生になっちゃったのです!」
胸を張って誇らしげに言うユリ。
そうか。無事俺の魔力を有効活用してくれたらしい。
「あなたの力がなければ、特待生どころか入学すらできませんでした! 本当にありがとうございます!」
「いや、いいんだよ」
この様子だと、特待生が黄色、一般が白色。
そして最下生が赤色らしい。
「あ! これからお母様に連絡しなくちゃいけないので、また明日会いましょう!」
「それじょあ僕も。また明日ね!」
「ああ。それじゃあな」
言って、彼女たちは扉から出ていく。
時計を見てみると、午後七時だった。
もう一眠りして、明日にでも備えるか。
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