第43話 欲の魔女①
ライネスと話したその日の夜。ルルルンは一人身支度をして何処かに出掛けようとしていた。
今まであえて触れなかった存在との接触。その行動は、誰にも悟られることなく行わなわなければいけない、故に行動するなら、目視されにくい夜間というわけだ。
「よし、行くか」
そう呟くと。周囲をよく確認してから魔法を詠唱する。
「
ルルルンは浮遊魔法で浮かび上がる。ある程度の高さまで浮かぶと、ルルルンはマギリア全体の規模で魔力探知を実行する。
「
探すのは魔力の
「見つけた」
ルルルンはその痕跡から更に探知の幅を広げる。シアが誘拐された時に使おうとした、追跡魔法を唱える。
「
ルルルンの脳内で、痕跡から糸を引くように追跡が始まる。
マギリアの外、痕跡は北の山奥へと向かうが、途中何かに阻まれるように消失した。
「結界か」
高度な結界が山奥に張られている事を確認すると、ルルルンはその方角を見据える。
「
それは高速で飛行する魔法なのだが、ルルルンの唱えたそれは高速と呼ぶには、あまりにも早すぎるモノだった。
凄まじい速度で向うのは、欲の魔女の領域。追跡魔法が途絶えたところまで飛行する。
今回の目的は『魔女と対話をする為』いざ本当に討伐が始まってからでは遅いと判断したからだ。始まる前に、魔女の存在とその目的を確かめておかなければいけない。ルルルンには、魔女に対していまだに拭えない可能性を感じていた。
【魔女は本当に悪なのか?】
ライネスの話を聞く限り、火の魔女は間違いなく悪意を持った魔女だろう。無差別な破壊行為、そんなことは到底許されることではない。しかし、全員が同じ悪なのか?引っかかっている点はいくつかある。
何故4人は結託していないのか、何故それぞれ4つの地域で領域をつくり積極的に世にでてこないのか?聖帝騎士団の抑止力が効いているのか、それともなにか別の目的があるのか……。
それを自分で確かめなければ納得できない。余計なお世話だろう、だが同じ魔法使いとして、どうしても知りたいのだ、魔女たちが魔法を使う目的と真意を。
そして最も懸念している可能性……自分と同じ【異世界からの転生者】なのかを。
「おっと」
結界の目前、ルルルンは空中で急停止する。
そこには確かに光の壁のようなものが存在していた。
「結界魔法か、なるほど、やっぱり超界以上の魔法は使えるわけね」
この規模の結界魔法となると、ライネス達が認識している界位より上位、限りなく絶界に近い魔法である。
「先に来ておいてよかった」
何も知らないまま、討伐が始まれば、ライネス達に大事があったかもしれない、魔女が超界以上の魔法が使える、それはかなり重要な情報だ。
だが、今回の目的は討伐ではなく、対話、ライネス達に何かある訳でもなく、魔女と交戦するつもりもない。
「目的は話合いだ」
ルルルンは結界を無視してその中へ侵入する。
結界自体は殺傷能力がある類の結界ではないが、生物の侵入を拒む高度な結界である、ルルルンは絶界までの魔法を無効にする術式を常に発動しているため、高度な結界とはいえ難なく入る事ができる。
「魔法無効(アンチマジック)は有効、さて、魔女はどこかな?」
ルルルンの目に魔法刻印が浮かび上がる。千里眼の魔法は、はるか彼方の指定対象を発見する事が出来る魔法、指定対象は「上位の魔法使い」
「
ひとしきり周りを見渡すと、それらしき対象が一つ。それもかなり上位の魔法使い。十中八九、欲の魔女だと思われる。
「まあ、これが魔女じゃなかったらそれはそれで興味あるけど、とりあえず行くか」
あたりを付けたルルルンは、対象に向かい転移を試みる。
「転移(ルーブ)」
一瞬で転移が成功する、そこには一人の女性、おそらくは……
「こんな時間に来客なんて、珍しい、さっき結界を抜けてきたのはあなた?」
「あんた、欲の魔女か?」
ルルルンは初対面の女性に対し不躾な態度で言い放つ。
「人の名前を知りたいなら、自分から名乗る、そう教わらなかった?」
そういうと女性は振り返り、ルルルンと向かい合った。
「え?」
妖艶な雰囲気、整いすぎた顔立ち、サラリと
「なんで裸?」
絶世の美女は全裸であった。
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