リリアの病
リリアの部屋の前に行くもメイドのポルテは居ないのかノックしても応答がない。
「リリア 大丈夫ですか。ロザリーヌです。」
「ロザリーヌ……ひとりなの?」
ロザリーヌはダミアンを見る、彼は静かに頷いた。
「……はい」
「入って」
「何かあったらすぐ呼んでください。ここに居ます」
とダミアンはドアの外に待機する。
ベッドで体を起こしたリリアは顔色が悪い。
「リリア……大丈夫?お医者様には?ポルテは?」
「大丈夫よ。眠れば良くなるわ」
「でも、診てもらったほうが……顔色が」
「いいのよ。私なんて……もうどうなってもいいのよ」
投げやりに言ったリリアの姿は、儚げで悲しげでロザリーヌは心配でたまらない。彼女は今もロザリーヌの目には美しく気高いプリンセスの姿に映る。
「どうして……そんな風に」
「ふっ あなたはなぜ急に態度を変えたの?」
「…………。」
また同じ質問である。いっそのこと異世界から来ましたと胸を張って言いたくなるがそこはぐっと堪える。
「私は……リリアに嫉妬していたんだと思う。ごめんなさい」
「……あなた なんにも知らないのね。性悪かと思ったけど、ただの単純な王女様……」
「え?なんのこと?」
「ごめんなさい、なんのこと……っか。私は……私はずっと尽くしてきたのに……どうして? ねえ どうしてあなたが態度変えただけでこうなるの……私は 誰にも愛されてない。誰も私を必要としない。誰も……味方じゃない」
呟くように言葉を並べ泣き出すリリアであった。
それを見たロザリーヌの目から涙が溢れた。
(まるで…元の私……さやか。誰にも愛されない…お飾りのような私に味方は誰一人いない……寂しい……悲しい……消えてしまいたい)
「なに、どうしてあなたが泣くの……」
「寂しい…辛い…でもお願い、リリアは消えていなくならないで」
「何言ってるの……そんな事を言いに来たの?」
「…………」
「もう、疲れたから出て」
「あ、はい。ゆっくり休んで リリア」
半べそで部屋から出てきたロザリーヌをみたダミアン。
そっとロザリーヌの背に手を当てた。
広間に戻るにも泣きべそを連れては戻れない。どうしようかと少し後ろを歩くダミアンに泣きべそが振り向いて言う。
「ダミアン……騎士、少し今散歩したら怒られますかね……」
「いえ。庭を回ってから戻りましょうか」
きっと怒られるであろう。大事な舞踏会から姿を消した王女を探し、血眼でキャシーとメリア騎士が宮殿を駆けずり回っていた。
そんなこととは知らず、ロザリーヌは庭に咲く薔薇の前に立ち止まる。
「白い薔薇……」
「ロザリーヌ様のお母様、亡きロレーヌ王妃がお好きでしたね。赤い薔薇は血の色、白い薔薇は純潔……キリストの最期と聖母マリアのお話です。ロレーヌ様は白い薔薇を好み、争いを好まないお人でした。」
「お母様……」
「大丈夫ですか……ロザリーヌ様」
「……はい。ダミアン騎士、あの、リリアを愛してますか?」
「はい?」
「あ、ごめんなさい。変なことを聞きました」
「いえ。愛したことはありません。王妃になる方です。ただ……近頃人が変わったように振る舞われていますから。ロザリーヌ様もある意味そうですが。」
「心配ですよね。リリアの体調も心も……」
「はい。またロザリーヌ様に危険が及ばないか心配です。」
「え?」
「私はあなたが傷ついたり危険にさらされるのが、恐ろしくて……騎士としてです。いえ あ 何言ってんだ……」
とダミアンは尻窄みに小さな声で言葉を濁した。
「あ、そろそろ戻らないと」
歩き出した二人の前に勢いよくキャシーとメリア騎士が走ってきた。キャシーはスカートの裾を持ち上げたまま息切れしている。
「ロ……ハアハアハア ロザリーヌ様!!探しましたよっ。そろそろフィリップ様が探し出すかとっ」
「あ、ごめんなさいキャシー、メリ」
「こらっダミアン またロザリーヌ様にちょっかいか!」
「……人聞きが悪い」
ダミアンは呟きバツが悪そうにそっぽを向く。
「どちらに行かれてたのですか?」
「あ、リリアが気になって……体調が悪いみたい」
「そうでしたか」
「あ!ロザリーヌ様 結局そのドレス、どなたのでした?」
「……それは、きっと私の一番好きな……あ 好きな色を……」
「え?はあ……あっ急ぎましょうっ」
広間に戻ったロザリーヌに駆け寄ったフィリップは場もわきまえず抱きしめる。
「ロザリー 心配したじゃないか……また何かトラブルか?」
「いえ お兄様……あ、あの皆さんが……」
「あ」
周りで抱き合う二人を見た来賓達は目を見開いた。
二人の仲睦まじさとリリア不在の謎、シモン王子の存在、ロザリーヌに関わる噂話がこれからあとを絶たない程に語られそうである。
◇◇◇
リリアの部屋
涙を拭ったリリアはまた横になり呟く。
「はあ、十分時間は稼げたわよね」
その頃無人となっていたロザリーヌの部屋から任務を終えたポルテはそっと出たのだった。
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