(二)-4

 渋谷で満員電車を乗り継いで、品川で下車した。そして職場のビルへ入っていった。

 オフィスに入ると、早速上司の瀬久原せくはら丈司じょうじが近づいてきた。

「あれ、川井ちゃん、今日はなんかいつもよりセクシーじゃない?」

 向けてきたニヤケ顔がキモイ。

「気のせいです!」

 ちょっとイラつきながらすかさず返事をする。せっかく気合いを入れてきたのに、いやになっちゃう。

 このセクハラ上司のこの手の言動はいつも通りだ。女性の多い職場で自分のリーダーシップや、チームワークを発揮させるために人間関係を円滑にしようとしている点については気を遣っているのかもしれない。その点はいいけど、この人の場合、セリフのどこかにイヤらしさが入るのだ。そのため女子社員たちからは嫌われていた。


(続く)

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