254話 決戦、第六天魔王
「対空砲射撃中止! 後ろに撃てば流れ弾が味方に当たる!」
「了解しました!」
「副砲は地上に向かって撃て! 少しでも地上部隊を援護するんだ!」
地上部隊では銃を持った新勢力に対して中戦車・重戦車を弾受けとして前面に押し出し、少しずつ前進を続けている。
「これより魔王討伐作戦を結構する! 必ず魔王を討ち取るぞ!」
「如何様に戦う、人間の王!」
髑髏武者が刀を抜き戦艦を向かい打つ構えを取った。
「ナポレオン!」
『了解。列車砲、撃て!』
突貫する戦艦を追い越すように列車砲から放たれた80cmの砲弾が髑髏武者に直撃する。的が大きくて助かった。
「グァァ!」
魔力の塊のくせに叫び声を上げながら髑髏武者は仰け反る。着弾した鎧の胸元は大きく剥げ落ち、中身の肋骨やらがむき出しになった。
「まだだ! ルーデル!」
『うぉぉぉぉ!!!』
次に遥か上空から特攻兵器が降ってくる。今回は髑髏武者も迎撃体制を取り特攻兵器を刀で受け止めた。
しかしそんなことに意味はない。1トン爆弾では50mが爆風殺傷範囲、500mが破片殺傷範囲である。それの15倍なのだから、余裕で髑髏武者を丸ごと飲み込み、中にいる織田信長も爆発に巻き込まれたことだろう。
「衝撃波、来ます──!」
「うぉ……」
艦橋のガラスがガタガタ揺れ、戦艦自体も大きく後ろへ流された。
「まだ立つか……!」
問題の髑髏武者は鎧が完全に吹き飛び、刀も折れていた。更に腕の骨も肋骨も喪っている。
しかし依然として魔王城の前に浮遊しており、むき出しとは言え織田信長は髑髏武者によって守られていた。
「やはり最後はこの船で終わらせるしかないか……。この人類の希望を乗せた船でな! ──主砲旋回、目標魔王! ……撃てェェェェ!!!」
ドゴゴゴォォォンンン!!! という、とてつもない衝撃と爆音と共に艦前方に設けられた45口径魔導51cm三連装砲二基による斉射が行われた。
「きゃぁ!」
「しっかり掴まれ、エル」
「え、えぇ……」
エルシャは私の腕にしがみつく。
今日で軍艦は浮かせるのに向かないことが分かった。射撃の衝撃を水が吸収してくれないので有り得ないほど反動で揺れる。エルシャも他の搭乗員も酔って具合が悪そうだ。
「爆煙晴れます!」
「や、やった……か……」
遂に髑髏武者は完全に消え失せた。前回私たちに絶望を突きつけた魔王の髑髏武者を倒したのだ。
「おおお!」
艦内は歓声で沸いた。
「やったでござるなレオ様!」
「ああ!」
サツキは煤で汚れた鼻を擦りながら笑った。
「ありがとうレオ。これで──」
エルシャが私の腕を掴み立ち上がろうとした時、艦に衝撃が走った。
次の瞬間、艦の前方で大爆発が起こり艦全体が軋むような音を立てて失速し始める。
「な、何があった!?」
「分かりません! 何も見えません!」
艦橋のモニターは砂嵐しか映さず、ガラスもヒビだらけで何も見えなくなっている。
私はエルシャをサツキに託し艦橋からデッキに出た。そこでの光景に、私は目を疑わずにはいられなかった。
「どうなっているんだ……」
甲板には髑髏武者と同じ真っ赤な魔力が凝縮された刀が突き立てられていた。
主砲の第一砲塔が吹き飛び、第二砲塔も主砲が爆発に巻き込まれへし折れている。さらに爆発によって甲板には火災が延焼。黒煙が艦を包んでいた。
「レオ様外は危険です! お戻りください!」
「あ、あぁ……」
私は衛兵に無理やり艦橋の中へ連れ戻された。
「被害報告来てます! ……第一砲塔壊滅! 揚弾筒内にあった弾薬に誘爆したものとみられます!」
「弾薬庫は無事だったか……」
弾薬庫が吹き飛べば艦は真っ二つにへし折れていただろう。集中防御方式、All or Nothingは魔王の攻撃にも有効であったということだ。
「弾薬庫は逸れていますが刀は艦内のバイタルパートを貫通! 艦長室や通信室を喪失しております!」
「はは……、艦橋に出てて良かったよ……」
「そして主機にまで剣先が及び、冷却装置が破損! 艦は出力を失いつつあります!」
「それは……まずいな……」
『まずい所の騒ぎではないぞ! このままではエンジンは魔力暴走を起こして木っ端微塵だ!』
機関室からの艦内通信でレオナルドの怒声が届いた。
「レオ様! 攻撃が来ます!」
「なッ──」
信長は大きく手を掲げていた。上空には武者髑髏の刀のみが具現化されている。
「か、回避!!! 面舵一杯!」
「駄目です避けきれませ──」
「ぐぉぉぉ!」
艦は急旋回したが信長の攻撃を躱すことは叶わなかった。
「左舷の一割ほどが抉り取られました!」
「くそ! このままでは……!」
「クハハハ……」
信長はこちらを見据え、次の攻撃の機会を伺っている。
「レオ様ご指示を!」
「レオ様!」
「レオ様!」
第一砲塔は失った。火災で他の対空砲なども戦闘続行は不可能。
エンジンも次第に使えなくなり、この艦はやがて動くことすらできなくなる。
「……レオナルド。これから私が言うものを三つ、用意してくれ」
『……話してみろ』
「歳三、孔明、ルーデル、ナポレオン。……後は任せたぞ」
「…………」
「これより、正真正銘、最後の命令を下す。心して聞くように」
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