烏と旗と蝙蝠

 からすが家を建てたので、自分の家だと解るように旗を立てた。

 その旗には太陽が描かれていた。

 烏の立てた家の近くに蝙蝠こうもりが住んでいた。

 蝙蝠は夜勤で夕方と明方、烏の家の近くを通るのが常だった。

 烏が旗を立てて数日後、蝙蝠が烏の家に文句を言ってきた。

「お前が太陽を旗に掲げるせいで、夜勤の私の目が眩む。その旗を仕舞え」

 烏が無視していると、蝙蝠は行く先々で烏を悪し様に罵った。

「あの烏は太陽を休ませない悪魔だ。皆で無視しようぜ」

 蝙蝠がこう触れ回れば触れ回るほど、蝙蝠は軽んじられていきましたとさ。


 このように象徴と現実を区別できない人が大勢いる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る