第157話 大魔法陣
※三人称視点
5万の軍勢を前に圧倒するロイン。
その様子を、水晶を通じて見ている人物が二人。
ユーラゴビスの王、ユィンと、その右腕であるジェスタークであった。
彼らはユーラゴビスの城から、進軍の様子を監視していた。
一瞬にして消え去ってしまった5万の軍勢を目にして、ユィンは困惑していた。
あの信頼するジェスタークが、大丈夫だといったから進軍を許可したというのに、実際はこのありさまだ。
ユィンは狐につままれたような気分になっていた。
「ど、どうなってるんだジェスターク……! わが軍が一瞬にして破滅してしまったじゃないか!」
「安心してくださいユィン王。これも、私の想定通りなのですから」
「なに……!?」
するとジェスタークは、不敵な笑みを浮かべて、水晶の中のロインに向けて独り言をいいはじめた。
「くっくっく……ロイン・キャンベラス。まさかこれほどまでの怪物とは……。ユーラゴビス軍5万程度なら、一瞬で灰と化してしまうなんて。しかし、これも我が策略。すでに結界は、張り終えた……!」
そう、ユーラゴビス軍の陣形は、すこし風変わりな陣形となっていた。
彼らの死体が、血が、描き出しているのは、大きな大きな魔法陣。
ジェスタークが呪文を唱え始めると、それらは徐々に綺麗な陣となって、魔力を帯びる。
水晶越しに、ジェスタークは大魔術を起動しようとしていた。
「おお……! さすがはジェスターク! これがおぬしの言っていた秘術なのだな!」
「そうですユィン王。これこそが我が最強の付与術。いま、おみせしましょう……!」
――ズゴゴゴゴゴゴゴ。
――シュィイイイイイン!!!!
◇
【ロイン視点】
「ふぅ……これで全員か。まあ、5万の軍勢といっても、やっぱり人間相手だと楽勝だな……」
ユーラゴビス軍を単騎でしりぞけ、俺は一安心する。
国同士の戦争に発展したら、多くの死者が出るし、どうしようかと思ったけれど……。
俺一人の戦力で済んで、本当に良かったと思う。
「あとはこの動かなくなった兵士たちの山をどうするかだが……」
なんとも不思議なことに、いや……以前にも似たようなことはあったか……。
俺が倒した兵士たちからは、それぞれレアドロップアイテムがドロップしていた。
人間からもドロップアイテムが出るのは、勇者のときに経験済だ。
でも、一般の兵士たちからまでドロップするなんて。
しかも5万ともなれば、いちいち確認していくのも大変だ。
「あとで兵士たちを派遣するか……」
とりあえず俺はいったん戻ろうか、そう考えたときである――。
「なんだ……!?」
突然、地面に倒れている兵士たちが光を帯び始めた。
そして、それらが描き出しているもの……。
「まずい……! 魔法陣か……!?」
――ズゴゴゴゴゴゴゴ。
――シュィイイイイイン!!!!
瞬く間に、魔法陣が完成し、魔法が起動する。
いったいどこから、この魔力が注がれているのだろうか。
術者をつぶさなければいけない……だが、見渡す限り、それらしき人物は誰もいない。
「兵士の中に呪術師でも隠れていたのか……!?」
とにかく、目の前でなにかが起きようとしている。
――ズル……。
「…………!?」
生暖かい感触が、俺の足に伝わってきた。
ふと自分の足元をみると、なんと足首を、一人の兵士がつかんでいる。
しかし、その兵士は既に死んでいるはず……。
よく見ると、兵士の目には光が灯っておらず、意識もないようだった。
「そういう作戦か……!?」
気が付くと、俺はゾンビ兵たちに囲まれていた。
【あとがき】
サポーター様限定SSを公開しました。
興味のある方はぜひのぞいてみてください。
本編とは関係ないほのぼのした短編となっています。
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