第60話 底上げ


《攻撃アップの種》

レア度 ★8

ドロップ率 0.001%

説明 食べると攻撃力+10



 俺は、手に持った拳大のその種を、まじまじと見つめる。


「これは…………攻撃力の種……?」

「ああ、そうだ。ステータスの種には、いくつか種類があって……これはそのうちの一つだな」


 カナンがそう答える。


「それにしても……とんでもない能力だなロイン。私もいろんな強い冒険者を見てきたけど、こんなのは初めてだ……」


 カナンがなかば呆れつつ、俺にそう言った。


「まあな。でも、これでわかっただろ? 俺たちが人食い植物デスフラワーを倒しまくれば……最強になれるって……!」


 そう、ここでできうる限り人食い植物デスフラワーを討伐したい。

 俺たち三人の能力を底上げすることは、きっとこれからの魔王軍との戦いでも役に立つはずだ。


「そうだな。私も……なんだかワクワクしてきたよ! まさかこれ以上強くなれるなんて……!」


 カナンは、ギルドラモン冒険者ギルドの1位として、長年そこに君臨してきた。

 そして、自他ともに最強だと思ってきたらしい。

 だけど強さに対する思いは、強くなるばかりだったという。

 そこに俺が現れた。


「私、今ロインに出会えて本当によかったと思っているよ」

「え……?」


 カナンが真剣な顔つきでそう言う。


「私より強い男に出会えた。それに、ロインといっしょにいれば……この先もまだまだ強くなれそうな気がする……!」

「カナン……」


「それに、その魔王軍ってのはかなり強いんだろ?」

「ああ、それはもう……」


 俺からしても、カナンの度胸はすごいと思う。

 魔王軍という強敵の話を聞いて、これだけ目を輝かせられるんだから……。

 仲間としては、本当に頼もしい限りだ。


 そうやって俺たちが見つめ合っていると……。

 後ろから、クラリスが半分怒り口調で、割り込んできた。


「えー……あの、おほん。お二人さん……? 私もいるんですけど……?」

「あ、ああ……すまんすまん」


 ついつい、カナンに見とれてしまっていた。

 やはりお互いにギルドの1位同士というのもあるし。

 それに、一度拳を交えた仲だ。

 雨降って地固まるというか。

 なんというか、次第に俺はカナンに惹かれ始めていた。

 うーん、サリナさんにも紹介しないとなぁ。


「で、クラリス。なんだって?」

「んもう! はやくこのステータスの種、つかってみましょうよ!」


「ん、ああ……そうだな! さっそく使ってみよう。で、誰が食う?」

「それは……もちろんロインじゃないの? 攻撃力の種だし……」


「まあ、そうだよな」


 俺は意を決して、種を口に含んだ。


 ――ガブリ。

 

 見たこともない見た目で、少し躊躇してしまう。

 しかも、あの人食い植物デスフラワーから出てきたものだ。


 味は、……なんだろう。

 最初に渋みがあるが、そのあとで甘じょっぱさがじわっと口に広がる。


「ど、どう……?」

「ん、そうだな……。おいしい……かな……?」


 クラリスが心配そうに俺を見る。


「…………って、そうじゃなくて……! ステータスのほうよ!」

「ん、ああ……」


 俺はその辺にいるモンスターを、適当に探す。

 そうだな……。

 【ハニービー】という、下級モンスターを視界にとらえる。


「よし、アイツで試してみよう」


 俺はハニービーの元まで歩いて行って――。


「えい……!」


 素手でそいつの身体をぶん殴る。

 ハニービーは蜂型のモンスターで、手のひら大の大きさの虫だ。


 ――ドカ!


「ブーン! ブーン!」


 打撃を喰らって、ハニービーは明らかにこちらに敵意を向けてきた!


「お! 怒ったぞ!」


 以前の俺だったら、攻撃力ゼロなせいで、こうやって殴っても、なんの反応も得られなかったものだ。

 たった10とはいえ、攻撃力があるということは、こういうことなのだ。


「すごい……! 俺でも素手で戦えた……!」


 しかも、なんのスキルも使っていない。

 正真正銘、俺の肉体だけでの攻撃だ。


「…………って、ロイン! 危ない……!」


「へ…………?」


 どうやら浮かれていて、気づかなかったが。

 ハニービーは俺に怒り、こちらを攻撃しようとしている。

 まあ、当然っちゃ当然だ。

 いくら攻撃力10のパンチだとしても、向こうからすれば立派な敵対行動だ。


 ハニービーは、お尻の針を俺に向け、いましも攻撃しようとしている。


「っく…………!」


 あれに刺されると痛そうだ。

 だが、攻撃の練習台にしてしまったのだから、それは俺が悪い。

 このくらいの攻撃であれば、甘んじて受け入れよう。

 俺はそう覚悟を決める。


「ビー! ビー!」


 そう抗議の声をあげながら、ハニービーは俺に向かってきた!

 針が、俺に刺さる――!


 そう思ったが……。


 ――キュイン!


 そこで俺の勇者の指輪が反応した。


「あ………………」


 なんとも気の毒なことだが。

 勇者の指輪から、またいつものように赤い光線が発射される。


 ――ビィイイイイ!!!!


 そして、ハニービーの身体は、俺に到達するまえに、真っ黒に焼け焦げてしまった。


「あらら……」


 まあ、おかげで俺は刺されずに済んだわけだが。


「ふぅ……もうロインたら、危なっかしいんだから……」

「はは、クラリス。ごめんごめん」


 こうして、俺は長年のコンプレックスを解消した。

 俺にはもう、攻撃力がある。

 もう誰にも、スライムすら倒せない無能なんて言わせない。

 今の俺には、素手でスライムくらい倒せる力がある。


「うおおおおおおおおお!」

「わ……! びっくりした!」


「この調子で、どんどんステータスの種を集めるぞーーー!!!!」


「うん……!」


 

――――――――――――

ロイン・キャンベラス(装備)

17歳 男

攻撃力 0010(+4500)

防御力 0021(+800)

魔力  0000(+150)

知能  0130

敏捷  0075

魅力  0225

運   0999

会心率+100%

会心ダメージ率+100%

スキル

斬空剣エアスラッシュ

高速移動スピードアップ

身体強化パワーアップ

転移テレポート

壁破壊テルミト

溜め斬りソードバースト

弱点調査ウィークサーチ

雷撃剣サンダーソード

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――――――――――――――――――


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