第58話 強くなりたい


 とりあえず俺は、カナンにこの周辺のことを聞いてみた。


「どこか、珍しい素材が得られる場所はないかな……?」

「珍しい素材か……そうだな……」


 といっても、こっちはミレージュ基準での珍しいものを探している。

 カナンからすれば、ギルドラモン周辺のことは普通のことだから、なにが珍しいかもわからないのだろう。

 もっと具体的に言わないとだめかな……。


「情報屋とかでもいいんだ。なにか知ってたら話してくれないか……?」

「うーん、といってもなぁ……私たちは特別なにかしているわけではないからなぁ……」


 そういえば、ギルドラモンの冒険者はみんな、それほど特別な装備をしているというわけではなさそうだ。

 装備のクオリティでいえば、むしろミレージュの職人のほうが優秀だ。

 それなのに、どうしてここギルドラモンには猛者が多いのだろうか。


「なあ、カナン。ここの冒険者たちが強いのには、なにかわけがあるんじゃないか?」


 もしかしたらそこに、なにか新素材への手がかりがあるかもしれない。


「え? ああ、まあ……《ステータスの種》のせいかもしれないなぁ」


 カナンのその言葉に、俺は耳を疑った。


「ちょ、ちょっとまってくれ……! す、ステータスの種だって……!?」


「ああ、かなりのレアドロップアイテムなんだけど、たまに手に入るんだよ。ほんとうにたまにだけどね……。だから、お金のある上級冒険者ほど、素のステータス自体が多少高いってのはあるかも……。まあ、それは微々たるものだから、あんまり関係ないかも……」


 そうか……。

 しかし、ステータスの種で素のステータスが高いという説はなんとなくうなずけるな。

 まあ、レアドロップアイテムということだから、そこまで大きな違いはないのかもしれない。

 だが、この土地に限ってそんなアイテムが存在するのだとしたら……。


 一人の冒険者が生涯で得られるステータスの種は微々たるものだとしても……。

 それが何世代にもわたって、食べられ続けてきたら……?

 そして、それが後世に受け継がれて、その土地の人全体に影響を及ぼしているのだとしたら……?

 案外その説は、間違っていないんじゃないか……!?


「カナン! 今すぐそのステータスの種が得られる場所へ案内してくれ!」


「えぇ……!? で、でも……かなりのレアドロップアイテムだし、そんな取ろうと思って取れるものじゃないぞ……!?」


 まあ、カナンがそう言うのも無理はないな。

 だが、俺は確信していた。

 俺がいけば、いくらでもそのステータスの種を手に入れることが出来る……!


「ロイン……これって……!」

「ああ、そうだクラリス……! これはとんでもないチャンスだ……!」


 俺とクラリスは顔を見合わせて喜び合った。

 カナンはなんのことだかという表情を浮かべている。

 これは種明かしが楽しみだ……ステータスの種だけに……。


「さあいこうカナン!」

「え。ああ……わ、わかったよ……、よっぽど運に自信があるんだな……?」


 自信なんてもんじゃない。

 俺は運がいい訳じゃなく、文字通り《確定》なんだから。

 運が悪くてもなんでも、必ずレアドロップアイテムを手に入れられる。

 ステータスの種だって、その能力の範疇なはずだ。


「えーっと……このクエストでいいか……」


 カナンはクエストボードから、一枚のクエストを選んだ。


人食い植物デスフラワーの討伐・駆除】


 なるほど……人食い植物か……。

 恐ろしい名前だ。

 ミレージュの周辺には存在しないモンスターで、聞いたこともない。


「えーっと、場所は……死の森……」


 ダンジョン名も恐ろしい……。

 だが、俺にはそこが宝の宝庫に見えた。



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【あとがき】《新連載》を始めました!


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