第172話 対空戦闘ヨーイ!
「本当に異世界半端ねーな」
帰りのボートで河を登っている途中、頭上を飛竜が通過していった。
ちょうど中継地点の集落にほど近い場所だ。
結構入念に偵察を入れてきてる。
しっかし、デカイなあの蜥蜴。
元の世界の翼竜の最大でも12mくらいが最大だったのでは?と言われてたはずだが、飛竜はその二回りはデカイ。
アレで人を二人も乗せて飛ぶとか、ファンタジーが過ぎる。
「詳しくは知らんが、どうやら魔力を使ってるらしいぞ」と、ヴァルちゃん軍事顧問談。
ハイ出た、魔力!魔力、万能過ぎだろ!
今の俺が言えた義理ではないが。
ワイバーンやドラゴンは魔法攻撃すらしてくる辺り、飛ぶ為だけに魔力を使う飛竜なんか可愛い方かもしれん。
「見つかったな……」
「見つかっちゃったね!」
「オイ、見つかったぞ?」
「まあ、見つかっただろうな」
ボートの上空を旋回しているが、今のところ攻撃してくる様子はない。
「コタロウ、手を振ってやれよ」
「お前、何を悠長な事をいってるんだ!」
コタロウは暢気に飛竜に向かって手を振っているが、ウサちゃんはこういった実戦経験が余りないのだろうか、ヴァルガンが「シシリー落ち着け、今更慌てたところでどうにもならんさ」と苦笑いしながらウサちゃんをなだめていた。
聞けば、ヴァルガンは戦場働も前は結構やってたらしいが、ウサちゃんは
実戦も護衛の仕事と偶に暗殺紛いの仕事だけだったらしい。
だろうな。
ウサちゃんは抜群の戦闘力に反して、駆け引きや精神面に経験の無さが滲み出ている。
俺がとやかく言う事ではない。
そんな事より、頭上を飛び回る小煩い蜥蜴だ。
さすがに人を二人も乗せているせいか、俊敏とは言えない飛行ではあるが、それでも軽く百数十キロは出てる。本気を出せばもっと速く飛べるだろう。
このエンジン付きのボートがいくら速かろうが、空を飛ぶ蜥蜴を振り切る事は不可能だ。
とはいえ、そもそも振り切る必要も無いのだが。
「ヴァルちゃん、コレ頼むわ」とハンドルを握らせると両手を空に向けた。
ついでに肩のハードポイントも起動する。
今の俺の気分は、『M55 12.7mm 4連装対空機関銃』である。
「ファイヤーーッ!はっはっはっヒャッハーー!!」
4本の火線が飛竜と人間を蹂躙する。
正に『ミートチョッパー』である。
スキルの『射撃統制システム』もいい仕事してる。
肉片や内臓を撒き散らしながら墜落する飛竜と兵士を確認すると、操縦を代わり速度を上げて村へと帰った。
飛竜を撃墜した時のコタロウのとても残念そうな顔が気になっあが、人の儚さ、人生の無情さを教えてあげるのも、保護者である俺の義務であるからして……気にしない事にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます