第141話 慈悲の心
「彼らの助命をお願いしたいのだけれど。勿論、こちらで相応の処罰は下すわ。もし——」
「寝言は寝て言えよ、おばさん」
こちらの即答に表情一つ変えない鉄のおばさん。
取巻きが息巻いて今にも切り掛かってきそうな勢いではあるが、片手を上げるだけで制してしまった。
「つーか、お前レディーに対してなんつー事言うんだ!ヒュヴッ!」
「ババアって言わなかっただけましだろ?ちょっと黙ってろ」とミルフに喉輪をくらわせると大人しくなった。
無言でのたうち回ってるが、自分で回復魔法を使えるミルフは無視してもいいだろう。
「それで、おばさんは誰?どこの世界でも"おばさん"っちゅーのは図々しくて困る」
「あら、あなたが例の?自己紹介がまだだったわね、ナンシー・シモンよ。国家保安対策本部の委員長をやってるわ。ついでに言っておくと、書類上は今の貴方達のボスって事になるわね」
「ああ、このクソみたいな茶番劇はアンタの筋書きか?品が無さすぎてそろそろ限界だったんだ。これ以上俺達に余計な指図をしてみろ、その鉄面皮引き剥がしてもっと愛嬌のある顔にしてやる」
「シモン評議員、お下がりください!この無礼者に身の程を教えてやります!」
鉄おばさんの制止むなしく、剣を抜いた一人に全員がつられる。
「イヤイヤ、中々の忠犬を飼っていらっしゃる。ご褒美は、バターでも塗って舐めさせてるのか?」
「貴様!度々の許し難き暴言!跪いて許しを乞え!情けで首を一刎ねにしてくれる!」
まぁ、剣を抜いた時点で殺すのは確定してたんだが、後で何かと言われるのも馬鹿らしいので、襲われてしょうがなくやった事にしよう。
「こっわーい!助けてアイリーン!……ホラ、お前達も仕事だぞ。おばさんを除いて、甲冑共は殲滅だ殲滅」
溜息を吐くアイリーンと既にヤル気満々のハイランダー達。
「やめなさい!あなた達!命令ですよ!」
「オイ、君達。ご主人様の命令に従わないと帰って舐め舐めさせてくれないぞ?尻尾巻いて逃げていいんだぜ?犬は帰ってババアの股ぐらに顔でも突っ込んでろ!」
「相手の挑発に乗っ——あっ……ま、待ちなさ……」
完全にキレて暴発した甲冑軍団が鉄おばさんを押し退けて迫って来る。
散々時間稼いだおかげで、ようやくクールタイムが終わった。
魔力を纏い正面二人に"掌撃"。
甲冑くらいの重量など誤差程度と言わんばかりに吹っ飛んで、後方の仲間を巻き込む。
驚く甲冑軍団にハイランダー達が牙を剥いて襲いかかった。
ディアミドが一振りで敵の首を刎ねる。
ワイアットの一振りで敵の剣が腕ごと宙を舞う。
副長ゲイルの相手などスティレットとかいう"鎧通し"で、甲冑の隙間という隙間から血を垂れ流してる。
負けじと俺も"波動突き"で兜の穴から血の噴水を作る。
なんにせよ、甲冑軍団も中々ヤルようだったが相手が悪かった。
アイリーンが二人を地面から突き出した巨大な氷柱で串刺し。
ミルフが慌てて出したサンダーボルトで一人を感電死させ、残りを数的有利になったハイランダー達が危なげない連携で刈り取った。
残敵は思わぬ助っ人に少しは希望を見出しただろうが、それだけにこの惨劇での落差は大きいだろう。
後は消化試合だが、さすがにこの場で絶望感漂う無抵抗の兵士を虐殺するのはちょっとだけ不味い。
五、六十人はまだ生きてる。
俺にも慈悲の心はある。
捕虜にして後で金に変えよう!
「お行儀良く!おとなしくしてる奴だけは拘束してやる!」と残りの兵士達に大声で伝えてやった。
何か言いそうになった鉄おばさんにも「シーシーシー、アンタもだ」と人差し指を口元にやって黙らせる。拘束まではしなかったが。
「モーちゃんとラッドは残りの標的を片付けろ。アイリーンとミルフは魔術部隊を見張れ。魔力を感知したら殺していい。ハイランダーは未だ武装している者を殺せ。少しでも反抗した者も殺せ。許可なく口を開いた者も同じだ」
勿論、兵士達にも聞こえるように指示する。
それぞれがプレキャリやボディーアーマに束ねてる簡易手錠で次々と後ろ手に拘束していく。
結局、逃げ出そうとした馬鹿一人以外はこちらの指示に従った。
逃亡罪は勿論死刑
投げた手斧で頭が縦に真っ二つに割れていた。
「こっちも完了した」
ターゲットのタカ派の標的の三つの生首をぶら下げた眼の座ったモーちゃんとラッドが合流したところで任務完了だ。
メールの報酬を確認する
侵略者殲滅成功報酬:40000P
これでようやくひと段落だ
これだけ見れば苦労に見合ってないが、それはまぁいい。
報酬はちゃんと他からも貰えるし、取れる奴から搾り取る。
侵略者120人達成報酬:900P
侵略者130人達成報酬:1000P
侵略者140人達成報酬:1100P
侵略者150人達成報酬:900P
侵略者160人達成報酬:1000P
侵略者170人達成報酬:1100P
兵士はやはり侵略者にはカウントされてない。
標的の雇った傭兵や私兵達が対象だった。
この国の正規兵はなんのポイントにもならんかった。
いや、この場で待ち伏せしていた兵士達と甲冑軍団は、まぁまぁいい経験値になったな。
「さて、上官殿。国家反逆の輩を全員無事に押さえる事ができました。残念ながら抵抗激しく全員を殺害する事になってしまいましたが、任務は成功と言って良いでしょう!さあ、隊員達に労いの言葉を」
さぁ!と促し、鉄おばさんがどんな口上を垂れるか期待したが、またもや邪魔が入った。
「まぁ、よく暴れたようだな」
「爺さんも絡んでたりはしないよな?友人を手にかけるのは気が引ける」
ベッケルともう一人の男が護衛を引き連れて現れたのだ。
「まさか。せっかく命拾いした矢先に、死神相手に喧嘩を売るほど命知らずではない」
「それは良かった、安心した。ついでに聞くが、そんな命知らずの下衆野郎がどこの誰だか知らないか?」と隣りに立つ男を凝視する。
後ろに控える護衛が反応するが、男は笑みを浮かべたまま臆する事なく挨拶してきた。
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