第109話 人妻枠なんてあったっけ?

「ガオー!悪い子にはお仕置きしちゃうガオ!」

手をワキワキさせて恐怖に染まった秘書官に近寄る。勿論、お尻をぺんぺんするためだ。

撫でてぺん!撫で撫でぺんぺん!するのだ。

最早スケベ面を隠す事なく下衆エロオヤジの俺は若い女の尻を狙う猛獣だ!


「へー!東方武闘術とは珍しいですな」

屋敷から優男と妙齢の美人妻風の女が現れた。

優男の言う東方武闘術が何なのかは知らんが、せっかくのエロ行為を邪魔するのはやめてほしい。


美人妻風の方は小ぶりな胸だがデコルテがエロい!

コッチにはお仕置きされたい。土下座までならする価値はある。ニャーン。

虎は美人に滅法弱かった。

最近めっきり形を潜めたハーレムルートが俄然熱を帯びてくる。

人妻枠は君に決めた!

そんな枠あったのだ?今、作ったんだよ!


「ソフィア様!アンソニー様!ご注意ください、転移者です!」

そう!世界に名だたるHENTAIの国JAPANから来ました!


「ご紹介に預かりました。死神兼使徒、今は一匹の虎です。ガオー」

俺の自己紹介に優男は微妙な顔をしたが、終始アンニュイな表情の美人妻風の女はようやく興味を持った風である。


優男は武官なのだろう軍服を見事に着こなし、よくよく見ると意外と歳食ってる。

若作りイケメンオッさんだ。ついでに言えばそこそこ強いっぽい。

袖無しやモーリッツ達よりは強いがハイランダー達には手も足も出ないだろう。

問題はそこではない。

若作りイケメンオッさんが意外とモテそうなのが気に食わない。

俺よりモテるヤツは敵だ。

(コイツはモテ男だ!男の敵だ!ドサクサに紛れて殺しておこう!)

俺の内なる猛獣がそう叫んでいる。

俺もそう思う。

男の嫉妬は見苦しいがこの流れならイケる。


敵意を感じたのか優男が腰のサーベルを抜き、殺す口実をができた事にほくそ笑んだ。


「貴方が神に呼ばれたという使徒なのですか?」

「ウィ、マダム」

アンニュイ美人妻が初めて口を開く

「ベッケル武官、剣を納めなさい」

イヤイヤ、どうかそのまま斬りかかって来てくれ。


「しかし!この者すでに我が国の兵士を手にかけております!この流れなら殺しても問題にはならんでしょう」

そうだ!この流れなら男の嫉妬でこの優男をボコボコにして殺しても誤魔化せるんだ!


「立場を弁えなさい。我が国を貶める真似は許しません。使徒様、どうかお許しを」


「くっ、後で泣きを見ても知りませんぞ……」

中々に男としてクソダサい台詞を吐いた優男に少しだけ溜飲を下げる。


「貴国の兵士を殺したのは正当防衛だ。話し合いに来た俺を害そうとしたのでな。それで、話し合いに応じるつもりはあるのか?」

「貴様!我が国の領土を侵犯しておいて!何が正当防衛だ!」

「もっともなご意見だが、この街に対して侵略行為を行った奴等に言われたくないな。あと、もっとマシな兵を置いとけ。簡単に入って来れたぞ」


再び剣に手をかけた優男を美人妻ソフィアが制止する。

「もう一度言います。下がりなさい!これは命令です」

ニャーン、俺も叱られたいニャー


怒りで震える優男を尻目に、「ご案内いたします」と屋敷内に通され、まぁそれは御立派な貴賓室で待つように言われた。


MAPで確認すると、貴賓室の両隣の部屋には5・6人が控えている。

直ぐに襲って来るような事はなさそうだ。


さあ、あの美人妻風領事の対応やいかに。


どう転んでも楽しくなりそうで、自然と素敵スマイルになってる自分に気付いて勝手に恥ずかしくなった。

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