第86話 統一戦線の異常な影④
そのあと日が落ちるまで清掃活動を続けた勤勉な俺達は、『赤蠍』の所属していた一味の塒を物理的に破壊し、その他闇賭博を二つと売春宿と阿片窟を一ヶ所ずつを潰してまわった。
臨時部下二人は強敵との戦闘のおかげかちょっと格が上がったんじゃないかと思うほど動きが良くなっていた。
ちょっと調子に乗った袖無しをアイアンクローで分からせしてやった。
「それでは諸君、今日はご苦労だった。コレは頑張ったご褒美のボーナスな!じゃ明朝、俺の宿に集合な。ハイ解散」
潰した組織や施設で臨時ボーナスが入ったので三人で山分けした。
残念ながら売り上げや資金の類いは本拠地に都度回収される仕組みだったので大した金額にはならなかったが、それでも賭博場と阿片窟にはそこそこの金があり、一人頭500G(約500万)を超えていた。皆んなウハウハである。
こめかみにクッキリと指の跡が残ってる袖無しの馬鹿をローズに報告に行かせ、ラッドは領主の元に戻した。
宿に戻ると白光騎士団を連れた聖女が待っていた。
「使徒様、お勤めご苦労様でございます」
危うくスカルフェイスのまま宿に戻りそうになったが直前で気がつき事なきを得た。
せっかく顔を隠し、マフィアの抗争を装って清掃活動に従事してるのに危ない危ない。
あんな恰好で「使徒様」だなんて呼ばれたくない。
使徒と裏社会は全くもって、全然関係ないですぅ
裏社会とズブズブの使徒とか外聞が悪いだろ?
「あそこの使徒、マフィアとズブズブで敵対組織を潰して回ってるらしいわよ!」
「あらやだ!怖いわねぇ。そんな人が使徒だなんて世も末よねぇ」
とか、世間の奥様方に噂でもされたら困るし。
教団や領主達には口止めが効くので問題ないが、世間様には極力バレないようにしないとな。
「中で待ってればいいのに、こんな所で目立つだろ。何か問題でもあったか?」
「申し訳ありません、配慮が足りず。所でそろそろ教皇庁に報告してもよいか確認にまいりました」
「あぁ、それな。いいんじゃない?別に」
この街に着いた翌日に、「教皇庁に使徒様発見の報告をしてもよいか?」相談されたのだが、「暫し待て」と言っておいたのだ。
どんな組織か分からないし、何より"面倒な事になるとヤダなぁ"くらいの感覚で待ってもらっていたのを忘れてた。
大量魔石の為のミッションも佳境を迎えている。
魔石さえ手に入れば教皇だろうが神聖教国だろうが面倒な奴に捕まる前にトンズラできる。
いっそ大司教のような輩だったら排除してもいい。
コイツら白光教団にもまぁ、報告の義務くらいあるのだろう。
世話になっているのは確かなので、無理に引き伸ばすのも気が引ける。
まぁ、今回は忘れてただけなんだが……
「教皇庁の奴等にもちゃんと言っといてくれよ。とんだ腰抜けだ!ってな。後、邪魔するような奴は天に召す事になるが、問題ないか?」
当分はこの"腰抜け使徒作戦"で稼がせてもらおうと思ってる。
「はい、使徒様の御心のままに……しかしながら、私の身近な者には使徒様のご意向に沿えるよう、それとなく真実を伝えてもよろしいでしょうか?」
敵対者には中々容赦ないこの聖女でも、やはり身内を殺されたくはないようだ。
しかしこの世界の聖教とやらも随分と俗な奴等が多いよなぁと思うが、前の世界よりはマシかもなと思い直す。
宗派や派閥間での争いはあるが、少なくとも神を出しに虐殺や戦争はしていない。
「別に構わんよ」どうせいつかはバレる。
「報告のついでに他のはぐれ転移者の情報を入手してくれ。通常の情報入手とは別に裏からも手を回して不正がないか調べてくれ。どうも教皇庁とやらは信用できん。頼めるか?」
お前らの胴元は胡散臭過ぎる!とか失礼にも程があるが、聖女は寧ろノリノリで引き受けてくれた。
「お任せ下さい!神に仇なす不敬な輩を成敗し、組織の膿を出すチャンスですね!」
と、鼻息も荒い。
後、オッパイがめっちゃ揺れてる。
この聖女、思考は残念だがオッパイは至高である。
翌朝、宿に来た二人の部下(仮)に話しを聞く。
モーリッツ率いる各衛兵隊から選抜した精鋭部隊とローズファミリーは、新興勢力の各個撃破でその力を確実に削いでいる。
漸く自分達の状況に気づいた新興勢力だが、街はおろかスラムの包囲網すら抜ける事ができず籠の鳥だ。
鳥なんて可愛いもんじゃないな、獣だな。
そんな獣のような奴等も追い込まれれば、コチラを噛み殺そうと必死になるはずだ。
因みにスラムの外にあった奴等の拠点は昨日までの襲げ……清掃活動で粗方片付いた。
「思ってたより早く片付きそうでなによりだな。まあ、ローズファミリーはこの後が大変かもしれんが、リクルートも進んでるようだし衛兵隊とも連携が取れているならどうとでもなるだろ」
ラッドは「えぇ、おかげ様で」と苦笑い。
「兄貴のおかげですぜ!俺がぁ、今回の手柄で大幹部に抜擢されたのも全っ部!兄貴のおかげです!」
へぇ、といつもの興味ない返事をしそうになったが何とか堪える事ができた。
「そうか、やったじゃないか。お前の手柄はお前が頑張った証拠だ。自分の手柄だ、胸張って誇れ」
部下を褒めて伸ばす上官の鑑だなぁと、自分を褒めていたらラッドに胡乱な目で見られてた。
本人は気づいてないからいいけど
「よしっ!今日も張り切って街を綺麗にしようじゃないか!」誤魔化すように勢いよく立ち上がり宿を出る。
途中、強制的に空家にした賭博場で黒尽くめのスカルフェイスに変身させ、今日はハードになりそうなのでプレキャリも装備させた。
スラムに三人の死神が現れる。
一人だけ腕が出てるけど
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