第80話 粛正の嵐④

「こりゃ駄目かもな」

多分駄目だと思いモーリッツに確認してみた。

大勢のコワイ人達に囲まれて熱烈歓迎ムードで、俺・モーリッツ以下3名は絶賛ピンチ中だ。


「貴様ら、私がブリスク家の者と知っての狼藉か?西区衛兵隊長から話しは通ってるはずだ。お前らの頭目と話し合いに来た。さっさと案内しろ!」

イラついてるモーリッツは実に偉そうな上から目線な態度が貴族っぽさを演出してる。

コイツも一応貴族なんだなぁと初めて思った。


旧勢力のアジトに入るや否や武器を突きつけられ武装の解除を要求された。

ムッとしたのは事実だが、要求に応えて武装を預けてみたんだが……雰囲気は良くない。


「情報屋の話しじゃ、お前があの『氷の魔女』や『聖女』様をたらし込んで粋がってるGランクの底辺冒険者兼使徒らしいってもっぱらの噂だが、ウチのボスはそういったヤツが大層お嫌いでね、ちょっと可愛がってやれってさwww」

筋肉アピールなのか袖無しの服はなんか寒そうだし、頭悪そうに見える馬鹿A。


多分、Bランク冒険者のボルグ達の"噂"のおかげだろう。本当いい仕事するぜ。


「あぁ、貴族のお坊ちゃんとその部下には手を出さんから安心してくれ」

ちょっと大物感を出そうと必死なナイスミドル気取りの馬鹿B。


「貴様らこんな事してタダで済むと思ってるのか?ブリスク家と教団を敵に回すつもりか!」

モーリッツはカンカンだ。


アイツらを特に守ってやる必要も無さそうで良かった。


「それで、どれくらい可愛がってくれるんだ?」とニッコリ爽やかスマイルで馬鹿Aに聞いてみた。


「魔女も聖女もいないのにそんだけ粋がれるのは大したもんだ。死なないよう手加減はしてやるよ、お前もせいぜい死なないよう頑張るんだな!」


何だよ、手加減すんのかよ……面倒だな……

本気で襲ってきてくれるなら、とっとと殺そうと思ってたのに……


しょうがないから、コッチもなるべく殺さないように可愛がってやる事にした。


「お前こそ素人丸出しのクセに、よくそんなに粋がってられるな?感心するぜ」

距離が無駄に近い、既に間合いにいる

コイツは喧嘩自慢の素人で間違いない

ホラ、胸ぐら掴んできた

力自慢の馬鹿Aは頭に血が登るのが早いらしい


俺もちょっと力には自信ありなんだけど、こういう事されるとちょっと格の差を見せつけてやりたくなる。


胸ぐらを掴んでいる右腕の手首と甲を右手で押さえるように掴むと、半身に身体を開きながら左前腕で相手の肘を押さえ更に右手首を捻り極める。

肘と手首を極められながら倒れる馬鹿Aの右肩を踏み込み、梃子の原理で肩を脱臼させた。


痛みに絶叫する馬鹿Aの膝裏を踏み砕き、殴りかかってきた馬鹿Bの膝に足刀横蹴りを合わせ体勢を崩し、鎖骨を手刀打ちでへし折って側頭部に掌底を外から振り回すように打ちこんで昏倒させた。


多分この二人はギリギリ超越者かそれに足を踏み入れるかどうかくらいの人間だったのだろう。

少なくとも今までに戦った賊やヒッチ子爵の私兵達より力やスピード、耐久性は数段上だった。


周りの三下はビビって襲ってこないので

「来ないならコッチから行くぞ」

と言うと、腰から大型ナイフを抜いて突っ込んできたヤツがいた。


突き刺そうとした手首を掴むと、今度は自慢のパワーを見せてやろうと思い握りしめてやると、橈骨と尺骨が二本とも折れてしまった。

そのまま「Powerーーーー!ha ha woo yeah!」と叫びながらムロフ○ばりにナイフ男をを振り回して三下の群れに投げこんでやると、5・6人ほど巻き込み吹っ飛んだ。

俺はあんなにガチムチじゃないが、パワーは数倍あるだろう。

なんなの、この無駄馬力。


「アンタ、本当に魔法使いなのか?絶対武闘派僧侶モンクと間違ってるだろ……」


「失礼だな、俺は神に『まほうつかい』と正式に認められた魔法使いだぞ?神を疑うのか?」


それでもモーリッツは納得できない様子だったが、無視することにした。



「随分と派手に暴れてるわねぇ。貴方、噂とは随分と違うじゃない。ウチの者がとんだ失礼をしてしまったみたいねぇ」


アジトの屋敷の二階から、やたら胸ぐりが深く腰までスリットの入ったドレスを着た女が降りてきた。


痴女ですわ

おっぱいは程よいサイズでギリ乳首が隠れているが1/3以上は露出してるし、あの腰までのスリットでは通常のパンティーは履けない。

つまりは、ノーパンティー、ノーパンって訳だ

ノーブラ・ノーパン女ですよ


歳は30はとうに超えてるだろうが、色気は最高の女だ。


「アンタが頭目か?女のボスって聞いた時は髭でも生えた女モドキが出てくるのかと思ってたが、随分と色っぽいボスもいるもんだな」


「あらぁ?それは褒めてくれてるのかしらぁ。人を支配するのに必要なのは、何も腕っ節だけではないでしょう?」


「イヤイヤ、聞いた話しだと殺しの腕も中々らしいじゃないか。それで、話し合いはどうする?俺達も暇じゃないんでね、もっとヤリたいってんなら今度は怪我だけじゃ済まないぜ?」


女頭目は一瞬目を細めたが、妖艶に微笑むと「こっちよ、案内するわ」と、俺達を応接間に招いた。

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