第45話 使徒はパートタイマー

結果としてアイリーンの魔術は凄かった。

ゲーム風に言うと単体魔法から範囲魔法まで。

威力も初級から上級までの魔術を見せて貰ったがバレット改の比ではなかった。

だが、それを見て圧倒的な脅威を感じたかと言われるとそうでもなかった。

確かに魔術は脅威ではあるが、弱点もまた存在した。

詠唱から発動までの間、ほぼ無防備になる。

その隙は上級魔術になればなるほど比例して長くなる。


魔力に敏感な人間は魔力の流れを感知できるため奇襲にあまり向かない。発動するために必要な魔力を魔法陣に注ぐ際に魔力の流れが漏れるし魔法陣のエフェクトはカッコイイが目立つ。

非常にカッコイイが…


スキルの魔力感知をポイント交換した。4000P也。


魔術がどんなに強力であろうが撃たれる前に殺せばいい。単純だ。

バレット改は詠唱を必要とせず、魔力を感知される事も恐らくない。魔力を両腕に溜めるので外に漏れない。

有効射程でも魔術にもよるらしいが圧倒的にバレット改が有利である。

優位性を保つ事ができれば一方的な展開に持っていけると確信した。


バレット改の弱点としてはやはり単発火力の低さだろう。

生身の肉体であれば問題はない。

鎧や防具であればプレートメイルだろうが貫通は可能だが、建物やある程度の太さの樹木などの遮蔽物はちょっと難しいだろう。

デカイ魔物なんかにも通用するかは今のところ分からない。




「それでは、魔術を使ってみるか…初級魔術の魔導書を持って来た」

一瞬で魔術を覚える事が出来るスクロールなんかもあるようだが、高価だし適正が無ければ覚える事ができない。

「相性の良い属性であれば魔力がある人間なら兆しくらいは見えるはずだ。」

魔導書に書かれている魔法陣に魔力を流すとほのかに光ると言う。


4属性使いだと⁉︎みたいな展開はなかった。

「地属性だな…防御やインフラ整備と使い勝手がいい属性だな」

「そうか…」まぁ、生活魔法があれば何ら不自由がないのでそこまで気にしてない。

紅蓮の焔で灰にし、絶対零度で凍てつかせ、暴れ狂う竜巻で全てを吹き飛ばせなくても問題ないし、気にしてない。


まずは、地属性の初級魔術である「土石壁」を覚える事にした。石飛礫いしつぶてを放つくらいならバレットの方がましだ。なんなら力任せにその辺の石を投げた方が威力あるんじゃね?と思ったからだ。


生活魔法の土操作で遮蔽物を作ることは出来るが耐久性は魔術の土石壁に軍配が上がるだろう。

問題はやはり詠唱から発動までのタイムラグと魔力の消費だ。

魔術は魔力の消費が直感的に使用する魔法に比べて少ない。

にも関わらず、三枚の土石壁を連続で生成しただけで体感で6割程消費した。

魔弾なら馬鹿みたいに撃っても然程消費する事ないのに。

魔力:12のステータスだとこんなもんなのは納得できるが、それだと魔弾の消費は?魔弾特化しすぎだろう…

魔法使い・魔術士としてはかなり未熟と言わざるをえない。

「まほうつかい」はユニークジョブ的な何かで魔弾特化でおまけ程度に生活魔法が使える。

現状そういう認識でいいだろう。

それでも小火器をいつでもどこでも使用できる事を考えれば十分チートである。


最後に生活魔法をアイリーンに見せたら「ほぅ、これは便利だ。器用なもんだな」と、そこそこ驚いて感心していた。料理・洗濯・風呂・掃除に灯り。

特に、魔力操作がⅡになって掃除が捗る。

ダイソ○やケルヒャ○を参考にしてみたのだ。

便利チートの宝庫、ブラ珍とは俺のことだ!

アイリーンに主夫になるから結婚してくれないか頼むかな?

大事な使命?150人近くいるんだぜ?1人抜けても平気平気!

パートタイマー的に魔物狩ってれば問題無い。

夏と冬のボーナス感覚で野盗狩りなんていいんじゃない?


そんな穏やかな生活を妄想しながら町に戻った。


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