第17話
「昭和天皇陛下」
「……君は私にとって父のような存在だ。そんなへりくだる必要はない」
「そんなわけには行きません。天皇陛下。あなたはこの国の王なのですから」
「……王、か。……私の父は悩んでおられた。この国のトップとして何を為せばいいのか。私なんかがこの国のトップでいいのかと……。私はこの日本国を健全な立憲君主制として運用することを望む。……しかし、今の世のおいて乱世の世でその考えは通用せぬか……。私は、私は、お飾りの王であるのでなく実権を握りし王となる必要があるか……」
「なっ……」
僕は昭和天皇陛下の御言葉に驚きを覚える。
「君のおかげで国の権力闘争と軍部の暴走は一時的に収まっているものの、それも長くは続かないだろう。まずはここらへのテコ入れからか」
満州を手に入れたりと僕がいた世界での日本の希望というのはあらかた叶えられている。
しかし、人間の欲望というのは果てしがないもので軍部の連中はソ連からウラジオストクや樺太を奪うなどソ連への領土に欲望を向けている。
今はまだ僕が抑えているものの、いつかはそれにも限界が来るであろう。
昭和天皇陛下が力を貸してくれるというのなら心強い。
「私は絶対不可侵の存在と言われている。しかし、所詮はお飾りに過ぎぬ。私など要らぬと考えている軍部のものたちもいるだろう」
「……」
僕は昭和天皇陛下の御言葉に沈黙しか返せない。
そんな考えを持っている人間が居ることも事実だったからだ。
「私が表立って動けばそれに反発し、私の命や身柄も狙うものも出てくるだろう。西園寺などの元帥たちも反対するだろう。しかし、私が愛する日本国のために必要なことであると私は確信している。のぅ。和也。私についてきてくれるか?きっと茨の道になるだろう。それでもなお私に忠誠を誓い、共に向かってくれるか?」
「当然にございます。昭和天皇陛下。茨の道といえどそこには道がございます。道を作るよりは遥かに容易い。昭和天皇陛下に仇なす茨は私が全て取り除いてみせましょう」
「……頼もしいな。任せるぞ」
「はい」
「……まずは国の権力統一。そして、大日英帝国か……」
「はい」
「私個人としては良いと思っている。どうせ日本国とイギリスは遠い。国民の生活に何も不自由はさせぬだろう。大日英帝国誕生のために私も秘密裏に動くとしようか」
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