第6話
「和也様。天津上陸作戦が成功したとのことです」
「了解した」
「包囲殲滅戦の際に毒ガスの試験運用の許可をいただきたく」
「あぁ、うん。許可する」
僕は報告を終え、部屋から出ていく秘書君を見送る。
……毒ガス、か。
僕はとある動画サイトのごっくん系動画投稿者の毒ガスシリーズの動画を拝見していたため、ある程度毒への知識があった。
その知識を我が国の優秀なる研究者たちに教えたところ、見事兵器として運用可能な毒の開発に成功したのだ。
開発した毒はマスタードガスに近しいもの、というかほぼマスタードガスである。
それを今回初めて実戦で試すのだ。
おそらく、毒ガスが実際の戦場で使われるのはこれが初だろう。
……何人もの人が苦しみ、嘆き、命を落とすなのだろうか。
「……はっ」
僕は自嘲気味に笑う。
何を今更。
銃で殺されようが、毒で殺されようがどうせ死ぬことには変わりない。
僕は日本人を守るために敵国の人間の死体の山を作ると誓っただろうに。
「さぁ、条約で禁止されるほどの破壊力を見せてもらおうではないか」
僕は再度自嘲気味に笑った。
■■■■■
鉄と血と悲鳴が飛び交う地獄を黄土色のもやが包み込んだ。
次々と生物が倒れてゆき、混乱と動揺が広がっていった。
それらを鉄を放つ仮面を被りし生物が蹂躙していった。
その場に残されるのは無惨なモノと血と鉄の匂いだけであった。
「天皇陛下万歳!」
■■■■■
清軍の包囲殲滅。
それは速やかに行われた。
前線は何も出来ずに蹂躙された清軍の兵の血と肉が覆い尽くした。
後方では毒に侵された清軍の兵士の苦悶の声により、地獄と化していた。
毒に侵された清軍の兵士は補給線が断たれ、補給が一切届かなくなったせいですでに枯渇気味だった物資をひどく圧迫した。
それ故に毒に侵された清軍の兵士を清軍の兵士が殺されるなんて事態にまで発展した。
戦えない兵士など必要ないとして。
清軍の士気はズタボロ。
清軍の兵士たちはもはや日本軍と戦うこともなく逃げ、黄土色のもやを見るだけで全力で逃亡するようになっていた。
それでも無色無臭の別の毒ガスによって侵され、殺されていった。
日本軍は一度も戦闘らしい戦闘をせぬまま、清軍の包囲殲滅を完了。
死者の数も捕虜となった人の数も第一次日清戦争の比ではない。
今回の作戦は大成功と言えるだろう。
これにより毒の兵器としての利用性の高さに軍部は気づき、これからもどんどん毒の開発が進んでいくだろう。
僕が齎した未来の知識を元に。
きっと日本は世界で最も毒開発が進む国となるだろうよ。
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