第28話 ライアーゲーム

「ゼミ、どこ選んだ?」


それだけを聞くために悠陽のパパに連絡をした


結果は話もできないほどの大喧嘩


向こうは私のことをバカだと思ってる


年齢とか関係なく、ただの馬鹿な女


コンプライアンス違反になりそうな言葉を何度も何度も言いかけて、踏み止まった


相手と同じ土俵に立つのはガキのやることだ


私は年齢は1つ上、学年は同じ


相手からしたら浪人して入ったとでも思われているのだろう


「俺は何人も今年、身近な人が亡くなって、どうしたらいいのか分からない」


それを振りかざすのは故人に失礼だ、と何故分からないのか


大体、その条件なら私もクリアしている


出身校で見るなら、偏差値の差は歴然なのに、何故私を馬鹿にできるのか、根拠を教えて頂きたいくらいだ


偏差値で物を語りたくはない


私は人の頭の良さは偏差値やテストの点ではなく、気遣いや心配りなどの人間性に現れると思っている


しかし、相手は流石に話が出来なさすぎる


敬語で煽って来るのだから、仕方がない


私は未読スルーを決め込み、泣きながら酒を飲んだ



ゼミのエントリーに伴う面談で、教授に悠陽の話をして、相手の名前を伝えた


相手も同じゼミを希望していることも伝えた


すると、教授が驚いていた


「面談に来てないから、エントリーしても切るよ」


私も驚いた


おかしい、だってLINEで明らかに同じ教授を希望していたはずなのに


私は動揺した


教授は優しく、私を落ち着かせてくれた


「教えてくれた背景もあるし、面談に来てないから、ゼミにエントリーしても多分切ると思うから、大丈夫よ」


私はその言葉で救われたような気がした


今の私は卑屈に考えすぎている


たばこを吸いながら、正面にあるアパートに目をやると、陽キャが騒いでいた


側から見たらなんてことない風景なのに、私からしたら、何故私とお前らはこんなにも違って、笑顔で過ごせるの?と


そういえば、笑ってないなあ


そんなことを考えながら、私は今日もたばことお酒を嗜む


血栓症になるリスクと今のストレス発散を考えたら後者を優先すべきだろう


元々血栓症の家系で育ってるんだ、死ぬ時は死ぬ


いのち交換サービスがあればいいのに


お互いの利益が一致したら、交換できるサービス


楽しみなことは何もない


早く、祖父のところに、悠陽のところに行きたい


そう願った

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