30 大雪山と成長する双丘

 ネイビス達は凍えるほど寒い気温の中大雪山を登っていた。


「そろそろ寒さが厳しくなって来たわね」

「そうだな。だが、隠しエリアは洞窟だから多分少しだけ温かいと思うぞ」


 目指すは頂上。そこから目印になる大岩を探してその近くにある隠しエリアを見つけるという算段だった。

 三人がいくらRES値が高いとは言え流石に耐え難くなって来た。足は冷たく凍てつき、冷気に体力も奪われる。三人が頂上に着く頃には三人ともへとへとになっていた。


「直ぐに隠しエリアに行きましょう。ここは寒いし風は強いしでいいことないわ」

「そうだね。早く行こうネイビス君!」

「ちょっと待て二人とも。この景色を見てなにも思わないのか?」


 眼下には白銀の世界が広がっていた。氷河によって巨大なカールやホルンが形成されていて荘厳な景色を成していた。ネイビスはこの景色に感動していた。だがイリスとビエラは何も思わない。


「ただ寒い。それだけ」

「うんうん」

「そ、そうか……。なら行くか。あの大岩に向かうぞ。滑落注意な」


 三人は慎重に大雪山を降りて行きなんとか隠しエリアの洞窟へと辿り着いた。大岩の影に人一人分通れる穴が空いていてその穴が洞窟に繋がっていたのだ。


「暖かいね!」

「そうね。ここなら凍える心配はなさそうね」

「テント建てるぞ。今日はここに泊まるからな」


 テントを設営して三人は中に寝そべり、登山の疲れを癒す。


「俺足が痛いから『ヒール』頼む」

「ビエラ。私にもかけて」

「分かったよ。『ヒール』『ヒール』」


 ビエラが僧侶の第一スキル『ヒール』を二人にかけると温かい光が二人を包んで痛みと疲労を消す。


「ありがとうビエラ。ビエラは平気なの?」

「そうだね。私も自分にかけようかな。『ヒール』」


 三人が洞窟についたのは夕方だったため今日は隠しエリアの攻略はせずにテントで休むことにした。三人はフューズの町で買ったパンや干し肉を食べていく。その時唐突にビエラが言い出した。


「ねぇ。ネイビス君。いつか私たちのお家買おうね」

「ああ。そうだな」

「私料理得意なんだ。だからネイビス君に手料理作ってあげたい」

「そうよ。ビエラの料理は格別よ!特にビエラの作るリゾットは店に出せるレベルなんだから」

「そうかなぁ?えへへ」

「それは是非食べてみたいな」


 明日のために三人は早めに寝ることにした。日課の夜のキスをして、ダンジョン周回で住み慣れたテントで三人はネイビスを真ん中にして眠る。いい加減ネイビスもいくら二人の胸が体に当たっても動じなくなっていた。

 そんなネイビスは最近ある事が気になっていた。それはビエラの胸がここ三ヶ月で成長を続けている事だった。昨日温泉で久しぶりに二人の裸を見た時にもビエラの胸だけが著しく大きくなっていると感じていた。

 最初に一緒に添い寝した時はイリスと同じくらいだった気がする。二人ともCかDかなとネイビスは思っていたが、今のビエラは確実にEカップはある。もしかしたらその上かもしれない。

 ネイビスは暗いテントの中二人を起こさぬように二人の胸の大きさを確かめる。これがネイビスの二人には内緒な夜の日課になっていた。この日課のせいでネイビスは寝坊する事が多かったりする。


「絶対に大きくなってるよなぁ」


 ビエラの胸をそっと揉みながらネイビスは呟く。


「何が大きくなってるの?」

「ビエラ!起きてたのか」

「うん。ネイビス君が私のお胸触ってたからだよ?」

「すまない」


 そう謝ってネイビスは両手をビエラの双丘から離した。


「ネイビス君ほんと私のお胸好きだよね。私聞いたんだ。男の人は女の子のお胸が大好きなんだって」

「それもあの老婆から聞いたのか?」

「うん。ネイビス君は私の恋人だから特別に私のお胸好きにしていいんだからね」




 翌朝、ネイビスとビエラは少し寝不足だった。


「ビエラ『キュア』かけてくれ」

「うん。『キュア』!私も自分にかけようかな。『キュア』!」


『キュア』は睡眠不足にも効く。『ヒール』が傷や骨折などの外傷に効くなら『キュア』は風邪などの病気や体調不良、毒などに効くのだ。


「あなた達大丈夫なの?」

「ああ。昨夜なかなか寝る事ができなくてな」

「私もそうだったの」

「そうなの。二人でイチャついてたんじゃないわよね?」


 図星だった。ネイビスは平然を装い返答する。


「いや、ただ寝れなかっただけだ。な?ビエラ」


 確かめるようにネイビスがビエラに訊いた。だがビエラは首を縦に振らなかった。


「イリスちゃん。ごめんなさい。実は昨日の夜二人でエッチな事してたの」

「エッチって何してたのよ」

「それは……」

「すまんイリス。俺がビエラの胸を揉んだんだ」


 ネイビスはイリスに近づき耳元で小声で付け加える。


「だが昨日部屋で二人きりの時にお前としたようなことはしてない」

「そうなの。ならいいわ。くれぐれもビエラを穢しちゃダメよ」

「ああ、それはわかってる」

「もし我慢できなくなった時は私に言いなさいよ?またしてあげるから」

「二人で何話してるの?」


 ビエラに聞こえないように小声で話し合うネイビスとイリスにビエラが首を傾げて訊く。


「いや、ビエラが可愛いって話だよ」

「そうね。それとビエラのリゾットが楽しみって話ね」

「えへへ。二人とも褒めるの上手いねぇ」


 ビエラは両手を両頬に添えて微笑んでいる。それを見てネイビスとイリスも微笑む。


「さて!そろそろ行きますか!」

「そうね」

「うん」


 ネイビスの言葉に二人が頷いた。三人は隠しエリアである洞窟の奥へと歩いていくのだった。


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