悪龍ベニグモ丸対女魔王リコリス・ラジアータ
きょうじゅ
悪対善
その巨大な漆黒の龍の背には、放射状に広がる八筋の赤い痣があった。故に、彼は
「紅蜘蛛丸。今こそ、勇者シガンが貴様を討つ」
深い海のような神聖な蒼さをたたえた鎧を纏った一人の
「
「ガオオオオオッ!!」
シガンの剣が振り下ろされ、そして紅蜘蛛丸の片眼を深々と切り裂いた。頭の上に着地している。だが、紅蜘蛛丸が大きく身をよじると、必然的に振り落とされた。いくら超越的な魔力に守られてはいても、重力という力に逆らうことはできない。
と。
シガンが着地しようとした場所に、黒々とした闇が口を開けていた。
「何ッ!? これは!」
それは紅蜘蛛丸の力によるものではなかった。シガンはそれを知っていた。紅蜘蛛丸とは対立しているはずの、魔王リコリスが用いるゲートと呼ばれる魔法。その闇は、何処とも知れぬ異世界へと通じているのだった。
「うわあああああっ!」
シガンの身体は闇に呑まれて消えた。魔王リコリスがその闇の中からどっこいしょと姿を現した。
「はい、約束どーり、勇者は異次元の彼方に飛ばしたわよ。じゃ、あとはあたしとアンタの決着をつけるだけね」
「ああ。我と汝の事前の密約通り」
「そう。今からかっきり丸一日。あたしとアンタの軍の開戦。それで決着をつけて、この世界は勝った方のもの」
「うむ」
そういうわけなのであった。世界の帰趨を決めるための戦いの火蓋は、これから丸二十四時間後、切って落とされるのである。
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