Episode ⅩⅩⅩⅥ (5-13)
冬休みまで一週間。
学園祭後に行ったクリエィティブ部活・MUSEの打ち上げ・バーベキューにおいて、今年度も残り半年過ぎ、今後の部活動について軽く話した。
それは、来年度へ向けてのステップアップ、そして新作発表への仮発表のためだ。
冬休み前の最後のミーティングをするためにアテナは部員を教室へ呼び出した。
「本年度もテストが終わればすぐに終わってしまうので、少し早い気もしますが、春休み開催を目指して個展を開きたいと考えています」
アテナは黒板を中心に部員たちがテーブルを囲んだ教室の教卓に前にいる。
机の上には紙の資料数枚と超薄型のノートパソコンが置かれた。
過去の資料を閲覧しながら、このミーティングである程度の構想を練る。
「この前の打ち上げで皆が言っていたざっくりとしたアイディアをもとに次回の個展のテーマと来年度のテーマを出したいです」
「そうだな~」
慧は悩ましい声を出した。
その他の部員も同じような仕草や表情をした。
一瞬、口を閉じたシーンがあったが、ミツキがすかさず意見を出した。
「バーベキューで言っていた事をいっぺんにやるのはどう?」
「一つの個展で行うと、テーマが日常的なものになりそうね~」
サーカが少々不安げに言った。
「いっぺんにとは言っても、一回の個展で詰め込もうという訳ではなくて、一日ずつとか、一週間ずつとか、小分けにしてテーマを分けたらどうかなというのが私の考えなんだ」
ミツキが突飛由もない考えを放ったと皆思ったが、回分けによってテーマを変えていくという案を出した。
部員はこの意見に納得した。
「異世界とか行ってみたいな~とか」
トリンドルは漠然としたイメージのものを言った。
「急にどうした?」
サーカが心配する。
「ほら、皆捻った事を言うとするから、何もアイディアが浮かばないんじゃないかな」
トリンドルがきちんと意味を持った事を言った。
「けど、あの時って皆何言ってたっけ?」
トリンドルは部員全員の案は覚えていなかった。
全員で自分が何を言ったのか思い出そうとした。
ミツキは美味しいごはんを食べるという食欲
エレンは勉強に対する理想。
トリンドルは日常的に泳ぐ事。
アテナは空を飛ぶ事。
他の部員も、お金が欲しいやゲームが欲しい。
旅行がしたいなどの理想や夢などを話していた。
アテナは全員の意見を一先ず、ノートパソコンのメモ機能を使い書き出した。
「これくらい案があれば来年度は今年度よりも沢山の作品が作れそう」
エレンは満足げにページいっぱいのアイディアノートを微笑みながら見た。
冬休みを迎えた。
冬休みは三、四週間弱の期間。
この国には様々なルーツと文化、宗教などが入り乱れている。
そのため、世界的に十二月三十一日に大晦日を迎え、一月一日に新年を祝うところもあれば、旧正月の関係で一か月遅れで祝うところなど様々。
各地域や町によって国ごとの特色が色濃く表れている場所も数多くある。
陰光大学のある地域は比較的米国と日本をうまく融合させたような土地柄だ。
しかし、ベースとしては日本の文化色が濃い。
中学を入学して初となるお正月。
学校からの宿題もある程度はあるが、冬休み最後まで持ち越さずに一週間以内に済む予定となっている。
既に休み開始から三日目だが、五教科中三教科を終わらせている。
アテナは学校の宿題やテスト勉強、昼寝以上にMUSEの今年度最後となる個展の開催へすでに燃え上っている。
部員同士で連絡はしあうが、早くに作り上げ、より基礎となるものから質の良い作品を作り上げたいと構成を書き上げている。
「ピコン!」
アテナのスマホにメッセージの着信音が鳴った。
アテナはスマホの画面を見るために手にした。
送り主はミツキからだった。
『アテナ、大晦日に近くの神社に行かない?』
もちろん、集まる時間は中学生だけでは集まる事のない深夜だ。
親同伴は同意するとの事だった。
アテナは両親に確認した上、今日中に返信をした。
『いいよ!』
大晦日。毎年恒例の音楽番組。
今回は録画で楽しむ事にしたアテナは両親のボリクとエリスと一緒に待ち合わせの神社に向かった。
アテナはほとんど神社にきた経験が無く、毎週日曜日や聖人達の生誕祭に教会に行く事が日課となっているアテナにとっては異国の地だ。
アテナはとてもワクワクしている面持ちだった。
「アテナ楽しそうね」
エリスが前を歩くアテナに言った。
「それはもちろん」
両親はアテナの学校の友人に会うのはこれが初めてだ。
話では聞いていたが、どのような人なのかは実際には見た事がない。
そのため、ボリクとエリスは姿を見る事を心待ちにしていた。
アテナ達は神社の前に着いた。
左の鳥居の柱にはミツキやトリンドル、サーカ、エレンなど一年い組のMUSEの部員とその家族が固まっていた。
「おーい! アテナー」
アテナの姿を見つけたミツキが遠くから声をかけた。
エレン達もアテナの方向を向いた。
「あら、この子がアテナちゃんね。いつもうちの子がお世話になっています」
ミツキの母親から挨拶されたアテナ。
「あっ! こっ、こちらこそ」
緊張な面持ちながらも、丁寧にミツキ、エレン、トリンドル、サーカの家族に挨拶をした。
アテナの両親も友人や家族達との挨拶を済ませ、中学生組、保護者と別れて参拝の列に並んだ。
「今日は男子達がいないから女子だけで気兼ねなく話せるね~」
ミツキはピースサインと左目をウィンクした。
慧とバンは家から出たくないと出不精の発言をして不参加。
また、他の部員達も住んでいる場所から遠いと欠席をした。
そのため、ほとんどが一年い組の女子の顔見知りメンバーだ。
年越しのカウントダウンが始まる。
「五!、四!、三!、二!、一‼ 明けましておめでとうございまーす!」
年を越し、参拝客は続々と新年初のお参りを始めた。
「明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」
アテナ、ミツキ、エレン、サーカ、トリンドルは同級生同士で新年の挨拶をしあった。
年明けから一週間。
その間もアテナは休まず、個展の構成を考え抜いた。
ある程度内容が決まった日には、いつの間にか冬休みが明けていた。
そして、個展開催よりも前にテスト準備が始まるのだった。
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