Episode ⅩⅩⅩⅠ (5-8)

 陰光大学教育学部付属陰光中学・高校の学園祭二日目。

 クリエィティブ部活・MUSEは今日も展示を開催している。

 前日の反省から一人が監視と受付を担当する事になった。

部屋が狭いため、どうしても一人が部屋の中へ入ってしまうと来客達が狭く感じてしまう。一日目の反省をもとに、一時間に一回は複数人で監視をするという事になった。

 一日目は中学が主体となって開催中に行われるイベントを実行した。

 二日目の今日は高校が主体となって、体育館での出し物やイベントの主催を担う事となっている。

「今日はお客さん少ないかな~」

 アテナは不安を抱えた顔で机に横顔を付けた。

「いや、これまでの統計では日曜日の方が来客数は断然多いわ。また、リピーターさんもいる。高校主体の二日目と言っても、中学の会場を使って高校生達がイベントを開いたりもする。今回もある程度の来客は見込めるわ。それは昨日以上にね」

 エレンはルーム長らしく事細かにこの学校のイベントごとのデータの分析結果を述べた。

「それならいいけど……」

「そういえば、アテナちゃん。高校の方は見に行った?」

「あーそれがまだ……」

「それなら、今日は私と一緒に回ってもらえるかしら」

「もちろん、いいよ」

 アテナとエレンは空き時間を確認し、お昼前に合流する事となった。

 エレンがMUSEの当番を終えた。

 彼女達は中学の正面玄関前で合流をした。

「あ! エレンちゃん」

「お待たせ、行きましょう」

「エレンちゃんって、高校の校舎に入った事ある?」

「ええ、何度か。ルーム長会議とか中学高校の生徒達が行っている運営会議とかで、使われるからね。でも、敷地面積とか施設の内容は高校の方が良いかもしれないけど、中学とはあまり変わらないかもしれないわ」

「この下の旧都道が遮っていて道路を通らないと高校に行けないのが、中高の下級生上級生との交流を遮っている要因かもしれないわね。けれど、随分前からこのような構造だったから、なんとも言えない。逆にこの大都会の中で大学から始まって、高校、中学、小学校と広大な敷地を得られた事が素晴らしいと思うけれどね」

「確かに徒歩での行き来が多いから、年中ホコ天なのも分かる。それだけでも、配慮はしてもらっているよね」

「この隣は小学校だし」

 アテナとエレンは年中歩行者天国状態の高校・大学をつなぐ道を通り、陰光大学教育学部付属陰光高校へ向かった。

「あら、エレン。お疲れ様」

 ウェーブがかかった腰くらいまであるピンクベージュの高校生が声をかけてきた。

「お疲れ様です。先輩」

「こちらの方は?」

「この子は同じ一年い組のアテナ・ヴァルツコップさんです」

「そう。中学一年生にしてみれば幼いけど、もしかして飛び級で来たの?」

「あっはい!」

「私のクラスにも何人かいるわ。皆優秀だから、その人達を見習って頑張ってね」

「はっ、はい!」

「それじゃあ、また」

「ありがとうございます」

 エレンはお辞儀をした。

「エレンちゃん、今の人。すっごく綺麗だったね」

「ええ。けど、あの先輩こそ、この学校に必要な、優秀では収まり切れない天才。って、他の人達が言っていたわ」

 途中まで落ち着いて、かっこよかったエレンが途中から気の抜けたような声で言った。

「校舎、回りましょう」

 二人は高校の探索を始めた。

「わぁ~なっなんか、人が多いね~」

「それはそうね。高校からは一クラスに何人か人数が増えるみたい。クラスの数については毎年増減が起こるみたいだけど。あと内部進学者の数とかも関係するみたい」

「そうなんだ」

 二人は高校でタピオカミルクティーやホットク、クロックムッシュを食べた。ゲームスペースでは謎解きやパズルゲームなどを楽しんだ。

「はぁ~楽しかった~」

「見回りの時間だから、一旦展示の方へ戻ってもいい?」

「いいよ。私も行きたい」

「じゃあ、一緒に行きましょう」

 二人は一緒にMUSEの展示会場へ向かった。

 その頃、展示の受付をトリンドルが担っていた頃だった。

「いらっしゃいませ~」

「トリンドル~、どうだい?」

「あ~ミツキちゃん! もう、クラスの方は良いんだ」

「なんか、男子達が張り切っちゃって。あとは俺たちがやるから、遊んできて~~って」

「何かあったのかな?」

「あー! 私、分かっちゃったかも」

「えっ、何?」

「それは……、大食い大会で優勝して皆がミツキちゃんに食事の時間を与えないと、自分たちが食べられちゃうって思っちゃったんじゃないかな~」

「それはないない」

「だよね~」

「それでね」

 階段を上る三人組がいた。

 彼らはMUSEの展示場所へ近づいてきてこう言った。

「Excuse me~Lady~」

「ふむ? えーと、どちら様ですか?」

 トリンドルが問いかけた。

「あぁ~」

 真ん中の小柄な身体で明るい茶色の髪が腰までのロングストレートにハーフでツインテール。青いキリッとした目を持つ少女。

「ほら、言ったじゃない。アポなしじゃ分からないって」

 左側にいる女性は、真ん中の子よりは少し年上のように見える。

 髪は金髪でこちらは二つにまとまった腰までの長髪のツインテール。

茶色の瞳。

「僕達、彼女とは全く接点がないし」

 右後ろにいる男性は、仲間の二人とは違い日本の人達に近い顔立ちに見える。

けど、服装がどこか異国情緒溢れている。

髪は短髪のグレーで、瞳の色は黒。

優しい印象がある。

 トリンドルは失礼が無いようにと必死に思い出そうとしていた。

しかし、何もどこかで会ったというような記憶がないのだ。

「もしかして、あなた達!」

 すると、ミツキが口を挟んだ。

「あなた達は、私達の異世界転生への同志? そうでしょ! そうなんでしょ!」

 ミツキが目を輝かせながら、三人に問いかけた。

「そっそうよ! 私はこの学校に異世界転生のInstractorがいると聞いてやってきたのよ」

(あー、言ってしまった……)

「やっぱり、君も……。待ってて、もうすぐ私の友人である異世界転生の教祖様がいらっしゃるから」

「あー、そっそうなのねー。まっまあー、そのきょっ教祖さまーという人に会ってみなくもないわねー」

(このままじゃ、ポーレットの引くに引けない頑固な性格が、気軽に済ませようとしていた状況をさらにめんどくさい状況に悪化させてしまう)

(どうしよ~。先生ともはぐれちゃったし)

(あの人なら大丈夫だよ。初めての陰光中学と高校へ訪問だけど、僕たちの学校を批判しているのは政治家とか、過激派がほとんどだって言うし)

(それも、そうだけど~、あ~難しい。この状況)

 ミツキと共鳴する少女との話が弾む中に、一緒に来た二人はこのメルヘンやらSFやらの空気が漂うカオスを正常にするにはどうすればいいのか。行動を起こすのに悩みに悩む。

「私の友人の教祖様はね、名前からして神々しいんだ! それは綺麗な髪に、綺麗な精神、美しくもぎこちない日本語……」

「ぎっぎこちない、にほんご……?」

「けれどその姿こそが、教祖様に相応しいのさ」

「あっは、そっそうなのね!」

(何この子、夢でも見ているのかしら……。来日した用事があるのは、となりのブルーヘアーの子なのに……)

 最初に面と向かって、話かけられたトリンドルは必死に過去の記憶を思い出そうとしていた。

「えっとーえっとーあっ! そうだ! あなた達は、夏休みに空港で転んで助けた女の子の親戚ね!」

「おっしー!」

 今、三人が一斉に同じ事を心の中へ訴えた。

(どうして、この子。こんなにも鈍いの? 私達の日本語って、そんなに違和感ない?)

 面識の無い者同士でおまけに鈍感すぎると事故しか起こさないと茶髪の少女は思った。

(頑張って! 彼女と彼の事を思い出して)金髪の女性は思った。

(もう、駄目かも……。先生にGPSで発見してもらって事なきを得るしかないかな……。その方がポーレットのプライドを一番傷つけないだろうな……)

 黒髪の少年は諦めを感じた。

 アテナとエレンは中学校舎へ戻ってきた。二人はMUSEの展示場所に向かっていた。

「お客さんどのくらい来たかな~」

「午前中に二十人くらいは来たから、四十人くらいプラスで来てくれたら嬉しいわね」

「そうだね」

 MUSEの展示場所付近に近づいたアテナの目の前には見知らぬ三人が現れた。

「あっ! 皆~、お客さん?」

(やっと来た~、私達の救世主~~)

「あら、米国からお客さんだなんて、珍しいわね。付き添いの教員の方はいらっしゃいますか?」

「あっ、はい。ですが、ちょっとはぐれてしまって……。ですが、もうしばらく合流すると思うので、ご安心を」

 黒髪の少年が返答した。

「そうですか……。では、校舎内の案内でもさせてください」

「是非、お願いします」

 来客と一緒に廊下を歩く。

「あっ、申し遅れました。僕はSunlight Stand 学園 Line coast 中学一年の向明・ベネット バーリーと申します。チャンミンで構いません」

「私は陰光大学教育学部付属陰光中学一年のエレン・クピードー・ジョンソンです。エレンとお呼びください」

「ご丁寧に感謝します」

「では、参りましょう。トリンドルさんも来て、この方々はあなたに要があるの」

「あっ、そっかー」

「トリンドル。本当にそうなの?」

 トリンドルとエレンは来客とともに校舎内を回った。

「あっ、私も自己紹介がまだだったのでさせてください。私はチャンミンと同じSunlight Stand学園 Line coast 中学一年のタマーラ・グリゴリエフです。皆からはタマとか、タマちゃんって言われています。どちらでもいいですよ。タマーラでも、タマでも」

「ふふ……」

 金髪の少女の自己紹介にエレンは感じる事があった。

「どっ、どうしましたか?」

「い、いや、とても日本らしい愛称だなと感じて……」

「そうでしたか……。でも、これを機に学校間で仲良くなれたらいいなと思います」

「私もです。タマさん」

「あっ! あと、このツンデレさんが」

「ツンデレじゃないっつーの! てか、ツンデレて、何?」

 金髪のツインテール少女は聞きなれない日本語の言葉に聞き返した。

「ツンデレはツンツンデレデレの事だよ」

「何? それ。私を茶化しているのかしら」

「他の人よりも様々な事に気づけける特徴の一つですよ」

「そっそう~、私も他にない特徴を持っているのは、流石、私! ちなみに、私の名前はポーレット ミルズよ。ポーレットと呼んで!」

「はい、ポーレットさん。これからよろしくお願いします」

「こちらこそ! ところで、この水中妖精は私達の事を……というよりも、私達の友人の事は覚えているのかしら」

「もちろんだよ~。ロランちゃんとドゥイくんは元気?」

「はい。二人とも練習を毎日頑張っています」

「あの合宿以降、トリンドルちゃんとか、他の子たちに触発から受けて、トレーニング内容もこれまでコーチが考えていた、食事を含めて自分たちで管理していたりするんだよ」

 トリンドルは水泳部員として夏休みに遠征合宿として米国に本校をもつSunlight Stand 学園 Line coast校にて、陰光中高、Line coast中高。そして、日米の複数校同士が強化合宿をした。

 トリンドル達中学一年にとっては初めての海外への遠征だったため、全てが初めてだった。

 それは、生活習慣から違っていて、彼らにとっては大きなプレッシャーとなった。

 数週間の合宿という事は理解しながらも、ホームシックとなりかけた部員もいた。

 トリンドルもその中の一人だが、Sunlight Stand 学園 Line Coast 中学、同じ一年生のロラ・ロドリゲスとグエン・タン・ドゥイからの精力的な声掛けやコミュニケーションによって、厳しい練習を乗り越える事ができたと、トリンドルは二人に感謝している。

 遠征後も多くの部員がともにトレーニングをした生徒達と連絡を取り合っている。

 昨晩もロラからメッセージが来ていた。

『トリンドルちゃん! 明日はうちの仲間たちが来るからよろしくね~』

「誰とは書いていなかったけど、はっきりと同じ学校の子が来るとは書いてあったな~」

 トリンドルは自分の失態に少々恥ずかしさを感じ、跳ね除けるように笑った。

「はー、はぁはぁ」

「それを大事なときに忘れていたのね!」

「まぁ~~仕方がないよ。とりあえず、会えただけでも良かったよ」

「うちのポーレットも相手方が仰った事を訂正せず、こちらの方々へ余計な誤解を招いてしまいました。申し訳ございません」

 責任感のあるチャンミンはポーレットに代わり、一瞬立ち止まり謝罪した。

「そんな、畏まらないでください。うちの生徒、ミツキ、って言うんですけど、彼女も一度、何かこう波や起爆剤みたいな事を感じるとそこに乗っかって話を大きくしてしまう傾向があるので、こちらも早めに気づければ良かったなと反省しています。こちらこそ、申し訳ございません」

 エレンも頭を下げて、深くお辞儀をした。

 その姿を見ていた、トリンドルとタマは間に入る。

「二人とも、年齢は少し違うかもだけど、同級生なのに、こんなに固くるしい姿勢だし、もうちょっと、同級生らしくゆるい関係になってもいいんじゃない?」

 タマは提案した。

「私も! 私なんて、ロラちゃんとドゥイくんとすぐ打ち解けちゃって、同級生だからかもしれないけど、もっと自分を出して話した方が良いと思う」

 トリンドルもフォローした。

「でっでは……」

「ええ、エレン。国は違えど、私達は友達です。これからよろしく」

「こちらこそ」

 エレンとチャンミンはともに握手を交わした。

「ところで、今後の予定は?」

「僕達はトリンドルに用意があったのですがそれも済んだので、先生と帰国するつもりっ――あ!」

「どうしたの?」

「先生を置いてきてしまった!」

 四人はいつか見つかるだろうと呑気に過ごしていたが、見つからないまま中学の正面玄関に着いてしまった。

 会場中にお知らせを告げるチャイムが鳴った。

「Sunlight Stand 学園 Line Coast 中学のポーレット・ミルズさん、向明・ベネット・バーリーさん、タマーラ グリゴリエフさん。正面玄関にてお待ちください」

「あー、ははは」

「ついに、校内放送を使うだなんて、学校の恥だな僕達は……」

「そっそうかしら!むしろ、私達Sunlight Stand 学園のいい宣伝になったのではなくて!」

 エレン、トリンドルがSunlight Stand 学園の三人組と一緒に校舎の案内をしにMUSEの展示室を後にした五分後。

「はぁはぁはぁ……、あ、あのー。ははは、すヴィばぜん……」

「あっ、はい……」

「きっ茶髪ハーフツインテールと金髪ツインテールと短髪グレーの黒い瞳はいませんでしたか?」

「あー、それらしい人達はさっき、私達の友人と一緒に校舎を周りに行きましたけど……、あの、大丈夫ですか?」

「だっ、大丈夫~」

 階段を全速力で駆け上がって来た女性は力尽き倒れた。

「ちょっと、塩分の入ったドリンクを飲んでください」

 アテナはあらかじめ買っておいた未開封のスポーツドリンクを女性に飲ませた。

「あ~、日本の味」

「スポーツドリンクですけどね」

 ミツキは現実的なツッコミをした。

「申し訳ございません。助けていただきましてありがとうございます。自己紹介が遅れてしまいまして、申し訳ございません。私、Sunlight Stand 学園 Line Coast 中学の教員。詠・スージー セシルと申します。実はうちの生徒達が三人こちらに訪問しているのですが、うち一人が単独で移動し始め、それに続いて二人が付いていって……」

「結果的にはぐれてしまったんですね」

 アテナは詠の心中を察して言った。

「はい……」

「それじゃあ、放送室に行ってとりあえず、正面玄関で集合はどうですか?」

 ミツキが校内にSunlight Coast学園の生徒達へ特定の場所へ集合を促す放送をかけるように促す。

「私達の名前と学校が放送されるのは嫌なのですが、やむを得なですね……。お願いします」

「そろそろ校舎内の見学も終わるころだと思うので、一緒に行きましょう」

「ですが、当番なんですよね?」

「あ~今日はそろそろ終わりなので、大丈夫ですよ」

「そうでしたか、申し訳ございませんでした。お願いします」

 アテナ、ミツキ。そして、生徒たちを探すSunlight Stand 学園 Line Coast 中学教員の詠と一緒に放送室を通り、正面玄関へ向かった。

「ところで、感じた事があるのですが、聞いてもよろしいですか?」

「はい、何でもどうぞ」

「詠……先生もそうですが、生徒のみなさん。日本語がとてもお上手ですが、何か学校で授業があるのですか?」

「いいえ。彼女達が事前に会話ができるようになりたいと言って来たので、放課後などの時間を使って特別講座的な枠で教えているんです」

「先生って、もともと日本で育ったんですか?」

「はい、途中まで陰光に通っていました。けれど、皆さんもご存じかもしれませんが、政府と当校の日本校との関係が悪化してからは私の立場も危ういという事で、本国の方へ転校しました」

「先生も大変な経験をしてきたのですね」

「ですが、こちらの学校も、当校も、教育の一番の目標は生徒達の自立と社会貢献ですから。軸は何も変わりません。なので、幸いにも、皆さんが思うよりも私は苦しい思いはしてはない。むしろ、幸せでした。なので、この偏見的な考えや視線を私は今後変えたい。それはあの三人も、本国・日本校の生徒達も一緒です」

 アテナとミツキは詠の両校の発展に対する決意というのが感じられたような言葉を記憶に残した。

「アテナさん、ミツキさん。これからも、あの子達三人をはじめ、Sunlight Stand 学園の生徒達をよろしくお願いします」

「もちろん」

「はい。交流を増やして、友達……増やしたいです!」

 放送室前に着いたアテナ達は放送部員に内容を説明し、校内放送をするようお願いした。

「それじゃあ、正面玄関に行きましょうか」

「あっ! 皆」

「せんせぇー!」

 トリンドルとタマがアテナ達の存在に気付いた。

「あなた達……」

「あー! 先生が激おこだよー」

「もう、気持ちを決めるしかないな……」

「い、いや、わっ私のせいでは」

「皆、回れた?」

「あっ、はい! 楽しかったです」

「向こうにはないものとか、とても日本らしさを感じる事ができました」

「そっそうね、なかなか良かったわ」

「そう、ポーレット」

「はい」

「帰国したら、報告書を書かせますから……ね?」

 ポーレットから見た詠の顔は周りからは笑っているように見えても、彼女から見たら死んだ目をしていた。

「はっ、はい……申し訳ございませんでした……。I apologize for causing you any trouble.」

「では、私達は飛行機が待っているので、ここで失礼します」

「じゃあね~Bye~」

「失礼します」

「また、連絡するからね」

 Sunlight Stand 学園 Line Coast中学の四人は付近の駅へ向け、陰光中学を後にした。

「そういえば、サーカちゃんの姿をずっと見ていないけど、皆知っている?」

 アテナが急にサーカの事を思い出した。

「サーカちゃんなら、調理室で準備しているわ」

 エレンは事情を知っている。

「あ~、私のためにね~。本当はポーレット達に見てほしかったけど、これはトリンドルに撮影をお任せしようかな~」

「もちろんだよ! この映像を見せれば、来年の大食い選手権は初の国際試合になるね」

「そんなに大規模になって、後々誰か具合が悪くなっていたら嫌だな」

 アテナは辛そうな顔をした。

「まぁ。病院送りにならない程度に運営側も気を付けると思うけど、私達も気を付けないとね」

「とりあえず、展示室を片付けてから会場に行きましょう」

 正面玄関に集まったMUSEの部員は展示室へ向かった。

「あ、バン、慧。ごめん、先に片付けやってもらっちゃって」

「大丈夫。俺たちのやる事はあまりないから、先に片付け進めたら楽かなと思って、それに……」

 慧はバンに顔を向けた。

「ああ、ミツキが大食いにまた出るからと、サーカが気を利かせたんだ」

「流石、ミツキちゃんの優秀なサポーターだよ」

 アテナは感激した。

「この調子なら、明日の片づけはこちらに回らなくてもよくなる。今日中に終われそうね」

 MUSEの部員たちは速やかに学園祭の片づけを進めた。

「終わったー!」

「皆、できたわー」

「サーカちゃん、お帰り」

「おー! いよいよ、吾輩の優勝への試合が始まる。吾輩頑張るぞ~~い!」

「ミツキ、最高に浮かれているわね」

 陰光大学教育学部付属陰光中学・高校学園祭二日目。

 ミツキの学年を超えた大食い選手権が始まる。

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