Episode ⅩⅩⅦ (5-4)
臨海学校二日目。
一日の疲れで消灯時間前に就寝したアテナ。
(もうすぐ、朝かな~。でも、もう少し……寝てたいな~)
「みなさん、おはようございます」
急に野太い声が部屋中に響いた。
「ふぇ~?」
「朝六時です。お来てくださ~い」
「朝? 六時~?」
アテナは、部屋にある時計を見た。ぼやけた視界が、徐々にはっきりしてくる。
確かに確認した。
「はぁ~あぁぁ!」
まだ、眠い体を起こした。
身支度の用意を始めた。
まだ、他の人達は寝ている。
髪を
「コンコン」
ドアをたたく音がした。
「はぁ~い」
「ミツキだよ~、失礼しま~す。あっ、おはようアテナ」
「おはようミツキちゃん」
「はぁ~、やっぱり皆寝てるね。起きそうな人もいるけど……、皆起きて~!」
「ぅむ~、ミツキ、睡眠の邪魔をしないで~」
「しないで~、じゃなくて、もう、本当に朝なんだけど……」
「ミツキちゃんって、早起きなんだね」
「まぁね~、朝練も普通にあるし。この時間の起床は朝飯前なのだ~」
アテナとミツキは先生が朝の確認をしてくる前に、皆を起こした。
そして、朝の集会前に身支度を済ませる事ができた。
「みなさん、おはようございます」
「\\おはようございます//」
「体調が悪い人がいないみたいなので、朝食を終えたら、近くの場所へ散歩に行きたいと思います」
今朝は、魚焼き定食。
魚の身を分けながら、骨を綺麗に取り除いていく。
「アテナ~、皮取れない~」
「あっ。待って、ミツキちゃんをお箸かして」
「はい」
そういうと、アテナは手慣れた手つきでミツキの焼き魚の身をほぐしていく。
「ありがと~アテナ~~」
「アテナちゃん、魚の食べ方綺麗ね。日頃から食べてるの?」
「週二から三くらいは食べてるかな。でも、最初は難しかったけど、今は構造が分かってるから、今みたいに食べられているんだ」
「私は皮も骨も一緒に食べちゃうから、あまり気にしないな~」
ミツキはアテナがほぐした身を食べる。
「私も~。皮は食べないけど、小さい骨とかは気を付けて食べちゃうな」
トリンドルは、自分でほぐした身を骨に気を付けながら、よく噛んで焼き魚を食べる。
エレンとサーカは朝が弱いからなのか、眠そうな顔で魚をほぐしていた。
「はぁ~せっかく白馬の王子様が現れたところなのに……」
「せっかく良い事をしてもらえると思ったのに……」
二人とも理想が高いのか。ただの妄想なのか。欲なのか。アテナ、トリンドル、ミツキ達にはよく分からなかった。
「アテナさん、僕のも身を取ってくれないかな?」
「あっ、うん。いいよ
その後も近くの生徒から身をほぐすようにお願いされた。
「現代の問題は、魚焼きの身をほぐせない事ね」
遠目からサーシャが現代社会の問題について目の当たりした今だった。
昼食が終わり、アテナ達は朝の散歩へ出かけた。
生徒達は旅館に戻ってきた。
「これで、旅館には戻ってこないので、帰り支度して海へ行く用意をしてください」
「はい」
生徒たちは、部屋へ戻り帰り支度をした。
「ふむ。これ誰の下着か分かる?」
「あ~。それ私のものよ。あっ、これ下着じゃなくて、ハンカチね」
「へぇ?」
トリンドルは見てはいけないものを見た気持ちになった。
「はぁ~、今朝どこに行ったか気にしていたのよね~」
(サーカちゃん、流石……)
一学年は支度を終え、玄関前に集まった。
「それでは、お礼の挨拶をしましょう。ありがとうございました!」
「\\\\\\ありがとうございました‼ //////」
「それじゃあ、い組のみなさんはバスに乗ってください」
い組の生徒たちは速やかにバスへ乗車した。
「それでは、点呼してください」
「皆いますね。では、出発します」
旅館を後にした生徒たちは今回の臨海学校のメインイベント、海水浴をしに海へ行く。
「海水浴は日焼けをするので、着替えを済んだら日焼け止めをよく塗ってください。あと、入水するときはペアになって入ってください」
サーシャは車内で海水浴の注意事項を説明した。
陰光大学教育学部付属陰光中学一学年
「女子の更衣室は右。男子は左なので、間違えないでください」
生徒は続々と更衣室へ向かった。
「課外活動だから仕方ないけど、やっぱり学校指定よりも自分で選んだのがきたいよね~」
「私も~」
「でも、はっ、恥ずかしよ~」
「別にビキニっていう事じゃないよ。今の時代は体形もカバーできる水着もあるんだから」
「そっそれだったら……いい、かも……」
ただでさえ水着が苦手なアテナにとって、進んでやろうと思えないのが水泳や海水浴だ。
アテナ、ミツキ、エレン達は水着に着替え終わり、いよいよ海へ飛び出す。
「アテナ、海っていうのはね。こうやって行くんだよ! それっ」
ミツキは更衣室から飛び出し、浜辺へ出た。
「ほら~、砂浜が気持ちいよ~」
ミツキはアテナ達へ向けて手を振った。
アテナも砂浜へ踏み出す。
「じわっ……」
その踏み心地は生暖かくきめ細やかな砂がアテナの足の指と指の間をすり抜ける。
「うわぁ~なっ、何これ~」
「これが砂浜よ」
「なんか生きてるみたいで、ちょっと気持ち悪い……」
アテナは嫌な顔をしながら、足を右に左にと踏み出す。
「は~い、みなさん。こちらに整列してください。点呼を始めてください」
「では、これから海水浴を始めます。まず、ラジオ体操から始めましょう」
学年全体でラジオ体操を始めた。
「い組からペアを作って海水浴を始めます」
生徒達は列に並び、順々に入水し始めた。
「わぁ~もうすぐだ!」
ミツキが楽しそうに入水を待ちわびている。
「はぁ~ちょっと、怖いよ~」
「アテナちゃん、私が一緒だから!」
「ふん! エレンちゃん」
体中に太陽の日差しを浴びた海水を足から徐々に感じ始めた。
「なんか、こっちも生暖かいよ~」
「アテナちゃんには、海は違かったかな」
「そう、みたい」
何度か入水の機会はあったものの、アテナは砂浜で城を作っていた。
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