第8話 告知

がん宣告するかどうか


ずいぶん前は、家族が決めていた

本人にも、告知を望むか望まないかを書面で確認していた時代がある


本人がキズつかないように、生きる望みを持てるようにと


がん=死 それが当たり前の世の中だったから


その頃に、患者に知る権利があると言い

自分の担当患者さん全員に告知をしていた医師がいた


当時は、告知を希望しないのに、告知される患者さんを見て気の毒に思っていた

耳をふさいで先生の説明を受け、

その後しばらく泣いて過ごされる患者さんを看るのがつらかった


いま、医療も進歩している

あの耳をふさいで聞いていた患者さんが、今の時代にいたら

あんなに苦しまずに聞けたであろう


あの時の自分に言いたい

そばに行くだけでいい

言葉はいらない

そばに行け


そうしなかった自分を悔やむから、いつも思い出す

名前を思い出せないのに、耳をふさぐ姿、泣き続ける姿だけを





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