第53話 教員彩々(ゴリゴリ熱血教師 6)
クラスの女子のほとんどが視聴覚室へ移動し、幼馴染のリオやエミに声をかけられ、「そろそろ行くかな」なんて思ったちょうどその時。
すでにほとんど話すことのなくなっていたカズが、そっと声をかけてきた。
「行かなくていい」
「?・・・なんで」
わけがわからなくて、とりあえず椅子から立とうとすると、みっちゃんまで慌てた様子で「動かないで」なんて言ってくる。
この時。
私本人は気づいてなかったんだけど、見た者が血相を変えるくらい顔色が酷いことになってたみたいなんだ。
実はこれ、恥ずかしながら未だに頻繁に陥っているみっともない状況だ。
まさにこれを書いている今も、ついさっき娘に言われて体調不良だってことに気づいたんだけど、すでに足元がおぼつかなくてまともに歩けないという体たらくなんだよね。
そんなわけで、もちろん当時の私も2人の言葉の意味が理解できないまま、さっさと立ち上がろうとしたんだけど。
その瞬間。
目の前がぐらぐら揺れて、そのままペタリと座り直すことになってしまった。
リオとエミに「悪い。先に行ってて」と伝え、少し混乱したまま椅子から動けずにいると、暫くして隣のクラスから集められた男子ども・・・チャゲやなんかが寄ってきた。
「京!お前そりゃぁ、こっちが似合ってるからもちろん俺らは歓迎するけどよ。行かなくていいの・・・か・・・?」
呼吸するようにすらすらと吐き出されたチャゲの皮肉った声が、穴に落ちるみたいに遠ざかっていく。
「おい。どうした?京?」
チャゲの不安げな声が響いた瞬間。
頭が割れる様な頭痛が怒涛の如く襲ってきて、理解できない寒さに襲われた身体は震えが止まらなくなる。
誰かが温かいもので身体をくるんだり、冷え切った指をにぎったり、背中をなでてくれてるのをうっすら感じたんだけど、このあたりのことは実はかなりうろ覚えだ。
結局、私は意識を失ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます