第20話 アップルパイ

沙耶香と駿は、ダッシュボードの血のベッタリ付いたカッターを見つけ、唖然とした。


すぐには、〝切り裂き魔〟とは結びつかなかった。


駿が「沙耶香のお父さんに電話しよう!これ血だよ

逃げた方がいいのか?電話して!」


沙耶香は「わかった!」と言って 真に電話をかけようとしたが、手が震えて思うように、操作できない。


駿が「戻ってきたぞ、携帯隠せ!」


沙耶香は、「どうしよう」慌てている。


駿は、手早くダッシュボードを元にもどし、沙耶香に

「落ち着け 沙耶香!何にも知らないように演技するんだ!携帯見つからないように、音を消して

お父さんにメールするんだ!」


沙耶香は、携帯を足の間に挟んで隠した。


渡辺は、ドアを開け「お待たせ〜」

とにこやかに笑顔を見せたが、二人は寒気がした


エンジンを掛けて、後ろに座る二人に家を案内して


と渡辺は、話しかけた。


駿が、「わかりました 僕が案内しますと身をのりだし、沙耶香にメールを送るようサインをだした。


駿は、積極的に、話しかけて気をそらした。


その隙に、沙耶香は、ショートメールで真に


〝SOS 切り裂き魔 発見 切り裂き魔の車の中 助けて〟と送信した。


駿は気を回して、わざと遠回りの道を案内させた。


2分後、真からの返信がきて、〝ピン!〟と言う音が響いた。


渡辺は、「あっ、沙耶香ちゃん携帯持ってるんだ?

凄いね」と低い声でいった。


駿はすかさず「そうなんですよ〜コイツ生意気で‥」と話をそらせている。


沙耶香は、メッセージを読むと


〝ママ マンション前で待機してる。家へ向かえ

パパも向かう〟


と書いてあった。


沙耶香は、「そこ、右に曲がって200メートルいくとウチのマンションです」と伝えた。


マンションの前に車が着くと 同時にマンションの

エントランスから、美佐子が出て来た。


美佐子は、車の中を確認すると 沙耶香にウインクして、任せなさい!と言う合図を送った。


美佐子は、運転席の窓をノックして

「どちら様?うちの娘が後ろに乗ってるようですけど?」


渡辺は、慌てて「あっ 渡辺雄一といいます

教育実習生で、先生指示で娘さん送りにきました!」と しどろもどろになりながら答えた。


美佐子は、「あっそうなの?ハンサムな先生ね

沙耶香 今 アップルパイ焼き上がるのよ

先生に上がってもらったら?」と沙耶香に

振ると


駿が「そうだ 先生 ご馳走になろうよ

おばさんの アップルパイすげ〜美味いんだよ」


誘った。


渡辺は、「じゃあ、甘えて上がらせていただくか?」と答えた。


美佐子は、来客用駐車場を案内して


沙耶香、駿と三人でエントランスで待っていた。


渡辺は、ダッシュボードから、カッターを取り出し

手早く 〝刃〟を交換し


舌なめずりをした。

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