5話 捜索
その頃魔人の国ではネフライトがイライラしていたのだ。
「ブラック様が帰ってこないぞ。
舞殿を迎えに行くと言ってから、遅すぎではないか。
それも先ほどまではこの国に気配はあったのに今は感じられないとは。
人間のいる世界に行ってしまったのだろうか。
まだまだやっていただきたい仕事があると言うのに・・・。」
ジルコンが笑いながら答えたのだ。
「ははは。無理よー。
舞がこちらに来るとなったら、何に変えても1番に向かうわよ。
ただ、この国に用事があって呼んだと言っていたのに他に行くかしらね。」
そんな話をしていた時、執務室にトルマとシウン大将が入ってきたのだ。
「失礼いたします。
トルマ殿と手合わせをさせていただいていたのですが、そろそろ向こうに戻ろうかと。
ブラック様にご挨拶だけでもと伺ったのですが、いらっしゃらないようですな。
まだ戻られてないのですかね?
先ほど舞殿と森の方に向かったような気がしていたのですが。
気のせいでしたか・・・」
ネフライトは目を輝かせ、シウン大将に駆け寄ったのだ。
「おお、森に行かれたのですね。
では、迎えに行くとします。
シウン殿、ありがとうございます。
魔人の王ゆえ、色々とやっていただく事があるのですよ。」
その時ユークレイスもドアを開けて入ってきたのだ。
「あの森からはとても嫌なエネルギーを感じます。
多分その事で、舞殿を呼んだのではないでしょうか?
まあ、ブラック様であれば何も問題はないと思いますが。
・・・ただ、前のハナ殿や舞殿の事となると、冷静さを欠くかもしれません。
様子を見に行くべきかと思いますが。」
そこにいる全員がユークレイスの言葉に同感したのだ。
「では、私とユークレイスで行きましょう。
ネフライトは仕事があるでしょ。
私暇だし。
ユークレイスがいれば何かと便利だから。」
ジルコンはウキウキしながら話したのだ。
最近また落ち着いてしまい、つまらない毎日を送っていたので、刺激になるようなものが欲しかったようだ。
「ジルコン様。
私を物扱いしないで欲しいのですが・・・」
ユークレイスはブツブツと小さな声で呟いたが、ジルコンには全く伝わっていなかった。
同じ幹部ではあるが、ブラックと同じくらい昔からいる存在で自分よりも格上な事は分かっていた。
だから、真面目なユークレイスとしてはあからさまに批判を言える立場では無かったのだ。
「さあ、行くわよー」
ジルコンはピクニックでも行くかのように、ユークレイスの肩を叩きながら出て行ったのだ。
部屋にいる者たちは、まあ何かあれば、ユークレイスから連絡が来るだろうと、二人に任せることにしたのだ。
二人は瞬時に森の入り口に到着した。
「本当だーあまり気にしてなかったけど、この森まずいわね。
かなり侵食されている。
何だか気持ち悪い物もいるわね。」
ジルコンはそう言いながら森の中に入った。
そしてユークレイスも続けて入り、ブラックの気配を探ったのだ。
確かに、少し前までは二人ともこの森にいた痕跡はあるのだが、途中から感じられなくなっていた。
そして、負のエネルギーから感じられる意志の様なものが突き刺さってくる感覚があるのだ。
もちろん、魔人である二人にとっては周りを結界で囲んでいるので問題は無かったのだ。
「これ、まずいわね。
この気持ち悪いものだけ消滅させれば良いのかと思ったけど、植物達も巻き添えになるわね。
だから、舞を呼んだのかもね。
ブラックにとって、消すだけなら朝飯前でしょうし。」
ユークレイスは感覚を研ぎ澄ました。
この森の7割は侵食されている。
侵食されてない部分にブラック達がいる可能性があるかもしれない。
何か良い方法を考えているのかも。
とにかく、ブラック達を探すことにしたのだ。
ユークレイス達は森の中を真っ直ぐに進んだ。
そうすると、大木のある開けた所が現れたのだ。
ジルコンはその大木を見るなり、理解したのだ。
「これが主ね。
弱ってるけど、まだ生きているわ。」
二人が大木を見て話している時、後ろに気配を感じたのだ。
「ブラック!今までどこに・・・」
「ジルコン様、離れて。
よく見てください。
ブラック様ではないですよ。」
そこには黒い気配のブラックの風貌をした者が立っていたのだ。
それは負のエネルギーの集合体であった。
森の精霊から奪われた記憶の中のブラックであったのだ。
「わかってるわよ。
見た目が同じだから、ちょっと言っちゃっただけよ。」
ジルコンは顔を赤らめてユークレイスを叩いた。
ユークレイスがその集合体に向けて衝撃波を送ろうとした時、ジルコンが止めたのだ。
「待って。
この集合体が無くなれば、森の5割が消滅するわ。
ユークレイス、とりあえず目障りだからブラックの記憶とか抜き取れる?」
「記憶で再現しているのであれば、問題なく操作できますよ。
ただ、ここにいる集合体にのみの操作なので、他の物が集まればまたブラック様を再現するかもしれません。」
「それでもいいから、やって。
偽物がうろつく事がムカつくわ。」
「・・・わかりました。」
ユークレイスは左手を出して、意識を集中させた。
この集合体には、やはりこの森の記憶が存在しているようなのだ。
そして、ブラックの記憶を消失させられるとその黒い集合体は周囲に分散したのだ。
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