ポップに成仏

〈1〉「ポップ」の定義がわからない……

1 人の恨みを買わないように

 昨今、殺し屋の仕事が暗に認められた。

 殺し屋勤めが、会社勤めと同程度にありふれた認識に転じた。


「殺人」に対する心証がよろしくないのは変わりないが、まあそういうことする人も世の中にはいるよね、くらいの些事になった。

 おそらく犯罪だと薄い自覚はあるが、ほんの出来心で踏み外せてしまう。

 公共物への落書きと大差なくなった。


 人の命が、ずいぶん軽いものになってしまった。


 その背景に、幽霊や天国の存在が確認されたことがあった。

 死後も幽霊として生活可能なので、幽霊になることを「第二の人生」と呼ぶ専門家までいた。


 学校教育では「決して人の恨みを買わないように振る舞いましょう。幽霊になると就職の幅が大きく狭まってしまいます」と教えられた。


 死んで成仏すれば天国に行き、天国から守護霊として再びこの世に降りてくる人が多いというのはもはや社会常識になった。


 守護霊という就職口があるにしろ、幽霊になると生きている人との接点がほぼ持てず不便になることが多いので、生者はできるだけ恨みを買わないよう生活した。





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