ハムスターが最強の名を冠する異世界があってもいいじゃない

戯 幽

第零章 ~序章~

序章 心霊空手の蝋燭消し

「はぁっ!」

裂帛の気合が静寂を破る。

ゆらり、ふっ。かすかに見えていた蝋燭の灯が、揺らめいて消えた。蝋燭消し。実は拳の突きで消しているのではない。決め手は、引き。拳を引くスピードで手前に消えるのが正解だ。しかし今、炎は後方に倒れた。


「15メートル…。記録更新。」

炎をかき消した姿のままにゅんよは呟いた。未だ、正拳突きの構えはそのままに。

完全な暗闇に包まれたことを全身で感じた後、ようやく残心を解いた。


15メートルの蝋燭消し。途方もない距離である。

普通の蝋燭消しなら、単位が違う。ミリ、せいぜいセンチメートル。メートル単位の先の炎。そんなものを、消せるわけがない。そう、普通なら。


にゅんよが体得したのは心霊空手。それ故、正拳突きも通常のものではない。空手家も気を練る。しかし心霊空手ではその度合いが違う。極限まで練られた気は実体を伴い、拳を覆う。そして、その気を弾き飛ばすことが可能となる。エクトプラズム正拳突き。これが、炎が後ろに倒れた理由だ。


「そろそろ、時が来たようね…。」

以前から計画していたこと。それは、旅。自分と闘えるだけの力を持つ者との出会いを求める旅。


ここはハムスターが強者として君臨する異世界、にゅんにゅんワールド。神が8日目に暇つぶしに作った世界。

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